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昼ドラHolic ~美しい罠~

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October 29, 2006
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カテゴリ:昼ドラ
柔らかく、安息の場所へと導かれるようなその唇の感触。
類子と自身の心地よい体の溶け合いに、俺は思わず我を忘れた。

しかし、類子が俺の体を突き放してその空気を壊す。
類子「やめてよ!何のつもり?挨拶にしては随分強引ね。酔ってるの?」
槐「酔った勢いで女に手を出すほど俺はバカじゃない」
類子「じゃ、私に気があるとでも?・・・分かった!好きな女にでも振られた?」
何故この女は、こう俺の心を見透かすのだろう。
類子は怒ったような目つきで俺を睨んだ。
類子「図星のようね。でもお生憎さま。
私、その人の代わりにあんたを慰めるつもりなんてこれっぽっちもないから」

心臓に何かが突き刺さる。いとも簡単に心の奥底に踏み込んで来る類子に、俺は少し腹を立てた。
・・・小さな復讐心が湧く。俺は類子に意地の悪い質問を投げかけた。
槐「・・・あんたに気があると言ったら?」
驚いて目を見開く類子。「え・・・?」
槐「あんたが好きになった。今すぐあんたが欲しい。・・・そう言ったらどうする?」
類子は怒ったように言う。
「やめてよ。忘れたの?私達はこの家の財産を手に入れる為に力を合わせようって約束したのよ。
その為なら、愛だの恋だの甘い夢はみないって。お互いそう言ったじゃない。違う?」

類子に言われてようやく目が覚めた。
澪と敬吾の交歓に動揺し、本能的に類子に引かれ・・・
しかし、これはゲームには全く必要の無い感情。
逆に、ゲームを迅速に進めるためには妨げしかならない、不確かな感情。

俺は、愛など必要としない。類子の言う通りだ。
類子の一言で、俺は一瞬にして本来の自分に戻った。
類子に感謝したいくらいだが、ゲームを主導するのはこの俺だ。
それは俺たちの関係に於いて絶対でなければならない。

俺は目に冷たい笑みを浮かべて言う。
槐「・・・その通りだ。安心したよ、それを聞いて。
もしあんたが俺の誘いに乗れば、即刻あんたを切るつもりだった」
類子が驚く。「どう言うこと?!」
槐「あんたと俺は、金の為に手を組んだパートナー同士。
それ以上でもなければ、それ以下でもない」
類子「・・・試したってこと?」
槐「まあね」
平手で槐の顔を打とうとする類子。俺はその手を取って類子に言った。
「すまなかった。けど、あんたの覚悟は聞いてよかった」

怒りと、羞恥に満ちた類子の目を見つめる。
俺は心の中で類子に言った。・・・今の言葉は嘘ではない、と。

その時、ワインを持った草太が地下のワイン蔵から出てきた。
思わず俺は類子の手を放し、類子は俺から身を引いた。
草太がニヤニヤしながら言う。「あれ?どうしたの。こんな時間に」
類子「ちょっと喉が渇いて・・・」
槐「お前も喉が渇いたのか、草太」
俺は草太に何も言わせまいと語気を強めた。
「ワインの管理は俺の仕事だ。一本や二本なら目をつぶれるが、限度はある」
草太の目が反発を浮かべる。
俺はそんな草太など相手にせずに、その場を離れた。
歩きながら俺は思う。
・・・どうせ草太に怪しまれたところで、あいつには何もすることが出来まい。

俺は自分の部屋に戻った。
グラスに氷を入れ、ブランデーを注ぐ。
姿見の前に立つと、俺はそこに立つ自分の姿を確認した。

俺は鏡の中の自分に問いかける。
・・・お前は心を捨てたんじゃなかったのか?
澪と敬吾の愛し合う姿を見たくらいで心を乱すような、人間らしい心が残っているとでも言うのか?

その光景を、その声を思い出す。
敬吾「澪、お願いだ。俺を愛してくれ・・・」
澪「敬吾・・・」
敬吾を受け入れるように目をつぶる澪。ソファーで愛し合い始める二人・・・

気が付くと俺は、手のひらでグラスを握りつぶしていた。音を立てて破片が飛ぶ。
鋭いガラスが手のひらを切り、グラスに血が滴った。
俺はその痛みを心地よいと感じた。
この痛みが、きっと様々な感情を忘れさせてくれる・・・

翌日。
お茶を淹れて不破の部屋の扉を叩こうとしたとき、中から出てきた類子と鉢合った。
槐「だんなさまは?」
類子「今お休みに。あと30分は遠慮した方がいいわ」
類子は、ハンカチを巻いた俺の手に気付く。
類子「・・・どうしたのその手!見せて」
槐「たいしたことない」
俺は自分の心の弱みに触れられたような気がして、手を類子の目から隠してその場を去った。

サロンの前を通りかかると、レイさんが中から声を掛けてきた。
「槐、久々に占ってあげるわ。いらっしゃい」
レイさんのタロット占いはよく当たると評判だ。
心底信じているわけではないが、時間つぶしにはいいだろう。
中に入って行くと、レイさんが言った。「お座りなさいよ」
槐「いえ、結構です」
レイ「シャッフルするときだけでも座って」
俺はソファに座ると、裏返しにテーブルの上に置かれたカードを両手で混ぜ始めた。
レイ「こうなりたいという希望を心の中でイメージしながら混ぜてね。
・・・そう、そうよ。貴方、相変わらずセクシーな指をしてるわね。
貴方の望みは何かしら?恋?仕事?」

俺の希望・・・それはゲームの成功。
不破から何もかもを奪い、その顔に死相を刻ませる。
息絶える瞬間、金を絞りとられて死んでいった人間達の恨みが奴の脳裏に憑きまとい、
この世のものとは思えない形相で奴は俺とのゲームに敗北を喫する。
俺の瞼の裏が真っ赤に染まるのを確認して、俺は手の動きを止めた。
目を開けると、レイさんが少し眉をひそめて言った。
「槐、貴方とても怖い顔をしてたわよ。例えて言うなら、そうね・・・
モーツァルトのオペラに出てくる、怨念の篭った石像みたい」
槐「ドン・ジョバンニの騎士長ですか。残念ながら、鑑賞した事がありません」
俺は立ち上がり、少し下がって結果を見守った。

レイさんがカードをめくりながら笑う。
「過去は『吊られた男』の正位置。・・・まんま、ね。
恒大さんにこき使われて、母親共々我慢のし通しだったものね。
未来は『隠者』・・・真実を求めて、貴方、彷徨う事になるかもしれない。
あら、最後のカードは・・・」
レイさんが不思議そうにカードを見て、その絵柄を俺に見せる。
俺は少々驚いた。そのカードに描かれた女神は、剣と天秤を手にしていた。

レイ「『正義』。貴方は成功するようね。しかし孤独感に苛まれる。
目的のために自分に厳しく生きていくけれど、得た成功は果たして貴方の望んだものなのかしら?
この女神の天秤のみが、真実を知るといったところかしら」

俺は思わず笑みをもらした。
成功ならそれでいい。他の事なんて、どうなろうと構わない。
孤独感なら今でも抱いているし、俺はそれを克服している。
人間らしい心を殺すことで俺がこの先ゲームの成功を後悔するとは到底思えない。

槐「ありがとうございます。これで安心して前に進めます」
レイ「何を考えてるのか知らないけど、あまり無茶はしないでね。
今の貴方はとても美しいのに、突き進んだ結果が恒大さんのような醜い姿では残念だわ」
槐「ご忠告ありがとうございます」
レイ「さてと。今度は私の今後を占おうかしら。槐、結果を見てて」
レイさんがタロットカードを混ぜ始めたので、また俺は数歩離れてそれを見守った。

(2/2に続く)





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Last updated  October 30, 2006 02:10:31 AM
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王様@ 潮 吹 きジェットw サチにバ イ ブ突っ込んだ状態でジェット…
ボーボー侍@ 脇コキって言うねんな(爆笑) 前に言うてた奥さんな、オレのズボン脱が…
リナ@ 今日は苺ぱんちゅ http://kuri.backblack.net/-6jv9of/ 今…
しおん@ ヤホヤホぉ★ こっちゎ今2人なんだけどぉ アッチの話…
アゲチン@ ありがとうな!!!! http://bite.bnpnstore.com/ogwmxps/ ア…

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