往復で11時間だから半日つぶれるよね 第二章
じーじは、遠距離は全然問題にしてません。彼は「待てる人」ですから。会えないのは淋しいけど、それは今だけのことで、どうせ結婚するし、いいじゃん、そんなふうに考えます。そう考えられるのはうらやましいけど、あたしには、これが不安の素だったりもします。「遠距離」ということに切羽詰ってないから、それを解消することも、あんまり考えないんじゃないだろうか、と。つまり、だらだらと遠距離続けていくんじゃないか、と。実際、じーじは遠距離の話をあまりしません。話がその次の段階に飛ぶのです。「一緒に住んだらさー・・ 結婚したらさー・・」遠距離が問題なくて、同棲はしたことないじーじにとっては、一緒に住む話をしてる方がきっと楽しい。でも、あたしはそうじゃないわけです。まずは遠距離をいかに乗り切るか、を考えてくれないと、同棲も結婚もありえないわけです。いろいろ言ってはいますが、でもじーじにはじーじの主張があるわけですよ。話が最初に戻りますが、じーじが東京に研修に来て、いずれ実家に戻る、というのは、あたしは最初から全部知っていたわけです。じーじが上京する前から知り合いでしたから。うちは「攻めの兎」と「待ちのじーじ」なわけで、我々のこの関係は、もちろんあたしから言い出したのがきっかけです。平たく言うと、告白したのがあたしだ、ということ。で、この告白の時点で、あたしはじーじの予定を全部知ってたわけですよ。だから、「全部知ってて『好きだ』って言ったってことは、 青森云々だって承知のうえで、言ってくれてると こっちは思うだろ。」と言います。遠距離とかも全部含めて受け入れるよ、ってことで俺に告白したと俺は思ってたのに、なんで今更そんなこと言い出すの?と言ってるわけです。文句言うくらいなら、告白なんかするなよ、と。最初から分かってた条件でいろいろ言われたって、俺としては納得いかない、というのがじーじの主張。なるほどね。一理あると思う。そこが、あたしとあなたとの違いなんだよね。あなたは最初に全部見越してつきあうでしょ。「つきあう=結婚」って未来予想図が見られる人だからね。だから当然、青森帰るの分かってても告白してくるってことは、それを受け入れたうえで言ってくれてるんだな、って思うよね。でも、あたしはそうじゃないから。とりあえず好きだからつきあってみようかな、っていうのがまず第一だから。何も考えてない、って言われればそれまでだけど、だからこそフットワークが軽いわけで、あたしとあなたはつきあえたんだよ。なんで、わざわざ苦労する人選んでるんだろうなあ、って自分でも思うよ。とか言うと、「つきあったの後悔してるの? 告白しなきゃよかったと思ってるの?」と目に涙をいっぱいためて聞いてくるので、「そ、そんなことないよ・・・」と、あたしとしては答えざるをえないわけです。でも、感情が理性を超える時ってあるでしょう?最近じーじも頻繁に出てくるでしょう?どうしようもなかったんだよ。あの時は。好きだと思う気持ち以外に、何もなかったのー!で、「納得いかない」と言いつつも、それを全面に押し出してくるわけではなく、あたしの文句を根気よくなだめようとするあたりが、じーじのいいところなのです。思い詰めるタイプのあたしは、この前のデートの帰り際に、「告白なんかしなきゃよかった・・」とぽつり。でも返ってきた言葉が「それは今までの全部の否定になっちゃうでしょ。」と。今更そんなこと言っても仕方ないんだから、これから先どうするか、考えようよ、と。最近、ちょっと強くなってきたじーじです。ほんと。考えておくれよ。ああ。悩みはつきず。白髪増えそうな兎です。