テーマ:東海テレビのお昼ドラマ(184)
カテゴリ:昼ドラ
ダイニングルームに向かうと、サロンから出てきた澪に会った。
澪「槐、夕べはどうもありがとう。おかげさまで素敵な絵本が描けそうだわ」 槐「それは良かった」 澪「ところで、あの、類子さんて方。とても素敵な方ね。 今日お話ししたのだけど、あんなお姉さまがいたらいいなと思ったわ」 類子と澪はいつの間にか親交を深めていた。 俺にとっては、余り喜ばしいことではない。 夕食会。ダイニングルームに客が揃った。 佐野社長夫人、川嶋さん、そして澪。 俺はワインをそれぞれのグラスに注いで回った。 予定の時間になっても類子は来ない。 いそいそと給仕をする千津さんの顔が、微かにほくそ笑んでいるように見える。 ・・・さては、既に不破の罠にかかったか。 時間を15分ほど過ぎると、不破が苛つき始めた。 「あの看護師はまだ来んのか!全く、支度の遅い女にロクな奴はいない!」 槐「呼んで参りましょうか」 不破「いや、いい!もう料理を運んで来い!」 その時、類子が扉から入って来た。 するといきなり、不破が怒鳴りつける。 「遅いぞ!お前のせいで、大事な取引先の社長ご夫妻を待たせてしまった!」 社長夫妻に謝る不破。 「失礼しました。礼儀知らずの看護師でして。主人の私にも平気でたてをつく」 類子が謝る。「申し訳ありません、お待たせしまして・・・」 青ざめた顔で席に着く類子。 ・・・思い上がった彼女にはいい薬だったろう。 しかし、不破の罠がこれで終わるとは思えない。 その時、澪がスプーンを落とした。「ごめんなさい、うっかり手が触れて」 俺はスプーンを拾って澪に言う。「いますぐ代わりを」 澪はにこやかに言う。「さあ叔父様、お食事にしましょう。お腹がぺこぺこだわ」 佐野夫人も笑って言う。「いいわね若い人は。私は体重計が気になっちゃって」 澪の気の利いた優しさに、類子が少し安堵の色を見せた。 その場がなごんで良い雰囲気になる。 不破は悔しそうに唇を噛み締めていた。 俺は代えのスプーンを取りに扉を出て思わずつぶやいた。 「・・・だから、言わんこっちゃない」 夕食会は進む。 佐野夫人「ですから私、主人に申しましたの。 野菜ばかり食べているとキリギリスになっちゃうわと。お肉もいただきませんとねぇ」 不破「おっしゃる通り」 そこに出された皿を見て、佐野夫人が驚いた。「まあ、何ですの?」 先日類子が不破に出した、金箔ののったステーキ。 不破「うちの看護師が、肉を食うなら金箔と一緒にと言ってね」 川嶋「それは変わったアドバイスですね」 佐野社長「何かの健康法ですか?」 類子の返事を遮るように不破が言う。 「その女はわしが成り上がり者の成金趣味だとバカにしておる。 自分はよほど上品な人間だと思っているらしい」 澪が再び助け舟を出した。 「でも金箔はお肌にいいそうですわ。一度いただいて見たかったんです」 佐野夫人が嬉しそうに言う。「あら、そうなの。ではいただかなくっちゃ」 金箔ステーキを食べる一同。その顔は皆、満足そうだ。勿論、不破以外はだが。 ・・・とりあえずディナーは乗り切った。しかしまだデザートが残っている。 サロンに移動する一同。 デザートが出されると、客人達はソファーでくつろいだ。 佐野夫人「金箔ステーキなんて生まれて初めてですわ。今度うちでもやってみなくちゃ」 佐野社長「うちにはそんな余裕はないよ」 川嶋「またまた。佐野さんのところの株は上がる一方だって聞きますよ」 その時、歓談を聞きながら不破が葉巻を取り出した。 類子がそれを見て、葉巻を取り上げる。 「申し上げたはずですよ!葉巻はいけませんって」 怒り始める不破。「客の前で恥を書かせる気か!使用人の分際で!」 類子「使用人だろうと、これだけは譲れませんわ!」 不破が立ち上がって類子の元に近づく。 「俺の言うことを聞かないのは許さん!返せ!」 類子「お断りします!」 ・・・その時俺は気付いた。確か、この葉巻は・・・! 不破「あんた、その葉巻がどういうものか分かって言っとるのかね!」 類子「確か、キューバの職人が一つ一つ手で巻いた高級品だとおっしゃいましたね。 しかし人の命に比べられません」 不破「ではあんたはこれが、何の価値もない屑だと言うのかね」 類子「ええ、そうです!」 不破はその言葉を聞くと、サロン中に響く大きな声で言った。 「・・・皆さんお聞きになりましたか!この女は、この葉巻を屑だと言った」 川嶋が割って入り、類子を咎める。 「いい加減にしなさい!それはこちらの佐野さんが、だんな様の為にお持ちしたものだ」 嫌な顔をしている佐野夫妻。 類子は嵌められたことに気付いて顔色を変えた。 佐野社長「こんな侮辱、生まれて始めてだ」 類子が慌てて頭を下げる。「あの私、なんて申し上げていいか・・・お許しください」 不破が勝ち誇ったように笑う。 「謝ってすむことか!土下座しろ!それか、そのドレスを脱いで裸踊りでもするか?!」 たまりかねて口を挟もうとした澪を、俺は止めた。 ・・・さあ、どうする類子。 お前に本当に力があるなら、この危機を乗り越えてみろ。 挫折して元の退屈な日常の繰り返しに戻るか。 それとも、チェスボードの上に立ち続けて、メジャーピースのクイーンとなるか。 その時、類子が再び社長夫妻に口を開いた。 「本当に申し訳ありません。ですが私は、看護師として患者さんの健康を守る義務があります。 せめて、いただいた葉巻を無駄にしない楽しみ方をお許しください。 沢木さん、ブランデーを」 ・・・何をするつもりだ?類子。 俺は客人が見守る中、言われた通り、類子にブランデーを手渡した。 類子は銀のトレーにブランデーを注ぎ、俺に向かって微笑みかけた。 彼女の目は語る。私を信じて・・・と。 類子の細い指が、葉巻に絡みつく。 一瞬、ブランデーに反射したシャンデリアの光が類子の頬を煌かせた。 トレーの上で葉巻を転がし、類子は丁寧に丁寧に、葉巻にブランデーをしみ込ませた。 ブランデーの香りが優しくサロンを包む。 その自然に人を酔わす上品な香りが、客人達を笑顔にした。 類子は覚めるように美しい微笑でゆっくりと振り返る。 ・・・俺はその時、類子の瞳にアンタレスが輝くのを確かに見た。 (ひとこと) この事件を乗り越えて、槐は確かな信頼を類子に感じるのですよね(駒としてですが)。 次回は加奈子登場ですか・・・(←モチベーションの上がらないキャラ) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[昼ドラ] カテゴリの最新記事
|
|