テーマ:東海テレビのお昼ドラマ(184)
カテゴリ:昼ドラ
敬吾がつぶやく。「後ろ盾かぁ・・・」
槐「誰か心当たりでも?」 敬吾「うん、まあ。無くはないが」 そこに澪が入ってきた。 澪「ごめんなさい。お話まだだった?」 敬吾「いや、終わったとこ。せっかくだから今夜飯でも喰おうか」 澪「いいけど・・・槐もどう?」 敬吾が澪の肩を組んで言う。「こいつは夜まで仕事」 二人は仲良さそうにサロンを出て行った。 ・・・もう何年、こんな空気が続いただろう。 気が付くと二人は自然に寄り添っていた。 澪の姿を見つけると、敬吾は嬉しそうにその名を呼ぶ。 澪は必ず満面の笑顔で敬吾に応えた。 遠い昔、俺はこんな会話を耳にした。 厨房の扉を開こうとして、中から聞こえてきた声。 岩田「こう言っちゃ何だが、わがままな坊ちゃんで大変でしょう」 澪「ううん。ちっとも」 千津「岩田さん何も分かってないのねぇ。あばたもえくぼって言うじゃない」 岩田「そんなものかねぇ」 澪「ええ。だって敬吾さんは、私を助けてくれた王子様ですもの」 俺は中に入れず、開けかけた扉をそっと閉めた・・・ ふと、玄関を出ていく加奈子が目に留まった。 一人でどこに行くのだろう? 彼女の姿はボートハウスの方へと向かって消えて行った。 夜。夕食後にサロンで一同が寛いでいる。 俺はトレーの上に葉巻をブランデーに浸していた。 類子の提案した『紳士の葉巻の楽しみ方』は、すっかり不破のお気に召したようだ。 おかげで俺の指はいつもブランデーの香りがするような気がしてならない。 俺の横で、レイさんが蝋燭で優雅に煙草の火を点けた。 煙を吐きながらレイさんが言う。 「見て、あの光景。なかなか面白いわよ」 ソファーで寛ぐ不破の横に座り、血圧を測っている類子。 そして加奈子がベタベタと不破に甘えている。 レイ「貴方には見えるかしら。 あのナースの制服のスカートから、狐のしっぽが覗いてるのが」 槐「何のお話でしょうか?」 レイ「下心のない人間はこの山荘には近寄らないって話よ」 槐「それでしたら、私の目には もうお一方のスカートの下に狸のしっぽが見えますよ」 その時、不破が声を上げた。「何?ボートに乗りたい?」 加奈子「湖の向こうにとっておきの綺麗な場所があるって聞いたの。 行きましょうよ、いいでしょう?」 類子に不破が尋ねる。「そうだな。構わないだろう?」 類子「ええ、外の空気に当たった方が、健康によろしいかと」 俺は少し慌てた。お前達二人きりでボートになど乗せたら、何がおこるか。 そうなったら後が面倒だ。思わず言葉が口をついて出る。 槐「では、私がボートを漕ぎましょう。あれは結構キツいですから」 不破「年寄りだと思ってバカにするな! ボート漕ぎなら、マグロ漁船に乗っていた頃からお手のものだ。邪魔するな!」 加奈子も同調する。「邪魔しないで」 不破が言う。「せっかくだ、泳ごうか」 その時、類子が持っていた血圧計を落とした。その音に一同が驚く。 類子が仕事道具を落とすなんて珍しい。疲れてるのだろうか? 加奈子「気をつけてよ。驚くじゃない」 レイ「では、類子さんもご一緒したら? 湖の上で、恒大さんに何かあったら大変ですから」 再びペンを落とす類子。 槐「そうですね。それなら私も安心です」 俺の言葉に類子がこちらを振り返り、驚いたような顔で俺を見た。 レイ「その方が恒大さんも、両手に花で楽しいんじゃないの?」 不破「好きにしろ」 地下室で類子は俺に噛み付いてきた。 「何であんなこと言ったの?何もあんな女の尻馬にのらなくたって」 槐「じいさんをあの女と二人きりにするのは危険だって、貴女にも分かるでしょう」 類子「それはそうだけど・・・」 槐「この際、加奈子と女を、湖にでも放りこんでやるんですね。 今のうちに痛い目にあわせておいた方がいい」 類子「・・・そうね・・・・」 類子の顔はどことなく不安そうに見えた。 それは先日懸念していた、過去の傷口によるものだと俺が気付くのに、 そう長い時間は掛からなかった。 類子の心の暗闇は、俺の同様に持つそれに多大なる影響をもたらす事になる。 (ひとこと) 類子とレイの駆け引きのシーンをばっさりとカットしてあります(涙) なので、レイさんを印象的に見せるシーンを一つ加えました。 槐に見えないシーンを削る事によって埋めなければいけない隙間が出てきます。 それを埋めるのもまた楽しいです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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