野の花も日々あれこれ考える

季節外れの風邪にやられて、普通の生活ができなくなって４日。
そろそろいい加減に復調しないと、家族みんながだんだん疲れ始めているのがわかる。
普段、ちょこっと私が手を貸していた日常のいろいろを、自分で全てやらなければならない。
それが小さなストレスとなって、みんなの心に溜まり始めている。
うちはみな、それぞれに「隠れ甘えん坊」だったのだ。

幸い、私がまったく動けなくなった月曜日から昨日までは、どうしても出かけなければならない用事がなく、なんとか騙し騙しやってきたが、今日は子供達を時間差でテニススクールに連れて行かなければならない。
殿もさすがに「子供達の世話に奔走する父」という役どころにも飽きてきたらしく、自分が送迎を代わろうかとは言ってくれそうにない。

何とか殿と子供達を送り出し、最低限のものだけ洗濯機に放り込む。
体の節々が痛んでいたのはもうすっかり良くなっている。
熱は相変わらず平熱よりも少し高いままだが、のどの腫れはなんとかひいてきているようだ。
しかし咳は相変わらずひどく、体もかなりだるい。そしてなんともいえない不快な眠気が襲ってくる。
その上、今朝は吐き気と下痢と頭痛も加わった。

結局、午前中は薬を飲んでもう一眠りした。
ほんの少し、だるさがマシになった気がしたが、気のせいかもしれない。
まだうとうとトロトロと眠りかけていたが、殿がにこやかに入ってくる気配で目が覚めた。
「お腹すいてない？しっかり食べないと治らないぞー！！昼飯、おいしいもの買ってきたから一緒に食べよう。」と私の分もお昼ごはんを買ってきてくれたのだが…。

殿、いくらおいしくてもこの体調で鯖寿司は食べられないよ。

「え～？！うまいのになあ…ちょっとだけでも食べたら？せっかく買ってきたんだし…ほんとにうまいよコレ。あのさ、起きてるならお茶いれてくれる？俺、今日は玄米茶が飲みたいんだけど…。あとさ、漬物あったっけ？もう無かったんなら買っといてほしいんだけどな。お前、鯖寿司食わないなら俺が全部食うけどいい？」

いつも通り、自分のペースで生きている殿の、オススメの鯖寿司は丁重にお断りして、私はお茶をいれ、自分の分のおかゆを作った。


３時半には車で娘を迎えに出なければならない。
薬を飲むとまたひどい睡魔に襲われるので飲むのをやめて、あと少しのだるさを振り払うためにドリンク剤を飲んだ。
少し元気になったような気がしたが、今度は胃がキリキリと痛み始めた。
もう、ほとんど投げやりな気分で胃の薬も飲む。
化粧をする気力もコンタクトを入れる元気も無いので、スッピンにめがねをかけ、髪だけはかろうじてまとめ上げ、そこら辺に脱ぎ捨ててあったジーンズとＴシャツを拾って着、ジャケットを羽織って出かけた。

なんだか情けなくてイヤになった。
ただの風邪なのに、何日もかかってまだ治らない自分が「不良品」に思えた。
３月のはじめにお腹を壊して以来、ずっと私なりに体に気をつけていたつもりだったのに…と悔しくなったりもした。
頑張って早く治せと言ってくれる家族の言葉が、「いつまでダラダラしてるんだよ」と自分を責め立てる言葉に聞こえてしまって、ますます落ち込んだ。

それでもなんとか午後の数時間をやり過ごすうちに、少しずつ体が楽になってくるのを感じた。
数日、ちょこちょこと眠ったのが養生になったのか、医者の薬がやっと効いてきたのか、それともヤケを起こして飲んだあのドリンク剤と胃薬が効いたのかは分からないが、夕方の６時半を過ぎた頃、かくんと音を立てて風邪のピークは過ぎ去った。

熱いお風呂に入りたい、と帰り道の運転をしながら思った。