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テーマ:出版奮闘記 (14)
カテゴリ:出版秘話
こんばんは☆
昨夜はメンテナンスのため、アップできませんでした。そして今日はパパの会社の毎年恒例!「ディズニーランド・バスツアー」のため朝7時過ぎから家を出て、ついさっき戻ってきたところです。 すっかり遅くなってしまい、申し訳ありませんでした。 「出版秘話」の後編、読んでいただけると嬉しいです♪ ********************** 山本先生からの思いがけない申し出に、思い切って出版の決心をした私でしたが、正直不安でいっぱい(そんな大金、借りてしまって良いのかな?ちゃんと返せるかな?本当に本になるのかな?・・・)でした。それでもそんな私の不安や戸惑いとはまるで無関係のように出版契約は済み、担当の編集者が紹介され、話はどんどん具体的に進んでいきます。 (物事が決まっていくとき、ってこんなものなのかなぁ?) そんなある日、山本先生から電話がありました。 「本の挿絵についてはもう決まったの?」 「挿絵ですか?いえ、まだ・・・。出版社に20名くらいのイラストレーターの方がいらっしゃるようで、その中から私の作品のイメージに合う絵を描いて下さる方にお願いすることになるようですが・・・」 「実は、ちょっと見て欲しい絵があるの。私の知り合いで、風景画を描く人がいるんだけど、その人の絵を見た時の印象と、あなたの作品を読んだ時の印象が私の中で、ふと重なったもんだから、、、。あ、もちろん、無理にその人の絵を使って欲しい、というわけじゃないの。挿絵はあなたのイメージで決めてね。ただ、一度その人の絵を見て欲しくて・・・」 私は絵については、まったくわかりません。描くのも、見るのもセンスがない。それでも先生が「私の作品とイメージが重なる」と言ってくださったことが気になって、早速先生の家へ向かいました。そして、早速そこに積まれていた数冊の絵のファイルを開いたのです。 湯川仁士(ゆかわまさし)さん。(絶滅の危機に瀕していたブナの叫びを感じて以来、山を歩きながら、一人静かに自然保護を訴える想いをパステル画と詩で表現し続けている50歳の男性)これが私と湯川さんの作品との初めての出会いでした。 絵はどれも穏やかで、優しいものばかりでした。絵のことがよくわからない私でも、見ているうちに、ひだまりの中でひなたぼっこをしているような心地良さを感じ、心がほっと癒されていくのを感じました。そして中の一枚の絵を見た瞬間、衝撃が走りました。 これだ!!!!! 空に向かって元気いっぱい、堂々と立っている一本の木。眩しい光。見た瞬間、私はその絵が「おねえちゃん」の中で、サキと不思議な少女が出会う場面にピッタリだと感じたのでした。 (これを表紙にしたい!) すぐに、山本先生と一緒に、湯川さんに会いに行きました。ブナの絵で「トルコ日本芸術世界勲章」を受賞された実力者、と聞けば、てっきり広々とした屋敷で、のんびりと絵を描きながら生活されている方だろう、と思いきや、湯川さんは山のふもとの小さなアパートに家族4人で静かに暮らしていらっしゃいました。 すっきりとした家の中で、湯川さんのアトリエとなっている一番小さな部屋だけが、まるで魔法の森のように、息を呑むような生命力に溢れる木々の絵に囲まれた不思議な空間でした。病人を抱え、当時の私のように夜勤のある工場に勤務。たくさんの悲しみの中、山に登っては「失われた自然の再生」を祈りつつ、ひたすら絵を描き続けてこられた湯川さんは、山本先生から渡った私の童話の原稿に目を通してくださり、彼の絵を表紙に使わせて欲しい、という私の申し出をその場で快諾して下さいました。 「私はずっと陰の世界、暗闇の世界を生きてきました」・・・出てくる言葉からは深い悲しみが、顔の表情からは泉のように自然に湧き出る慈しみが伝わってきます。絵の印象どおり、透明感のある静けさ、穏やかであたたかい人、という印象でした。 私は湯川さんに中の挿絵もすべてお願いすることにし、これまで人物を描いたことがない、という湯川さんにとっては新たなチャレンジが始まりました。本の裏表紙の夕焼けの絵では、沈む太陽の「赤」を求めて、湯川さんは町を歩いたり、広告の赤を探したり、、、その一枚の絵にかける情熱の深さに、私はとても感銘を受けました。出来上がった絵には「血の赤にならないように」という彼の言葉どおり、私がそれまで見たことのない、とても幻想的で見事な太陽が描かれていました。 山本先生の勇気、湯川さんの創作への姿勢に刺激を受けた私は、そんな二人への感謝の想いを表現するため自分にできることは「今ある自分の力のすべてを注ぎ込んで本を作ること」しかない!と思い、湯川さんのあたたかい手描きのパステル画(本当に筆ではなく、直接指の腹でぼかしていくのです)に合うよう、無機質な活字の文字ではなく、字には自信はないけれど、真心を込めた手書きの文字で、まるでお母さんが子供に優しく語りかけるような本を作ることに決めたのでした。 本の最後の一枚の絵にも、私には深い思い入れがありました。そこには一番優しくて、愛情に満ちた絵が欲しかったのです。何度描き直していただいても(何かが違う)のです。山本先生と湯川さん、私の3人はこれまで湯川さんが描かれた数百枚の絵すべてに目を通し、「これ!」という一枚が見つからず途方に暮れました。そこで最後に私が「これまでで一番優しい気持ち、愛情を持って描かれた絵はどれですか?」という質問をしたところ、別の場所にしまわれていた、湯川さんにとって特別な一枚の絵を持って来てくださいました。樹齢数百年にも及ぶ一本のブナの木。雪を湛え、寒さに耐えながら静かに生き続ける慈愛に満ちたその木の姿が、私の目には親子がまさに「抱っこ」しようと駈け寄る様子に映りました。 「これです!この絵を使わせてください!」 それは私にとっても「奇跡の絵」でした。 最後に、表紙の「おねえちゃん」という題字を娘のサキに書いてもらい、本はついに完成。 一方、癌と闘う父には本の原稿、表紙と背表紙の絵が決まる度にコピーを見せに行きました。ベッドの上で父も「おお、できたか!」と本の完成を楽しみにしてくれているようでしたが、残念ながら今年の1月末(本が完成する4ヵ月前)、永遠の眠りにつきました。 完成した本を父に手渡せなかったことは本当に残念でしたが、私が本を通して伝えたかった想いは、原稿に目を通してくれていた父には伝わっていたはず。父は今もきっとどこかで見守ってくれている、と信じています。 こうして、サキへの想い、両親への感謝、山本先生の夢、湯川さんとの出会い、奇跡の絵、大好きな父との別れ・・・たくさんの想いや出会いを重ねながら、一冊の本「おねえちゃん」はようやく産声をあげたのでした。 「おねえちゃん」の出版は、私一人の力では実現できないことでした。 私はたくさんの人たちのおかげで誕生することができたこの本が、これからも一人でも多くの人たちと素敵な出会いを重ねていってくれると嬉しいなぁ☆と、心から願っています。 今、これを読んでくださっているみなさんとの出会いも「おねえちゃん」が呼んでくれた「奇跡」のひとつですね。 本当にありがとうございます☆ これからもどうぞよろしくお願いします♪ ひなたまさみ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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