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テーマ:株式投資日記(20511)
カテゴリ:コーポレートガバナンス
この不況に安定も何もないじゃないか、と思われますが、安定的な経営とは何ぞやという点をちょっと考えてみたい。不況の時こそ、安定性が試される、とも言えるのではないでしょうか?
元々、安定的な経営のためには時間が必要であり、したがってちょっと株主還元が良くないからと言って株主にちょっかい出される必要はなく、株主主義経営はよくない、したがって買収防衛策は正当化される、というのが何となく、「長期安定的」経営の大義名分の一つだったと思います。 しかしながら、日本企業は本当に安定的な経営を行っているのかどうか、という点はあまり学術的な研究もなさそうだし、そもそも何のために長期安定的経営を目指すのか、という点にもはっきりとしたメッセージが日本企業側から出てこないような気がします(要するに都合よく使われている)。 過去の経営がうまくいっていたから、それを継続的に行うことが長期安定的経営なのか、目先の赤字経営の責任を逃れるために、「今は赤字でも将来黒字になるからね」という言い訳なのか疑問です。 企業がだれのためにあるのか、という視点がどうしても欧米と完全に一致しないので、この辺は水掛け論争になりがちです。ここは論より証拠で臨みたい。
ちなみに米国株式に実際投資して、CEOのインタビューを読んだり聞いたりしますが、彼らはほぼ例外なく、「長期的な株主と企業の利益のため」というメッセージを投資家に繰り返し言っています。ゼネラルエレクトリックも配当を削減する際に、「長期的なGEの見通しは明るい(風力発電タービン世界一)」と盛んに口にします(言い換えれば今はよくないと言っているようなものですが)。
では、論より証拠。 日本と欧米企業の長期的な純利益の推移。なお、数値は全てMSNマネーの財務諸表の「10年間の概括」から引用しています。 では。 富士通とIBM(米国) かつては政治問題に発展したライバル会社(だった)。両社ともITバブル崩壊後は痛手を負っているが、その後の推移はIBMは連続増益で来ている。08年は過去最高益。 ホンダとフォルクスワーゲン(ドイツ) ビッグスリーと比較しても意味がない。これはホンダもしっかりしているので、ホンダの方がよさそう(円安だったが)。ただし両社とも景気循環的で、安定感がないですね、仕方ないけど。 ホンダの利益が円安か実力かがこれから試される。
メガバンク 米銀との比較ではなく、欧州銀との比較(の方が面白い)。HSBCがケタ違いなのは仕方ないが、BNPパリバ(日本では悪名高くなったが、フランスナンバーワンの優良銀)はMUFJと実力的には同じぐらいと思っていました。MUFJは確か繰越損失があったので、税金額が少ない可能性がある。 それでもMUFJの経営の不安定さが浮き彫りになっている。「それでも持合いやりますか?長期安定的な経営のため?」)。10年で5度目の赤字とは...。ヨーロッパに行くとメガとは言い切れない。内弁慶。
イオンとテスコ(英国) グローバルトップ10を目指すイオンとウォルマートのライバルになるかもしれない世界3位のテスコ。やはりイオンの利益は凸凹していますね。日本と海外とは事情が全く違う(海外は既存店の売上高が増加します)とはいえ、これじゃ何のためにいっぱいショッピングセンターを建てたのかという感じ。 テスコは海外展開も進んでいて、ポンド高(だった)にもかかわらず、この経営成績は立派だと思う。 味の素とクラフトフーズ(米国) この2社は味の素ゼネラルフーズで合弁がある。クラフトフーズは2007年にタバコ会社フィリップモリスから分離独立している。今後大胆な事業の入れ替えが予想されている。味の素といえども2回も赤字に陥っている。あの調味料は独占的なシェアがあったんじゃないのか?
電機・コンピュータ、自動車、金融、流通、食品とランダムに選んでみた。この10年間にITバブルの崩壊とサブプライムバブルの崩壊という2度のバブル崩壊がありました。 この間、安定した利益を計上しているのは、ホンダを除き、ほぼ海外の企業(その業界ではトップレベルですが)ですし、やはり規模が大きいと業績も安定感が出てきます。
IBM(リストラ方法が問題になることがある)も過去は大胆な事業改革をしていますし(「巨象も踊る」が有名、最近もHDDを日立に売却し(逆に日立はお荷物を進んで抱えて、自爆している)、パソコン部門をレノボに売却するなど行っています。一方、ソフト会社の買収に余念がありません。
私には日本の経営者が言う(マスコミが勝手に言っているだけかもしれない)、長期経営とは何を目的として行っているのかわかりません(もちろんしっかり経営している会社もたくさんあります。ここにあげたのは典型的なものかもしれない)。
海外は「株主のため」に経営した結果、しっかりと利益成長をしていますし、この不況でも赤字に陥っていない。これはおかしな結論が出ています(最も海外企業は12月決算なので、最悪の09年1月~3月が入っていないというアドバンテージがあるが、それ以外の年でも安定感の差は歴然)。 日本企業は逆にホンダを除き、10年で赤字が1回以上必ずある。三菱UFJに至っては5回目の赤字(2年に一度も赤字。三菱でこれだと他は...ですね)。 何気なく選んだ業界の代表企業でマイクロソフトマネーから過去10年間の利益が引き出せる企業ということで取り組んだ結果ですが。任天堂とかを出せば事情は変わった可能性もあるが、その比較相手はアップルかな?
今こそ、本当の長期経営を目指した大胆な取り組みを期待したいと思います(別に株主のためでなくてもいい。分かっていて取り組めないというのが情けない)。これが本当のラストチャンスでしょう。あと数年たてば、間違いなく中国企業が完全なライバルとなるでしょう。その時は間違いなく日本経済は落日になってしまいそう。かつて日本が米国企業を蹴落としたように、今度は中国企業にやられそう。その時、日本は90年代の米国のITなどの大胆な別事業が芽生えているか? 日本人の一所懸命というのは美徳として立派だが、潔く時代に適合するというのも必要。戦局を読めずに古い体質に固執して悲惨な目にあった第二次大戦の失敗に学んで欲しいなあ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009/05/23 01:58:42 AM
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