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元・経営コンサルタントの投資日記

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2009/05/13
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カテゴリ:破綻・再生
 

FJP_AboutFord_CorporateInfo_Hero_02_IMG.jpg

 

米国「デトロイトスリー」の一角で、唯一政府に資金援助を要請しなかったフォードモーターカンパニーは、約18億ドル相当の公募増資を発表しました。

同社は米国自動車会社の中で、資金的に現在の経済環境下に置いても、2010年ごろまで資金繰りにめどがついているとして、米政府に頼らず自力再生の道を歩んでいます。

思い起こせば、フォードは一早く、アストンマーチン、ジャガー、ランドローバーなどのブランドをインドのタタ自動車他に売却し、資金繰りの悪化を食い止めていた。

それはおそらく、GMのGMACのような金融子会社がGMほど派手な不動産投資などをしていなかったため、本業悪化の波をまともに受けていたことによる危機感が強かったのでしょう。GMは一時期、本業の車は赤字で、GMACは黒字で連結ベースの黒字は金融子会社だけ、という時期もあったような気がします。

一方、フォードはそういった「孝行息子」(今ではドラ息子)がいなかったのと、トラック等の低燃費車が多かったので、一早く赤字が響くようになった。

CEOもボーイング社の辣腕だったアランムラーリ氏を迎え、彼も一早く上記のような立て直しを図っていたのが、結果的に幸いだったのかもしれない。

一方、マツダデミオのシャーシの世界ブランド全体での共有化を画策するなど小型車対策も抜かりなく、2010年には、トーラスのモデルチェンジや新型のハイブリッドマスタングなどの戦略車も発売を迎えているという。

また、4月の米国新車販売台数でトヨタを抜いて全米2位に返り咲いています。

 

もちろん、フォードとて、UAWや債権者団体との債務カット交渉は行いましたが、GMやクライスラーよりも素早く話をまとめ上げることに成功しています。これらはムラーリ氏の功績が大きいとして、CEOとしての手腕も評価されつつあります。

今回の増資株の一部はUAWへの負債返済に充てるようです(しかし、組合が株主になるとまたややこしくならないのかな? フォードでは賃金を「日本メーカー並み」に引き下げることにおおむね合意を得ています。

増資資金の一部をさらに負債の買戻しに使う(つまり債務カット交渉に活用する)といわれており、金利負担の削減にも取り組んでいます。

また、増資が出来る、というのは従業員にもディーラーや部品メーカーにも明るい話題を提供できますので、「次はGM」といわれるさなか、団結力が付きそうです。

フォードが増資をするのは50年代に上場して初のことのようです。

しかし、それでもフォードの1Q決算は、多量の出血の止血にめどが立ったという程度で、まだまだ集中治療室から一般病棟へ動かすには、しばらく様子を見なければならない状況でしょう。

アテにならないが、どうしてもアテにしてしまう債務格付けは、 「投機的水準」 のままで、まともな投資できるBBBには程遠い(まあ、格付けはよすぎてもアテにならないが、悪すぎるとかなりの程度で的確すると言うべきでしょうか)。

 

1Q決算の概要

 

図2.jpg

したがって、今回の増資を完了しても依然、債務超過のままです。東証では債務超過3年で確か上場廃止基準で、日本では民事再生か会社更生にかけると、債務超過だと、事業譲渡や減資あるいは、増資に対して、株主の発言権は無視され、裁判所の許可でこういった資本構造の改善ができてしまう(裁判所に許可を求めるのは経営者の意向を汲んだ代理人なり管財人なので、事実上経営者が決定できる)。

 

(表面上は)資産超過の日本の総合電機メーカー他は、「米国金融危機」 という 「他人事」 のせいで、公的資金を受けようとしていますが、悔しかったら公募増資してみることでしょう。日立はNY市場にも上場していることでしょうし。

フォードの場合は再生ができそうかどうか、とりあえず市場の「中間審判」 を仰ぐような形です(もちろん勝算十分だからこそ、増資を決めている)。

ただし、本日のところは大幅下落です。

一時期フォード株は1ドルを切るレベルまで達したが、現在は6ドル付近に回復しています。

 

そういった中での今回の増資発表。今米国株式市場は、増資ラッシュで、特にストレステストで、不合格を食らった銀行が相次ぎ増資発表をしていて(合格しても増資発表しています)、タイミングとしては必ずしも良くないですが、最悪期を脱したと投資家が考えている、今この瞬間に増資する、というのもポイントかもしれません。

 

1Q決算ごとや、新車販売台数発表毎にシェアの進捗等を見ていかないといけませんが(その前提としてマクロ経済の回復は最も大事ですが)、かつて、クライスラーは経営危機に陥った80年代、アイアコッカCEOの下で見事再生しました(長続きしませんでしたが)。

そのアイアコッカに賭けた、と言ってもいい、ピーターリンチはマゼランファンドの資金の持てる分をすべて(と言っても投信の投資制限の範囲内)を、ミニバン発売直前のクライスラー株に投資して、彼のファンドマネージャーとしての地位を不動のものとしました。

状況は比較的よく似ています。十分な資金繰りと市況全体の不況感で、景気が回復すれば業績の改善が見込める状況(トヨタ他いくつかの強い会社にやられたわけではない。みんな悪い)。経営者は比較的優秀で、反撃のできそうなパイプラインもある。

 

我々個人投資家は、ムラーリに会って、業績見通しを聞ける立場になんてありませんが(たとえ会っても英語ができない)、フォードで 「テンバガー(10倍株)」 はありうるかもしれない(10倍は無理でも5倍程度ならなあ。ピーターリンチがはじめてクライスラー株を買ったのは倒産寸前といわれる2ドルだったという)。

 

トヨタでもホンダでもなく、投資リターンなら、私はこちらに期待します(両社の株価は100株単位で株価も高い)。ムラーリCEOにどこまで付いていくかといったところでしょうか。

自分の車をフォードにしようと思わないが(自家用車はトヨタ)、投資ならこっちかな。






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Last updated  2009/05/13 01:16:57 AM
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