今週の外国為替市場:12月はドルにとって不吉な月
ドルを取引する投資家は残り少ない12月も、年末休暇を楽しむ気分にはなれないだろう。ドルは年末にかけて、特にユーロなどの欧州通貨に対して売られる可能性があると、市場参加者はみている。そうなれば、過去数カ月にわたった欧州諸通貨に対するドル高の基調は、大きく反転するだろう。米国投資家の間では、株式などの海外資産から資金を引き揚げる資金回収(リパトリエーション)は減少しつつある。対照的に、海外企業は年末を控えて財務状況をよく見せるため、ドルを売って資金を回収するとみられる。短期金融市場の緊張緩和に向けて、米連邦準備制度理事会(FRB)が流動性を供給したことからも、世界の金融システムにはドルがあふれ、9月半ばの米証券大手リーマン・ブラザーズの破たん後の信用収縮を背景とするドル不足は解消され、ドル需要は後退した。FRBが16日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を現行の1.00%から最大0.75%も引き下げると広く予想されるなか、金融システムには今週も、さらにドルが供給されるだろう。FRBは長期にわたって政策金利を低水準にとどめる一方、成長を促すために非伝統的な手法を採用する方針を示唆するとの観測も強まっている。「FRBは要するに、ヘリコプターからドルをばらまいている。こうした措置によって、ドルの調整局面に弾みがついたことは確かだろう。さらに調整が進み、ドルがユーロに対して小幅ながら一段と下落する可能性は十分にある」。季節的な要因もドルに対して不利に働いている。ドルはユーロに対し、12月は下落する傾向がある。2000年から2007年までの12月の各最終週では、ヘッジファンドなどの投機筋が、ユーロを正味の買い持ちに傾けているとシンシェ氏は説明した。買い持ちとは、ある通貨が他通貨に対して上昇するとの見方に基づく取引のことで、売り持ちは、その反対の見方に基づく取引をいう。米商品先物取引委員会(CFTC)の資料によれば、12月の持ち高は平均して、正味で2万9,000枚のユーロの買い持ちになっていると、シンシェ氏は指摘した。CFTCが12日午後に発表した統計によると、12月9日時点の投機筋の持ち高は、約1万6,668枚の売り持ちとなっており、今月はこれからユーロ買いが進むことを示唆している。「ドルの支援材料が弱い」とし、ユーロに対するドルの弱含みは来年初めまで続く公算が大きいとしている。ユーロが2009年1-3月期に1.4000ドルを超えると予想している。ただ、同水準は、今年7月に記録した過去最高値の1.6040ドルを依然として下回る水準だ。ユーロは今週、1.3200ドル~1.3700ドルの値幅で推移する一方、ドルは88円00銭~94円00銭で推移すると、アナリストらはみている。ドルは今週、円に対してさらに下値を広げ、88円10銭の安値を試し、85円00銭まで下落する可能性があると金融危機と経済懸念の継続が、円の支援材料。リスク回避行動が続くなか、今年は円がドルやユーロ、英ポンドなどの主要通貨や、オーストラリアドルやニュージーランドドル、カナダドルなどの諸通貨に対して上昇した。投資家は、資金調達資に利用した円建て借入金を返済するため、世界各地の高金利通貨を売却した。日本の超低金利は、円を借り入れて、高利回りの他国資産を購入する世界的な投資行動を促した。しかし、リスク回避が復活するなかで、投資家がいわゆる円キャリー取引を解消したため、円に対する需要は高まった。円高は世界市場における日本の輸出業者の競争力を弱めるため、日本の通貨当局が円高・ドル安を阻止するために介入する可能性があるとの懸念が、円の急上昇を受けて高まった。輸出が急減するなかで、日本経済は景気後退(リセッション)に陥った。日本当局が前回介入に踏み切ったのは、2004円1-3月期のことだ。ただ、日本当局が近いうちに介入に踏み切る可能性は低いと、市場参加者はみている。日本当局が介入する可能性は33%程度だが、日本銀行の短観の結果次第では、45%に上昇する可能性があるとしている。