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元・経営コンサルタントの投資日記

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2009/01/10
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satyam_logo.jpg

インドのIT企業サティヤムコンピュータサービス(ティッカーSATY、ボンベイ証取、なおNYSEにもADRが上場されている、同SAY)の会長が自ら粉飾決算を行っていたことを容認した後、辞任したというもの。

これは腰が抜ける出来事だ。

サティヤムは本件に先立ち、昨年12月16日にインドの建設会社と不動産会社を買収すると発表したことから始まった。

サティヤム側は欧米諸国のハイテク不況からのポートフォリオ対策としてこういった「内需型」のビジネスは収益安定化に寄与する、と主張した。

しかしながら、最先端のIT企業(といってもオフショワのアウトソーサーだが)がなぜ建設・不動産ビジネスなのだ、と言う点に市場は大きく動揺した。

さらに問題だったのは、この不動産会社と建設会社の株主はサティヤムの会長だったという点である。こんな利益相反まがいのビジネスがこの不況時期に堂々と容認されること自体がおかしな話で、同社の信用は失墜した。

そこでサティヤム側はあわててこの買収発表を撤回してしまった、とう事件があった。

 

その後1月9日に同社の会長が過去数年にわたって粉飾決算を行っていたことを告白し、その後辞任を申し出たといういきさつ。

そして以下のような手記を公開した(訳文はCNET JAPANから)

貸借対照表に事実とは異なる部分が生じたのは、過去数年間にわたって利益を水増ししてきたことのみに起因する(水増ししていたのはSatyamのみであり、子会社の会計報告は事実を反映している)。

最初はわずかであった実際の営業利益と会計報告書の数字の差が、数年経つうちにどんどん拡大してしまった。Satyamの事業規模が飛躍的に成長するにつれ、その差が管理不可能になっていった。

より高水準の業績の利益を上げていることを示すためにさらなるリソースと資産を抱えなければならなくなり、そのためにコストが著しく増大し、実際の利益と報告書の数字の差は一層大きくなってしまった。

 この差を埋める埋めるための試みはすべてうまくいかなかった。張本人たちはまだほんの一握りの公正さを持ち合わせていて、優れない業績が企業乗っ取りにつながるのではないかという懸念はあったが、この不一致を明らかにした。これは、食われることなく降りる方法を知らないで虎にまたがるようなものだった。

以上

売上高目標が達成できなかったので、架空売上高を計上し、架空の現金預金を計上するという愚行に出た。そうしないと、株価が下落し、敵対的買収にさらされることを恐れた、というもの。

うーん。なんとも初歩的な。と同時に、適当にライツ・プランのようなものでも入れておいた方が、まだ経営が信用できるのか、とも感じてしまった。

 

腰を抜かすショックとは以下のことを考えたからです。

  • いまどきこんな粉飾がまかり通っていたインドの会計・監査問題。

 

 

  • NYSEにADRを上場できたはずではなかったのか?(厳しいはずのSEC基準はどうなのだ。本件、マッドフ事件、前回のエンロン事件といい、「宴の後」の米国証券当局はいつもこうだ)

 

  • 他のインド企業はどうなんだ(特に同業種のインフォシステクノロジーや同族経営のタタ財閥など。日本人なら、第一三共製薬が買収した後発薬メーカー、ランバクシーは果たして? という疑問も残る。第一三共は結局3600億円ものランバクシー株式の評価損を、買収後半年もしないうちに計上するはめに)?

以前NHKスペシャルでインドIT企業の躍進振りの特集があった。そこではインフォシスが中心で取り上げられていたが、そのエリート振りはすさまじいものが合った。インド工科大学(インドで最難間大学らしい)卒業生がそろって英知を競い合い、当時大統領選挙を戦っていたヒラリー・クリントンにも政治献金を注ぎ込むなど影響力と業績、勢いがすさまじかった。

サティヤムのボードメンバーにもインド工科大卒の精鋭が揃い、日本のソニーや米国のGEなど一流顧客を持っている。

地元インドではITサービサーに業界再編が巻き起こる(要するにサティヤム争奪戦が起こる)と言われています。結局 「帝国」 の崩壊の墓穴を掘ったことになってしまうのか?

BRICSの企業(特に中国やインド)は比較的カリスマオーナーが一代で築き上げた 「帝国」 がコングロマリットを組成して繁栄することが多い。帝国率いる 「皇帝」 はいつの間にか周りが見えなくなる。

 

munnbaitero.jpg

 

もっともこういったSI企業のゴタゴタは他国の「皇帝様」のお話とは言い切れない。日本でも2007年NECが米NASDAQの上場廃止処分を受ける、という非常に不名誉なことが起こっている。

これは売上高計上基準の不透明さを改善できなかったNECに対し、NASDAQは改善を求めていたがNECがそれを履行できなかったというもの。(SIベンダーはIT導入の際に導入コストとメンテナンス・維持などの保守コストを区別せずに受注、売上計上している商習慣が日本ではあり、NASDAQはNECに費用収益の対応を明確化するように指示したが、NECが期限までに提出できなかったというもの。日立はNYSE上場しているがそのようなことにはならなかった。尚、日本でもSI事業は来期からは工事進行基準で売上高計上を導入するとのこと)詳しくはある経営コンサルタントさんのブログ「NECは面白い」をご参照 

こういった、マーケット恐怖症は上場企業に限りません。私のコンサルティング経験でも、業績不振企業の再生に先立ち、業績不振の真の原因を必ずヒアリングしますが、こういった経営者の方が多いのです。

株式上場を決めて資本政策を立案し、事業計画も立てた。取引先(株を持ってもらう)にも、従業員にも(持ち株会や求心力になる)にも大見栄切ったし、後に引き返せない、と言う思いで、赤字プロジェクトを実行した、決算粉飾を行ったというケースが多いのです。

 

インド人は「買収されれば、将来買収し返せばいい」と比較的楽観的な将来イメージを持っていると思っていたので、やや残念です。不況になるとこういった膿は必ず出てきます。ボンベイの例の連続テロ事件など政治リスク以外にもリスクが大きいことが露呈してしまいました。

まだ出てくるかもしれませんが、こういったマイナスを乗り越えて再び成長軌道に戻ってほしいものです。

インド経済の将来性はゆるぎないと思うものの、政治リスク、「皇帝」リスク(裸の王様リスク)」などの大きさも残ってしまった。きちんと経営しているインド企業の資金調達に影響を与えないかが心配です。






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Last updated  2009/01/10 03:53:05 PM
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