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カテゴリ:心にジーンときたこと・感謝したこと
またこれも夫に勧められたられた本『博士の愛した数式』(小川洋子著)を昨日の夜中、ずっと読んでいました。
小説って、出てくる人のもつ雰囲気や空気感がどんどん染みこんできて先へ進めずにはいられなくなります。 読み終えて・・・うまく言えないけれど、自分の中に思い描いた雰囲気がとても美しく感じた小説でした。 家政婦とその息子である10歳の少年と、数学者である博士とのお話。 かなり不思議な設定で、博士は17年前に出逢った事故のため、長く記憶する力を失っています。 事故以前の記憶はあっても現在進行形の記憶はきっかり1時間20分ぶんだけ。 それ以上経過すると、それ以前の記憶はみな消えてなくなってしまいます。 だから毎日顔を合わせている家政婦も、朝、博士のもとに行くときには自分はまったくの見知らぬ人になっているのです。 自分はずっと共に時を重ねているのに、相手は1時間20分たつとその共有した時間がリセットされてしまう、そんな不思議な時間の重ねかたでした。 けれどどうしてこんなに心の中に美しく残ったんでしょう。 短時間でリセットされてしまうばらばらの時間の中でずっと変わらないものがありました。 博士の中で繰り広げられる、数式・・・数なんて無機質なものだと思っていましたが、それを話すときの博士は相手まですっぽり自分の世界に包んでしまうような数や定理に対する愛情に満ちていました。 博士の口から出てくる素数やら友愛数とかはもう単なる数字ではなく、 手触りのあるような、そこに様々な雰囲気をもつとても美しい姿になっていました。 この本を読む前に読んだ本・・・『国家の品格』という本の中で著者の数学者でもある藤原さんが数学には美的情緒がとても大切である、と言った意味が少しわかるような気がしました。 そのくらい、一つの定理を真実をもとめてたどり着く旅は数を単なる数でなくしていました。 そしてそのたった一つの真実をもとめて旅する博士のもう一つの絶対的に変わらない真実が小さい者に対する純粋な愛情でした。 博士の中では小さきもの(家政婦の息子)の存在は絶対的で、数学の世界に漂っているときのような純粋さと幸福感に満ちていました。 何かに純粋に心をかたむけているということは、もう絶対的なのですね。 なにもかもそぎ落とされて、その感情を光でいっぱいに満たしてしまうような。 だから父親のいないこの少年も博士に絶対的な感情をもつようになります。 この小説自体の表現がけっして飾ってあったわけでなく、淡々と心の動きが分かるといった本でした。でも絶対的な美しい感情のようなものがとても心に残る本でした☆ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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