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テーマ:株式投資日記(20509)
カテゴリ:破綻・再生
GMのCEOであるワゴナー氏が辞任したと報道されました。報道内容では、米政府、オバマ大統領自身が辞任を迫ったとする説もあります。
巨額の支援と引き換えに、経営責任をとらせ、さらには労組などにも譲歩させるためのものであるとか。また、AIGに弱腰だった姿勢を批判されたため、GMではその「学習効果」を示したなどといわれています。 ただし、作業部会には自動車業界出身者がいなかったのではないか?
自動車産業以上に影響力が大きい金融業界でも、ワシントン 対 ウォール・ストリート といった取り上げ方をされており、若手のガイトナー財務長官をまるでロックスターであるかのような取り上げ方で、ウォール・ストリートを退治するようなイメージでマスコミ報道は過熱化しています。 その辺を察知したのか、オバマ大統領は先週金曜日に15人の米銀首脳をホワイトハウスに迎えて、直接対話に臨んだようです。報酬の件と監督権の強化の件について直接理解を求めた模様です。 大統領としては、マスコミという変な「フィルター」を外して、自らの意見や政府の方針を直接伝えたかったという感じで、CNBCのインタビューなどでは直後の米銀CEOたちは概ね、良い評価だったように思えました(ゴールドマンサックスは官民ファンドへの投資を表明し、モルガンスタンレーは進んで協力して不良債権を売却すると、そしてJPモルガンは公的資金返済を急がないとそれぞれCEO自らコメント)。
日本でもこのようなことは過去になかったのではないでしょうか?もっとも日本の場合、銀行経営者が「御上」である政府に不満を述べるなどもってのほかなので、政治家が経営者に気を使うなんてことはないのかもしれない。仮に、面会しても自民党の政治家に銀行経営者に語りかける能力があるとも思えない。金融庁はいつも上から目線で銀行経営陣と接しているイメージが強いです。
しかし、日がたつと、日経新聞を含めて各紙はワシントンとウォール・ストリートの距離を広げようと画策しているように感じました。本来、一番距離感が近いはずの、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)でも、大統領が、「こんなときなので、報酬は控えめに」 という主張だったのに対し、銀行首脳側は、「ウォール・ストリートへの(過剰な)バッシングを控えめに」 という主張であったようで、溝のあることを描いていました。 新聞の写真でも、オバマさんと銀行首脳が並んだ写真は皆無で、CEOたちがホワイトハウスを歩く姿が中心でした。 記事では、オバマ大統領は、大統領になってホワイトハウスを改装しなかった初の大統領であり、カーペットに前政権のシミが残っている、とか、会場は質素な食事と水だけが用意されていたとか、政権側の 「節約ぶり」 が強調されていました。 その成果? があってか、早速バンクオブアメリカでは投資銀行部門における成功報酬のあり方について見直し作業を行う、と同社の人事部がスタッフ宛に送ったメールをWSJでは紹介していました。そのコメントの概略は、長期的な企業価値の向上のためには、短期的な成果に基づく報酬基準ではなく、もっと長い目で報酬体系のあり方を考えるべきである、というもののようでした。変われば変わるものです。スピードも速い。
さて、支援と引き換えに経営責任。これは日本の銀行支援でも揉めました。国有化された、りそな以外では大手銀行は責任を取らなかった記憶があります。 なおかつ、りそな銀は最後の仕上げでの国有化でしたので、経営責任と言っても押し切ることもできました(それ以上に銀行経営陣が、政府当局の言いなりぶりを露呈していたと思うが)。
GMと金融業界は別、との認識なのか、これが象徴的になってしまうのか、次の銀行支援があった場合、経営責任問題が再燃することは必定のような気がしてきました。
間違っても、米国銀行の健全化は世界経済の健全化、日本人からいえば、安心して自動車ローンを組んでトヨタ、ホンダ、日産等の自動車をアメリカ市民に買ってもらう(または電化製品を買ってもらう)ための、「システムの健全化」のためであり、個別銀行の経営責任となれば、大きく影響を及ぼさないかなあ。 それを察知してか、バンクオブアメリカ、ゴールドマンサックスなどは公的資金の早期返済を要請していますが、大統領は 「経済が完全に回復してからが望ましい」 とコメントしたようです。
JPモルガンのダイモンCEOは、「今回の不況を金融業界だけの責任にするのはおかしい」と銀行経営者を代表してコメントしたそうです。 いわく、イラク戦争に対する過大な支出、慢性的な貿易赤字、不安定な資源・エネルギー価格なども今回の不況・金融危機の原因の一端があるはずだ、と(さすが。的を得ている)。
GMの破たんは従来から競争力のある車の開発に遅れたから、という自業自得説が米国でも主流であり、銀行に経営責任問題が飛び火するのか微妙な感がありますが、世論というのは過熱化しますし、オバマ大統領を支えるのは世論ですから、銀行首脳が警戒してもおかしくないでしょう。 我々投資家から見れば、早期にシステムの回復と、消費者のマインドが上向くことを願うばかりですが、まだまだ雪解けには遠く感じました。既にガイトナー氏は追加公的資金の導入の必要性ある金融機関の存在を示唆しています。
ストレステストの結果が待ち遠しいですが、やはり資本主義の国アメリカですので、銀行経営陣の責任は取締役会できちっと議論されて、それがホワイトハウスの 「心の意見」 と一致していることがベストシナリオだと思いますが、ホワイトハウスが 声を出して企業経営に「物を言う」というのは米国であるがゆえに、良くないというのが持論です。 民間企業の経営の介入の度が過ぎると、かえってアメリカらしいダイナミックな経済活動を停滞させてしまい、強いては支持率に影響するのではと感じます。
米国が資本主義、自由貿易、民主主義といったそのイデオロギーを曲げてしまうと、諸外国は絶対それを大義名分にしてまねようとします。民主党政権であることは承知しますが、基本を貫いてほしいと思います。それが日本の国益だとも思います。
(ただし、日本自体は、三角合併や買収防衛等自由を求められている時に、守りに入って、こんなときに 「自由貿易だ」、なんて都合のいいことを言っているので、感心できない側面もあります)
ということで、当面ベアマーケットに逆戻りかもしれませんね。今日は日経平均もダウもものすごい反落ですね。落ち葉拾いにはいいかもしれません。 GM問題、ストレステストの結果、その後の追加公的資金・国有化問題、相場の山はこの辺で打ち止めだろうなあ・・・。まだまだ我慢ですね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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