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カテゴリ:経営コンサルタント
昨日、米国でゼネラスモーターズ(GM)の目標株価をゼロにするといったアナリスト(ドイツ銀行)と1ドルといったアナリスト(バークレイズ)が出現し、同社株は大きく値を下げてしまった。今年に入ってなんと90%の下落という。 今年に入ってトヨタも2割から3割、GMにいたっては3割から5割も販売台数が落ち込んでおり、まさしく瀕死の状態となっている。
次期大統領のオバマ氏は現政府に自動車産業の救済を訴えている。
私見だが、今回のサブプライム不況はマクロ的にはS&Pケースシラーの不動産価格指数が後20%落ちたころが底などといわれているが、もっと身近に考えた場合、以下の個別企業の救済処理というか抜本的な処理が出来たと思えるころが底なんじゃないかと。 AIG シティーグループ ゼネラルモーターズ クライスラー
最も今回は米国だけが片付けばおしまい、ということでもなく欧州のUBS他の金融機関の救済も残っているが。 自動車会社2社は合併が想定されているものの、合併後も「これで安心」と言うわけでなく、その場をしのいだ程度に過ぎず、ドイツ銀アナリストによれば、「政府支援を受けたとしても実質的な破綻に近い状態になる」とのこと。間違っていないけど、そこまでダメだししなくても・・・。 ドイツ銀とバークレイズという欧州の金融機関というのがミソですね。 GMとクライスラーが合併して、生き残るクライスラーはジープとダッジだけとも言われ、10以上の工場閉鎖がうわさされている。合併してもしなくても失業者は増えるし、それなら合併すれば競争相手が一つ減ってまだまし、というセカンドベスト的な見通し。 破綻してしまうとOBの保険など従業員以外にも膨大な被害が予想される。 米政府も救済すべきかしないべきか究極の選択なのだろう。
GMに続き、AIG、シティーグループ等にもいえるのだが、ほとんど Too big to fall (大きすぎて潰せない)に近い状況で、巨大企業の弊害が出てしまっている。オバマ政権になると、元々民主党ということもあるが、大型M&Aの成立確率は低くなるのだろう(公正取引委員会の審査が厳しくなるだろうと言う趣旨です)。
それにしても、GMは資金繰り工面のために、大ヒットSUVハマーの売却プロセスにあるという。 このハマーにインドのタタモーターズやマヒンドラマヒンドラが興味を示しているといううわさが飛び交っている。タタはフォードからジャガー、ランドローバーを買収して新しい。
一方、もう一つのビッグスリーであるフォードはマツダの保有株の売却に動いているという。ここでは住友商事以下日本企業で、なおかつブロックで売却するというより1%程度づつ分散して売却を進めているというもの。うーん、しつこく日本的ですな。売却した後もフォードの影響力を極力残したいというサイレントパートナーを募集しているということだろうが、日本のことさすがに詳しいですね。 タタ等は売りに出ているものなら何でもいい、という姿勢か、ハマーがいいのかわからないが、私がタタの立場だとすると、どう考えてもマツダの株を狙いにいくのだがなぜだろう(注:タタはこのところの景気悪化でとてもこれ以上買収できる余力もない、と英文記事では記載もある)。
アメリカ=自動車産業と思ったら、ちょっと古いかもしれない。部品会社などを含めた雇用者数の裾野の広さは圧倒しているが、マイクロソフト、インテル、IBM、ヒューレットパッカード、グーグルを初めとするIT系の企業のほうは競争力、財務力など十分あるので「だからアメリカはダメなんだ」という風潮に流されてはいけない。今回の景気で財務体力が付いている米国企業の数も十分多いのではないか?(ただしM&Aするときの資金調達を銀行が組めないというのはある)。
以下は余談 一方、サブプライムのキズに相対的に低いはずの日本で、倒産件数が前回の金融危機並みとなったり、金融機関の財務体力が脆弱化している。 中小金融機関の有価証券の時価会計凍結というあほらしい、政策が実行されようとする反面、貸し渋りが横行しているという。 ではなぜ、中小金融機関は中小企業に融資せず、今まで有価証券投資をしていたのかという点とまったくミスマッチしている。今回は仕方ないかもしれないが、そもそもこういったミスマッチを放置する金融行政が失敗ではないか? 従来から融資していれば、有価証券投資に回す金などなかったはず、それが本来の姿ではないでしょうか?
中小金融機関がなぜ有価証券投資に走るのかといえば、1:貸すところがない(と思っている)から、2:有価証券投資のほうが儲かるから(その分リスクも大きい)である。 要するに中小企業金融全般(貸すところがなく、儲からない)を抜本的に考えないといつまでたっても同じことの繰り返しである。 オーバーバンキングであるにもかかわらず、借りられない中小企業者というのは政府が双方を甘やかしているからだと思う。もtっとも政府側も無責任で、金融機関は金融庁、中小企業は経産省なので、経産省は比較的いいたい放題になりがちである。 経産省が決して不良債権の責任を取ることなどない(結局は税金ですが、それだけ支援したいのだったら、不良債権は次年度の経産省の予算から削る、それなら貸し渋り解消のGoサインを出すとすればどうだろう)
私はかつて中小金融機関の破綻後の資産査定に従事したことがあるが、その金融機関は、なんとアルゼンチン国債連動型債権に20億円投資していました。今、浦和レッズにいる高原選手が同国のボカジュニアーズに在籍していて、デフォルトが発生して帰国してきたころの話です。当該20億円が一気に回収不能となり、あっけなく自己資本比率が2%程度になりました。 こんな投資リテラシーの金融機関がまだあるのなら、即刻再編すべきです。 時価会計を凍結すると、投資有価証券がまあデフォルトとまでは行かないが、当事者の経営の失敗に目を瞑ることになってしまい、結局は預金者にはなんの利益にもなりませんし、中小企業への融資を普段から行っていないのですから審査能力もありません。つまり存在価値がなく、能力もないものを放し飼いにするようなものです。
今夜のWBS(ワールドビジネスサテライト)で、多摩信金の理事が、「生き残っていける企業に融資しないと本当に意味あるものにならない」という趣旨の発言があったが、彼は非常に的を得ている。同感だ。その後に評論家が「技術力とか経営など中身を見ないといけない」といっていたが、これはうわべの意見だ。 融資は麻薬と同じで、与えてはいけない人に与えると劇薬になる。 こういった劇薬(ホームエクイティローンなど)の積み重ねがサブプライムローンとなった、という対岸の火事をよく観察してほしい。返済見込みのないものには融資してはいけないということを。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008/11/12 12:52:19 AM
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