|
カテゴリ:コーポレートガバナンス
公開会社法をつくりましょう、という話が本格化しそうです。なかでも今回は社外取締役の第三者性やその人数などを法制化しようという動きに有効性があるのか、という点を実際の事例を基に議論しましょう。
私としては、そもそも取締役の責任をもっと明確化させる方がややこしい制度を作るより、有効性があると思っています。株主代表訴訟の直接の相手方になること(現在、株主代表訴訟の責任は取締役ではなく、「会社」という抽象的な存在に規程されている)でしょう。 その反面、リスク料として役員報酬の一定額の上昇は許容されるべきだと。 取締役のリスクリターンを高めるべきでしょう。普通にやっていれば、報酬も上がるし(当然報酬は株主の理解が必要)、ダメな場合財産がリスクにさらされ、社員と役員の明確な違いにもなって、ヤリガイも増えるように出来ないでしょうか?
社外取締役が増えると、経営監視体制が向上し、意思決定がよくなるのか? 社外取締役は「経営のプロ」で、上場異業種のCEOクラスだと、会社の力になるのか?
私は、ダウケミカルに投資しています(多分議決権がないはず)。同社のCEO、アンドリュー・リバレス氏は2006年から、シティグループの社外取締役を兼務しています。 サブプライムショックが発生したのは2007年夏、2008年に本格化しました。 特段取締役として責任を受けず、現在も同じ位置にいます。
一方、「本業」であるダウケミカル社は、2008年に約1.5兆円を投じてライバル企業を買収しましたが、資金調達に失敗し、2009年の金融最悪時期に高金利で買収資金の調達を行い、最悪の業績時期をやり過ごし、やっとの思いで企業業績を 「並みの不況」程度に持ち直すことが出来ました。
ダウケミカルの株主として、リバレス氏が2008年から2009年にシティグループの経営問題に何かサジェスチョンをしていたとは思えず(資金的に危機に陥ったダウ社のことに専念していたはず、そうでないと困っちゃいますね)、かといってサブプライムバブルについて何か理解や提言があったのか不透明です。 むしろ、バブルを見過ごしていた可能性すらあります。
要するに、シティグループにおけるリバレス氏は、公開会社法で想定し、日本で一般に言われているような社外取締役の期待に沿っていない人物であると思われます(2008年度の報酬は株式とストックオプションで約145千ドル、現金はゼロ)。 本来なら本件では、本人が辞任すべきかもしれませんでしたね。
もちろん、何か気付いた点があれば提言するようなケースもありますが、過度に期待をかけて制度化しても、ワークしないように思います。
米国でも独立社外取締役は、機能している場合とそうでない場合があり、制度作ったらそれでいい、という風にならないように気をつけたいものです。結局は取締役一人ひとりのガバナンス意識をいかに向上させるのか、に力点を置くのがいいと思います(もちろん、制度から入って行って、意識を変えてもらう、というのもインパクトがある点は認めます)。
魂の入らない仏を作って喜ぶのは、「識者」 です。
制度として、「あるべき論」だけが独り歩きし、現実のケーススタディに疎いという愚が何度もまな板に上ってくる、ハトヤマ内閣(子供手当然り)。これからオープンディスカッションがスタートするらしいのですが、民主党に入れ知恵する連中を洗い替えする方がいいんじゃないか?
応援よろしくお願いします。
お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[コーポレートガバナンス] カテゴリの最新記事
|