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昼ドラHolic ~美しい罠~

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October 18, 2006
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カテゴリ:昼ドラ
唇が触れ合おうとしたその瞬間、俺は我に帰って思わず類子から体を離した。
類子が驚いて俺を見る。
槐「・・・もう遅い。あなたも疲れたでしょう。早く休んだ方がいい」
類子「そうね、明日も早いし。お休みなさい」
類子はガラスのふくろうを大切そうに持って部屋を出た。

ベッドに伏して俺は考える。
・・・俺は一体、何をしようとした?
小さな頃から不破に虐げられ、俺はずっと自分の心を押し殺してきた。
その心を取り戻すために、不破にゲームを仕掛けて勝つと心に決めたんだ。
その為にはありとあらゆる人間的な心を捨て去り、負の闇に葬ってきた。
だから、今更女に対する愛など芽生えるはずがない。

その証拠に、俺は澪を欲しいなんて思ったことがない。
その姿を見て心を癒されたり、傷つけたくないと思ったことはあっても、
この腕に抱きたいとか、独占したいとか、そんな特別な感情を抱いたことは全く無い。

その俺が、類子に口付けしようとしたのは何故だ・・・?

・・・そうだ。
彼女は俺の、パートナーだからだ。それも極上のメジャーピース。
不意に彼女の心の寂しさに触れて、たまたま魔が差しただけのこと。
決して俺は類子を女として愛してなどいない。
あるとすれば・・・駒として、愛している。それだけだ。

・・・そう、それだけだ・・・

俺はいつの間にか、眠りについていた。

翌朝。不破に朝の挨拶を済ませて部屋を出ようとすると、扉の外で類子に会った。
類子は気まずそうに挨拶をする。「おはよう」
俺は何事も無かったかのように応える。「おはようございます」
類子「だんな様起きてる?」
槐「ええ、たった今」
俺が立ち去ろうとすると、類子が声を掛けた。
「夕べはありがとう」
俺は無言でその場を後にした。

階段を降りようとすると、下から加奈子が駆け上がって来た。
豹柄のビキニ姿で加奈子は胸を揺らしながら挨拶をする。
加奈子「沢木さん、おはよう!」
槐「おはようございます」
加奈子「これからおじいちゃんとボート遊びをするの。沢木さんもどう?」
槐「私がいてはお邪魔でしょう」
加奈子「ええ、邪魔よ。でも、二人きりならそうでもないわ。考えておいてね」
加奈子は不破の部屋へと入っていった。
・・・この女を見ると頭痛がするのは何故だろう。

夜が更ける。類子が部屋にやって来た。
類子「不破が結婚するそうよ」
槐「は?それは何かの間違いでしょう。いくら貴女でも、こんなに早く落とせるはずが無い」
類子「そう。何かの間違いよ。ぞっとするわ。
しかも相手は私に限ったわけじゃない。
『俺の子を産んだら誰でもすぐに妻にしてやる』って加奈子に言ったわ。
今日は私、レイさんを怒らせちゃったし、
きっと躍起になって加奈子を妊娠させるでしょうね」
槐「レイさんを怒らせた?」
類子「ええ。澪さんの事をお嬢様だと思って侮辱した事を言うから、
思わず『レイさんにはここを出て行ってもらう』って言っちゃったの」

レイさんが澪を相手にしていないのは昔から分かっていた。
澪の無垢さが長所と見えるか短所と見えるかは、見る人の価値観次第だ。
特に男性は澪のようなタイプを気に入ることはあっても、とかく女性からは敵視されやすい。
だから、男が澪を守りたくなる気持ちは俺にもよく分かる。

類子「ちょっと。聞いてるの?」
類子は口をとがらせた。
槐「聞いてますよ。子供か・・・まさかそんなことを言い出すとは」
類子「本気だと思う?」
槐「本気だとは思いたくないが、冗談だと無視するのは危険だ。今まで妊娠したことは?」
類子「ないけど」
槐「妊娠する可能性は?」
類子「あるとは思うわ」
槐「でも100%ではないでしょう」
類子「それはどの女も同じよ」
槐「そう、問題はそこだ。必ず妊娠するとは限らない。
妊娠しなければ遊んで捨てられるのがオチだ。どちらに転ぶかは、運しだいだ」
類子「・・・これこそ賭けね」
槐「この間の賭けは貴女が勝った。しかし、運とか偶然とか、あいまいなものには賭けたくない。
100%確実な方法を選択してこそ、勝利は確実になる」
類子「・・・こうなったら、あの加奈子って女を追い出すことね。
下手に妊娠でもされたら面倒なことになるわ」
槐「それで、どういう手を?」
類子「そうだわ、入院させる?不破を病院に隔離するのはどう」
槐「なるほど」

その時、一つの考えが浮かんだ。もっといい方法がある。
槐「・・・それよりも敬吾に頼みましょう。敬吾に加奈子を誘惑させるんです。
息子の女と分かれば、不破は加奈子には指一本触れずに追い出すに違いない」
類子「でも、加奈子が誘惑されるかどうか。それこそ確実とは言えないわ」
槐「それは、貴女の腕次第」
類子「私の?」

上手く行けば、加奈子を追い出した上に、敬吾の弱みを握ることが出来る。
それで澪との結婚が破談になっても、敬吾自身が招いたことだ。俺のせいじゃない。
あくまでも不可抗力であり、そして副産物だ。
決して俺が澪を手に入れたいわけではない。

・・・思わず俺が口に笑みを浮かべそうになったとき、部屋の扉を叩く音がした。
扉の外から澪の声がする。
「槐、起きてる?こんな遅くにごめんなさい」
俺と類子は目を見合わせる。
こんな夜中では何の言い訳も出来ない。
今俺と類子が繋がっていることは、誰にも知られてはいけない!

俺は類子を、例の部屋に隠すことにした。
部屋の外の澪に呼びかける。
「ちょっと待って下さい。今、着替えてる最中で」
俺は類子の手を引き、戸棚ごと壁をずらして隠し部屋への入り口を開けた。
目の前に広がる秘密の小部屋に驚く類子。
類子を小部屋に入れると、俺は隠し扉を元に戻した。

槐「よく入って来れましたね」
澪「岩田さんに頼んで、勝手口から入れてもらったの。これお返ししたくて」
澪は俺が貸していた本を俺に手渡した。
槐「次の絵本の構想、まとまりそうですか?」
澪は俺の言葉には答えず、思い詰めた表情で言う。
「ええ・・・ねえ槐、貴方はどう思う?
敬吾がいきなりあんな婚約発表をしたものだから、話がどんどん一人歩きして。
もちろん、私にはその気はないって、みんなにはっきり言った方がいいとは思うの。
でもそんな事して敬吾を傷つけたくないし・・・
貴方なら、敬吾とは兄弟のように仲がいいし
どうしたら敬吾を傷つけずにすむか、意見を聞きたいの」
槐「わかりません、僕にだって。ただはっきりしてるのは、
どういう方法を取ったって、あなたが断れば敬吾は傷つくということです」
悲しそうな顔をする澪。
槐「しかし世の中、自分の意志を通そうとすれば、誰かを傷つける勇気も必要だ。
誰にもいい顔をして生きていくなんて、現実には不可能ですね」
澪「・・・厳しいのね。でも、貴方の言う通りだわ。
やはり敬吾とはもう一度、きちんと話をするしかなさそうね。
あなたに相談して良かった。ありがとう。
・・・もう帰るわ。ごめんなさい、こんな遅くに」
槐「送りましょう。夜道は危険だ」
澪「大丈夫、子供の頃から慣れた道よ」
部屋を出ようとした澪を、俺は呼び止める。
「でも何かあってからでは・・・」
「平気よ」
俺の顔のすぐ近くで、澪が振り返った。
すぐ近くに、澪の顔・・・俺は思わず息を飲んだ。
澪は俺の目を、その曇りの無い瞳で見つめて言う。
澪「・・・ねえ、槐。一つ聞いていい?あなたは結婚を考えたことはないの?」
俺は目を反らさずに、正直に答える。
「ええ、ありません。結婚なんて、今は全く」
澪「・・・そう、分かったわ。お休みなさい」
寂しそうな表情で、澪は扉を出て行った。
足音が聞こえる。どことなく悲しそうな、澪の足音・・・

・・・まさか、澪は俺の事を?

俺は一度閉めた扉を再び開け、やはり思い直して扉を閉めた。
送らない方が澪の為だ。
俺は澪を、幼馴染として大切な存在、侵してならない無垢な存在だとは思っているが、
女性として愛し合える存在だとは思ったことがない。
澪には澪に似合いの男がきっといる。
金も上流階級の血筋も生まれながらに持っている人間・・・

昔から事あるごとに敬吾は俺に言い続けてきた。
「お嬢様にはお坊ちゃん、使用人には使用人。
俺には澪がいるけれど、お前にはまだ誰もいなくて可哀想だなぁ」
敬吾の言う事を全部真に受けたわけではないが、ある意味真実だとも思っていた。
澪のようなお嬢様を守るには、ある程度の金も地位も必要なんだ。
少なくとも、俺はずっとそう思い込んできた。

その時、類子が隠し部屋から出てきた。
「驚いたわ、ここにこんな部屋があったなんて。どういう部屋なの?」
槐「分かりません。おそらくここを建てた人が、戦時中の避難場所にでもする気だったのでしょう。
敬吾と探検ごっこをして偶然見つけたんです」
俺は二つのグラスにブランデーを注ぎ、一つを類子に手渡した。
隠し部屋に入りながら俺は説明を続ける。
「以来、二人しか知らない秘密の部屋だ。
もっとも、敬吾はこことここの部屋が繋がってるなんて未だに知りませんがね」
カーテンを開けると、外へと続く階段。
槐「敬吾がここを使うときは、ここを上がった出入り口を使うんです。
普段は鍵がかかってて、自由に入れないようになってる」
類子「もしかして・・・前に尚美って子が尋ねてきたとき・・・」
槐「そう。このベッドです」
類子は、ベッドとその上に飾っている『着衣のマハ』を交互に見て言った。
「・・・そういうこと。それで分かったわ。
あなたが何故、加奈子を誘惑するのに敬語を使おうだなんて言い出したのか。
上手くすれば、加奈子を不破から遠ざけるだけじゃない。
敬吾と澪さんの婚約だってつぶれるかも。正に一石二鳥ね」
俺の心を見透かしたような類子の物言いが気に触り、俺は冷たく言い放った。
「何のことだか」
澪「無理することないわ。あなた澪さんのことが好きなんでしょう。
そう言えば、昔澪さんを助けた命の恩人って、本当は敬吾じゃなくて貴方なんじゃないの?」
槐「知らないなそんなこと。変に勘ぐるのはよしてくれ!」
俺は思わずカッとして声を荒げる。
「あんた何も分かってない。あんたこの間なんて言った?
不破の大金を手にするなら、愛だの恋だの、甘い夢は見ないと言った!
俺も全く同様だ!金のためなら、例え好きな女だって平気で利用する。
それが俺のやり方だ!」

声を荒げながら俺は思った。
俺は澪の事は利用しない。澪は決して汚してはならない、幼い頃からの聖域なのだから。
しかし俺は好きな女でも利用すると、たった今口にした。
・・・俺は誰を利用しようとしている?俺は誰を好きだって?!

類子の困った顔に俺は自分の荒れ様に気付き、すぐに辟易とした。
槐「・・・帰ってくれないか。明日早いんだ」
類子は気まずそうに俺の部屋を後にする。
その夜、俺は苛立ってなかなか眠りにつけなかった・・・

翌日。俺は東京の敬吾のマンションに向かった。
今日はこれから、『不破敬吾』として吉野尚美とマンションで会う。
俺を紹介してもらいたくて敬吾と寝た女。

今頃敬吾は山荘に向かっているだろう。
到着したら、類子が敬吾に、加奈子を誘惑するよう仕向ける手筈になっている。
加奈子と敬吾が相手なら、類子にとっては簡単すぎるゲームだ。
決して失敗はしないはず。

マンションに到着する。
敬吾の上質なスーツとシャツに着替え、俺は尚美との約束の時間を待った。
・・・約束の時間通りにチャイムが鳴る。
俺は扉を開けると尚美を中に入れ、誰も見ていないのを確認して扉を閉めた。

・・・その場面を澪が見ていたことを、俺はすぐに知ることになる。


(ひとこと)
澪への感情と、類子への感情と。槐の中で二人への想いが交錯しています。
澪への槐の気持ちの解釈は多分見る人によって随分違うと思いますので、
私の解釈と違う場合でも暖かく見守ってくださいませ(^-^;)





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Last updated  October 18, 2006 10:12:20 PM
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