|
カテゴリ:思い出話
本日多忙な土曜日。
仕事中にメシかトイレか究極の選択をしている時に、おばあちゃんが入ってきた。 頭の先から足の先まで、ド紫のおばあちゃん。口紅こそ普通カラーだったんだが、アイシャドーからネイルまでド紫である。 ジョージの古いお客さんのようで、年に数回現れる名物おばあちゃんらしい。もうちょっと若かった頃から奇癖があるようで精神科のカウンセラーにずっと来なくてもいいと言われながらも通っているらしい。 初めてきたサロンでちょっと緊張してたようだが、お手伝いさんとおぼしき女性に付き添われちょこんと待ってる間にキョロキョロしてたので、何か飲むものでも持ってこようか?と聞くと水が欲しいと言うので、丁度スタッフルームにあった紫のプラスチックのコップであげたら、にっこり笑って『イッツパーフェクト』と小声でつぶやいた。 綺麗な背の高いおばあちゃんなんだが、見ているうちにふと思い出した。 小学校の頃だったか中学の頃だったのか。 いつ頃だったかの記憶があやふやなのだが、垂坂山(タルサカヤマ)という山付近で頭のてっぺんからつま先まで真っ赤な服や靴や傘や鞄を身にまとったおばさんが出没していた。『メリーさん』というのが彼女に付けられた名前で、メリーさんは大体何時頃にあの辺を歩いているとか、昨日はメリーさんはどこどこからバスに乗ったとか、子供ネットワークで情報が流れる度に メリーさん見たさにみんなでウロウロ捜索に出かけた。 メリーさんは別に奇声を発したり威嚇したりするわけではなく、ただずっと歩いている。 メリーさんは一体どこに住んでいて一体どこまでお出かけしているのか。 それはネットワーク内での共通の疑問であり、追跡捜査を試みた者も多かったのだがバスに乗っちゃったとか、ずーーーーーっと歩き続けてるので追跡班の方が先にギブアップしちゃったとかで、結局謎は深まるばかりであった。 んんーーー。この行動範囲の狭さと機動力の乏しさからするとやっぱり小学校時代なんだろうか。 この手の名物おじさんおばさんはどこのエリアにも居たと思うが、小学校の近くの川の堤防にも、あるおじさんが出没した。 このおじさんは『マントのおじさん』と呼ばれていてその名から推測できるように、コートをいつも着ていて前から歩いてくる。至近距離になったところで『あ~~~~ははははぁぁぁぁ~~~~。』と奇声なんだか笑い声なんだか分からないような声を発し、コートをビラっと両手で開くとおじさんジュニアがこんにちは、という仕掛けである。 ま、露出魔なんであるが子供心にはおじさんに対する恐怖心というよりは、チャック全開からこんにちはするジュニアの方が恐ろしく マントのおじさんらしき人物が堤防の遥か向こうから歩いてくるとみんなで悲鳴をあげながらダッシュで逃げたりしたものだ。 マントのおじさんに関しては、学校の集会なんかでも話題になったりしていたのでおそらく警察沙汰になり結局は捕まったんだろうと思う。 当時は他にも実在するのかどうか分からない、というよりは全く架空の人物なんかも噂になった。 口裂け女は全国に出没したが、権造エリアにも現れたようで特にグリーンロードという名の道路沿いに多く出没したようで、毎日誰かが仕入れてくる情報にみんな震え上がっていたものだ。 * 口裂け女はマスクをしてて、私キレイ?といいながらマスクを取ると耳の辺りまで口が裂けている。(全国スタンダード) * 無視していると3回目の私キレイ?の後、襲い掛かってくる。 * グリーンロードを夜車で走ると口裂け女が窓の外を同じ速度で追いかけてくるが足は動いていない。 * 車を追いかけてくるときは這いつくばって肘で走って追いかけてくる。 * 肘で走って追いかけてくるときはUターンして戻らないと家まで付いてくる。 * 私キレイ?と聞かれて『一番キレイ』というと喜んで泣く。が、その直後嘘でしょ!と腕をつかまれる。 すぐに思い出されるものでこんな感じ。忘れてしまった話もあれば、おそらく全国で様々な違いがあるんだろう。 他に有名だったのが、栗のトゲトゲみたいな顔をした子供。 権造の地元は社会の教科書に載っている『日本4大公害』で有名な街である。 権造が子供の頃は大気汚染がピークを過ぎた頃で、電車に乗って地元に近づくにつれて空がだんだん暗くなり、体育の時間なんかに光化学スモッグ警報が鳴る校舎内に逃げ込み窓を全部閉め切ったりした。家の2階からは毎日毎日石油化学コンビナートの煙がモクモクと立ち上るのが絶えず見え 母造方の祖母も確か公害病認定患者であった。 こんな場所であるゆえに夏休みにはズバリその名も『緑の学校』というサマーキャンプみたいなものがあった。せめてチビにはわずかな間でも空気のいいところで過ごさせてあげようという事なんだろうが、学校の学年単位で山の方に疎開する。 この施設に出没したのが、栗のトゲトゲみたいな顔を持つ子供である。 確かちゃんと名前もあったし、顔がトゲトゲになってしまった出生の秘密もあったのだが忘れてしまった。 夜になったら窓の外から、自分も仲間に入れてくれとじっと中を覗いてるとか、どこどこの何番目のトイレに入り鍵をかけて振り向くと後ろに居るとか、夜中に目を覚ましても目を閉じてないと自分の顔のまん前にトゲトゲの顔が居るとか、非常階段の踊り場に夜中を過ぎると体育座りしてるとか。 勇気ある男子達がこっそり外に出てみたりしたんだが、半泣きになって走って戻ってきて『○○が居た!』と大騒ぎ。姿は見なかったものの、藪の中に潜んでわざとガサガサ音を立てて怖がらせたらしい。 そんな事のあった夜なんかは寝られるはずも無く、みんなで固まって一緒に毛布をかぶったりする。が、所詮子供に徹夜が出来るわけも無く1人また1人と脱落して眠ってしまうごとに残された子供は震えながら何だっけなトゲトゲ顔を撃退するおまじないの言葉を呟きながら自分も気が遠くなって眠りに落ちるのをひたすら待ったりした。 こういうのってたくさんあったような気がする。 当時は実際に見たことが無くっても耳から入ってくる情報だけで十分怖かった。 今の小学生なんかも話しだけで怖いんだろうか。 一時映画になったりもしてたようだが、あんなのにビジュアル的に襲われたらたまったものではない。 ちなみにもも造の学校にもこの手の架空の話はある。 『ミスターイエロー』は学校に出没するゴーストらしいんだが、去年トイレに出たとかでチビ達は大騒ぎした。どうやら出所はアートの先生が上級生にした幽霊話が元らしい。 そしてもうひとつの学校の怪、『スプーキーツリー(スプーキー=怖い)』。 学校の裏口の柵沿いに生えている木の中の一本である。 コレは実は去年のムービーナイト(学校の壁に映画を写し野外でみんなが鑑賞する会)にチビらが映画も見ずに走り回るので暗い中道路に出ちゃったりしたら危ないという事で親が追い掛け回して止めているときに権造が発案したものである。 あの木は実はスプーキーツリーで夜中にこっそり見に来てみると少しずつ根っこが地面の上に出てきてしばらくすると歩き出す。夜に近づく子供の家まで歩いて行き窓を枝でコンコン叩いたりする。 だから夜は近づくな、という事が言いたかったんだが、建造の話に最初はええ~??聞いたことない~とか嘘でしょ~とか信じなかったチビ達も他の父兄がうなづくのを見て走って逃げ出し映画鑑賞席付近まで戻る。実際かなり暗かったのでその後チビも木のあたりには近づかずおとなしくしていたんだが。 その後、スプーキーツリーの噂は映画に来ていたチビから上級生に伝わりあっという間に広がった。昼間は平気でチビ達もその木の下で遊んでるんだが、夕方暗くなる頃からそろそろヤバイという事に今はなっているらしい。今では権造が噂の大元だと言う事はすっかり忘れ去られ、『ほらほらスプーキーツリー。』と指差す権造の事を唯一しつこく覚えているもも造が冷たくチラリと見るくらいである。 今日のド紫おばあちゃんのインパクトが強すぎて帰りの車の中でメリーさんに始まり色々思い出してしまった。 ちなみにおばあちゃんの名前が『メリー』だったら最高なオチになるんだが、と期待したのだが、実際は『マーガレット』だった。 ちょっと残念。。。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
|