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テーマ:株式投資日記(20515)
カテゴリ:コーポレートガバナンス
今日は興味深い2社の役員人事が発表されました。
一つはご存知、アデランスHD。子会社社長が社長に、2人の社外取締役の取締役就任案が発表された。筆頭株主のスティールの合意が得られていると言う。 「臨時取締役の開催、取締役候補者の決定および代表取締役の異動に関するお知らせ」 よく読むと社外取締役1名を含み、4名は前回の取締役と同じ顔ぶれですが、岡本社長やアデラスの創業者等は取締役を引いています。 代表取締役候補の早川氏は子会社フォンテーヌ(女性用のファンション製の強いかつら)一筋の方。 2人の新社外取締役候補のうち、相原氏はあの三菱商事ご出身、シェクター氏はスティールからという顔ぶれ。リヒテンシュタイン氏は取締役に入っていません。 SPがはじめて取締役の座を勝ち取る(予定)の例となったとFT.comでは報じました。 一応、注力部門と思われる会社のトップの昇格、2名の取締役はそのまま(これはこれで疑問が残るが何らかの説明があるのか)、社外取締役3名のうち、1名は前回否決されていない人、一人はSP、そして相原氏はかつらとは無縁の情報産業畑で、三菱商事の副社長かつ米州担当のご経歴があり、一応「両方の立場」がわかる人ではないかと想像がつきます(けど、SPは米国では本物の防衛産業(軍事)に精通しているので、SPのコネかな?どうやって見つけてきたのだろう。こんな立派な方を)。 ここまで読むと、私は、現場はアデランス出身者に任せるが、経営戦略全般は「俺たち」の意見を無視するなという印象を受けました。相原氏がキーパーソンになるような気がします。 ただし、同時に日興シティをアドバイザーとして戦略的代替案を考えると言う発表もあり、これは2月の時点のSPの提案のとおりです。米国ではSPが「戦略的代替案」という言葉を使ったときはMBOか身売りだったような記憶(記憶ですみません)でした。 上場してスタンドアローンでビジネスをやった場合(リストラを伴う選択と集中を含む)、身売りの場合(ただし、こういった話は話題になっていないとの報道あり)、MBOの場合と考えうる選択案を検討して一番株主価値に寄与する方法を選択する、そのアドバイスを日興シティが行うということかな、と勝手に想像しています(MBOをやってもリストラを行うので、MBO説が根強いのもうなずけるものがある)。 なお、評価すべきことは経営の連続性を保ちながらも、様々な視点を取り入れたこと、そして創業者にも一応の敬意を表していること(「取締役最高顧問」が2名、この2名が「最高顧問」として一応とどまっている。一応大株主ですから当然と言えばそれまでですが)で、これまでのスティールのイメージを柔らかくしているようにも思えます。 「手荒なまねはしない」というメッセージでしょうか?新しい経営陣を「建設的に支援する」という声明文をSPは出しました。SPもまた「日本流アクティビズム」の方向性を模索中といったところでしょうか。 ただし、ケチをつけるつもりはないのですが、MBOを実施しても、ガバナンスは付いて回りますし、株式を公開するかしないかだけの違いであることは言えます(MBOして創業者も一旦株式を売却し、その後新会社の株主となれば、その影響力は変わらないので実質的には同じこと。それ以上に数年後、再上場などの時には今よりも大きな時価総額になる可能性もある。したがって上場維持にこだわらずMBO後再上場となれば、実は本質がわかる人は皆ハッピーになれる可能性が残っている。詳しい解説をしている時間がないので、興味のある人は服部 暢達氏の「実戦M&A」のLBOかMBOの箇所に記載あり)。
もう一人の「外国人」取締役は、あの世界最強投資銀行、ゴールドマンサックスの社外取締役に、ラクシュミル・ミタル氏(アルセロールミタルCEO)が就任すると発表されました。私にはこっちのほうがビッグニュース。 ミタル氏はエアバス社他数社の社外取締役も兼任されているとのことですが、アルセロール社の買収時にアドバイザーになったのはロンドンのGSさんでした。そして、BHPビリトンがRioティントに提案中のM&AのBHPのアドバイザーも実はGSのはずです。 BHP-Rioは現在、EUの独禁法委員会で審査中です。ここで、アルセロールミタルがRioの株を買うと言う説や、EUが条件付で買収を承認する場合(即ち、BHPがRioを買収後、一定の鉄鉱石資産を売却し、市場占有率を引き下げるような条件がよくある。日本人が忌み嫌う「短期的な売却」とは全く位置づけが異なる)、売却されそうな鉄鉱石資産を買収すると言う説があります。 アルセロールミタル社はBHPとRioの案件に中立的と思っていましたが、こんな絡み方があるのかと感心すると同時に、「これってGSの株主の『長期的な』利益になるの?GSの当該取引には貢献しているけど」って思ってしまいました(ミタルさんの上記2つの説は単なる市場のうわさベースですが)。ミタルさんGSの株主の方を向くのかな? 日本企業の社長・会長さんも海外のそれなりの大手企業から「社外取締役になってください」って言われるようがんばってください。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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