テーマ:華麗・大川橋蔵の時代劇(450)
カテゴリ:大川橋蔵 映画 (新吾シリーズ)
私には命をかけた試合がひかえている
享保十三年四月三日、江戸城内吹上庭前に於いて御前試合が挙行される当日がやってきました。各流派の剣士達が試合の始まるのを待って各控室に入っていきます。 新吾の部屋には、讃岐守が新吾の来るのを待っていました。酒井が挨拶をしますと、 新吾「お名前は聞いております。幕閣にあって唯一人、新吾に好意をお寄せくださ るお方と、縫から聞かされておりました」 酒井「本日の試合の優勝者は、上様に拝謁を許され、お鯉の方様より直々お盃を頂 戴することになっております。何卒、我らの微意あるところを、おくみ取り の程」 新吾「私はただ、・・・自源流の名誉にかけて、全力を尽くすまでです」 そのとき、試合の始まりの太鼓が響き、讃岐守は、休息のお側御用として家臣をつけておきます、というと後ろに控えていた者の名を呼びます。 呼ばれた家臣が顔をあげます。その者の顔を一目見るなり、新吾は「半十郎ではないか」と、驚きと嬉しさを隠せない様子で言いますと、その家臣は、「いえ、自分は酒井讃岐守家臣、清水主馬と申します」と答えてきたので、 新吾「そうであったのか」 讃岐守が部屋から出ていくと、主馬が「先生、お久しぶりでございます」と新吾に言います。新吾は嬉しそうに、 新吾「こいつめ、うまく騙したな」 主馬がお側御用は自分一人ではこと足りないので、他にもう一名、といい主馬が「姫」と呼んだ方向を見つめます。 顔を伏せて姿を見せた「姫」がゆっくりと顔をあげます。 新吾「あなたは? 」 微笑んでいる「姫」をじっと見つめた新吾は、その「姫」を「多加」と呼んだのです。再会できた嬉しさいっぱいの表情で・・・。 新吾の表情とは反対に、多加と呼ばれた「姫」は少し淋しい表情に、そして、「酒井讃岐が三女、由紀にござります」と身分を明かします。 新吾「讃岐殿の息女・・・また騙されたか」 呆然とする新吾に由紀姫が 由紀姫「父の命を受け、主馬と共にあなた様の御性質、御行状を探るべく失礼いた しました。・・・でも、はしたない真似をいたしましたが、お芝居ではご ざいませぬ。自分の役目を果たす自信がなく、逃げ帰りましたもの の・・・」 と、息づかいがあらくなったとき、新吾は由紀姫の、その後に云う言葉を遮るように、 新吾「姫、・・・その話は止そう、私には命をかけた試合がひかえている」 太鼓が鳴り、新吾のところにも試合の時刻だという知らせがきます。由紀姫への未練もありそうな新吾だが、試合場へと立ち上がります。 続きます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022年10月29日 20時07分41秒
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