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テーマ:株式投資日記(20511)
カテゴリ:破綻・再生
ストレステストの結果は本来なら昨日4日に発表のはずでしたが、先月末に明後日7日に延期されることとなりました。
延期理由はいろいろいわれていますが、その代わり、いくら不足していて、どのような種類の債権(商業不動産ローンとか抵当証券とか)がどれぐらい毀損しているか、ということまで踏み込んで発表すると言われています。 その後、情報が錯綜し、19のうち、4~10の金融機関は米国経済が最悪シナリオ(09年の失業率10%など)をたどった場合、資本不足に陥るだろうといわれています。 「合格当確??」、と言われているのが、シティグループとバンクオブアメリカで、それぞれ各々1兆円レベル(100億ドル)の資本調達が必要というのが「下馬評」です。 そして、ウェルズ・ファーゴもボーダーラインと言われているようです。 ただし、憶測ながら、シティやバンカメは不足資本を自力で調達できる可能性があると言われています。
そして週末には米銀首脳等からストレステスト批判が繰り広げられました。いわく「政府の想定シナリオは悲観過ぎて、現実の米経済にそぐわない」(バンカメ)といったものでした。確かに最悪期は脱しつつある米経済の状況下ではそのような意見は一考の余地があるかもしれません。 しかし、ストレステストそれ自体は2月下旬ぐらいの「最悪期」(になる可能性が高い)時期に設定されたもので、いまさら の感が否めません(検査対象となった19の金融機関同一条件ですし)。 そしてご存知、ウォーレン・バフェットは「ウェルズ・ファーゴやUSバンコープとシティでは同じ金融機関とはいえ、ビジネスモデルが違いすぎる。同じ尺度で評価するのはナンセンス」と珍しく噛み付きました。 これは日本でも「金融検査マニュアル」が世に出たときに、「中小企業と大企業を同じ定規で測るのは実態にそぐわない」という批判が出て、平成14年ごろでしょうか、「金融検査マニュアル・中小企業版」が出されました(私見では、当時このマニュアルで救われる中小企業の数は多くはなかったと思う・マニュアル自体はよく出来ていた)。
結果を見ないとわかりませんが、ストレステストはそこそこ、透明性が出てくる可能性が膨らんできたように思います。シティやバンカメの検査結果をかなり踏み込んで公表すれば、「資本は足りる、だの、これじゃ持たない」だの評論家諸氏のご意見が出てくるでしょう。 今までは自己査定の結果のみの発表でしたが、ほぼ同じものさしで各金融機関の査定を行っているので、投資家からはウケがいいかもしれません。 そして何よりも5日のNY市場はストレステストの結果を楽観視する感じで続伸しています。市場は景気の底入れを感じ取っているので、資産価値の下落が納まるため、追加損失が広がらない、というイメージだと思います(けどちょっと楽観すぎないかな)。 ただし、資本が足りないと言われた銀行が、資本調達するまでに、もう一回「最悪の事態」になったらどうするんだろう? 過度な楽観は禁物でしょう。リハビリ結果が良いからと言って、いきなり外に出て全速力で走るとまたけがを悪化させないか心配です。 ウォーレン・バフェットは、ウェルズ・ファーゴの株式の追加取得を行ってもいいといったようです。ただし、バフェット率いるバークシャー・ハサウエイ社の2番目に大きい出資先で、同行の大株主であると言う点も考慮に入れなければなりません。株価や出資持分を防衛するための発言、つまり、ポジショントーク? 1晩で株価は23%も上昇してしまいました。
入り口のストレステストは、一応ほぼ見えてきました。一方、次は出口となる、官民投資プログラム(PPIP;Public Private Investment Program)です。現在尚、投資を行うファンドマネージャーを募集中とのことですが、この前まではピムコとブラックロックのみの応募だったのですが、今では相当数の応募があるようです。 その応募者の中に、この人、W・ウイルバー・ロスがいることが判明しました。ロスのPPIPに対するインタビューがFT.com View from the topに掲載されています。 インタビューの内容は英訳に自信がありませんがおおむねPPIPは ノンリコースであり、低金利、政府からのハイレバレッジが活用できる点が良いと評価。 また、我々は投資してナンボの投資家でリスクがあれば、取りに行くと。 政府がローンの大半とエクイティの半分を出資するため大きなリスクはないと判断。金利の半分は政府が払うのだと(これは面白い発想で的を得ている)。 もし、投資家から「ハゲタカ」呼ばわりされた場合は?との質問には面白い回答が。 「PPIPの投資家の大半は州政府の職員や州立大、私立大の年金基金だったりする。我々は運用でお金をもらうのが本業だ。損失も利益もパブリックに帰するだけ」というコメント。 (不良債権投資であるというリスクを理解した)小口投資家にも道を開きたい。 問題のバリュエーションについては、「もし仮に複数のファンドマネージャーが同じような金額を出して、それでも売却しないとなると、市場価値を受け入れないのは銀行経営者になるので、必然的にマーケットで叩かれるであろう」と回答しています(売却を拒否できなくなる)。 また「もし私が銀行経営者だったら、公的資金でもなんでも受け入れて、さっさと不良債権を処理して、前向きな経営に専念する方法をとるだろう」と回答(私も株価に厳しい米国社会だと結局早く不良債権を処理して立ち直らせる経営者を支持すると思う。したがって、PPIPに参加した方が「よい銀行」という世論をいかに醸成するかがガイトナー君の腕の見せ所)。 問題の回収には、今の統計はグロスでしかとれていなく、一つ一つのサブプライムの情報があまりない。これを解きほぐせば、リターンが見込まれると考えているようです。 すでにシティグループのサブプライムアセットの一部を個別に買収して、試験的な試みが行われたようです。
バフェットにロス、この米政府公認の世紀の大ハゲタカファンドが果たしてどのような活躍をするのでしょうか? 不良債権の山を目の前に、次々と 「米国著名投資家」 が終結しつつあります。不良債権に値段をつけて回収する投資が「もっともバカな投資家」なのか、「結構おいしい投資」なのか拮抗してきました。すべてはプライシングでしょう。参加するファンドマネージャーが5~6と限定的なので、そんなに大きな金額が出て来ない可能性も高い(顔ぶれが分かっている入札は結構入札戦術が取りやすいのではないか?)。
PPIPへの投資が出来るか、ストレステストがうまくいった後のシティやバンカメに投資する、というシナリオをそろそろ考えておこう。前者は無理でも後者は出来る。底の見えたバンカメは「買い」じゃないのか? いずれにせよ、米銀不良債権問題は回復に向かうシナリオは、時間軸が1年から2年のバッファーがあるにせよ(ストレステストやPPIPでも回復しない場合は今度こそ、公的資金が全力投入されるだけ)、現実味を帯びてきたように感じます。 すでに米国政府は米国に銀行は多すぎるとの考えを表明しているようです。 「破綻しない限り」、勝ち組よりは負け組に投資した方がリターンは得られそう。
「勝ち組」の筆頭であるJPモルガンはPPIPへ不良債権の提出を拒んでいますが、彼が出てくると、PPIPは大成功になるような気がします。また、破たん系の銀行の買収にも積極的に意欲を見せています。米銀の立ち直りは意外と速いかもしれません(私自身も意見が揺れていますが)。
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