ドルに対してさらに上昇する可能性高い
円に対する支援材料は、予想以上に強いことが明らかになってきた。リスク回避姿勢が思いのほか続き、低リスク通貨としての円の魅力が保たれているだけでなく、資金の流れも引き続き円に対して有利に働いている。ドルが円に対し上昇するたびに、日系輸出企業や機関投資家によるドル売りが見られるとのことだ。「ドルは、円に対し今後も下落傾向をたどるとみられ、94円にあるトレンドラインの下値支持水準を割り込むと、弱含みになるだろう」と語った。さらに大きなドルの下落を見込んでおり、1ドル=80円までの下げは避けられない。円相場とリスク許容度の関係が、現在不釣り合いになっている。リスク回避の動きが台頭した場合には、円キャリー取引が減り円に有利にはたらくが、反対にリスク許容度が持ち直しても、円相場はそれほど下落しないと指摘した。「これは、円に対する根本的な需要が強いことを示唆している」。確かに、米連邦準備制度理事会(FRB)が25日発表した消費者支援を目的とする8,000億ドル規模の追加金融対策は、円に対してのみ強材料となったようにも思える。追加支援策の発表を受け、リスク許容度が一時的に拡大したが、金融政策の軸足がさらに量的緩和政策に傾いただけでなく、FRBのバランスシートに与える長期的影響を市場が嫌気したこともあり、その後、リスク許容度は急速に低下した。一部では、流動性の増加によって、住宅市場における地代の低下やデフレ圧力の増加につながると懸念するアナリストの声も聞かれる。しかし、大半のアナリストの間では、支援策で示された大幅な金融緩和政策により、将来的に急激なインフレが生じるリスクの方がより大きな懸念材料とされているようだ。「こうしたインフレ懸念を背景に安全通貨としての円の魅力が増しているため、ドルは今後も円に対して下落する、という見通しが一層支えられている」。ハードマン氏は、「世界経済が急減速し、金融市場が大きく混乱するなか」、ドルは他の通貨に対しては上昇するかもしれないが、レバレッジ解消の動きに伴い、円に対してはドル安基調が続くとみている。また、米政府が打ち出した金融支援策の規模が膨大なことも、ドルを圧迫するだろう。「公的支援は、短期的には各種の金融市場やクレジット・スプレッドを支える効果的な政策に見えるかもしれない。だが、FRBのバランスシートが拡大しており、すでに米国の国内総生産(GDP)の50%にも相当する規模の資産を保証している、という事実をあらためて考えてみると、将来的には極めて大きな悪影響があるとみられる」と述べた。ドルが円に対して上昇する局面では、必ず売り圧力に出会うとみる一方、現在の下落局面はさらに続き、直近安値の93円55銭まで下げ、さらに91円を試す展開も考えられると言う。しかし、こうした一連の要因もさることながら、現在の円高を最も支えているのは根本的な資金の流れだ。財務省が発表した資金動向統計では、9月中旬に発生した金融市場の混乱の際、「投資家の攻撃」が日本に与えた影響の大きさが示されていると述べた。こうした資金の流れが、これまで以上に円高を下支えする可能性が高いと予想している。「日本経済に底入れの兆しが見えれば、日本株式市場には信頼感が戻るだろう。外国人投資家は、この1年で大幅に減少させた株式保有を再び増やし、株価上昇を後押しするだろう」と述べた。