テーマ:東海テレビのお昼ドラマ(184)
カテゴリ:昼ドラ
翌日の朝。
朝食の用意の為にテラスに出ると、一人湖を見ていた加奈子が振り返った。 加奈子は俺の顔を見ると顔を赤らめ、目を反らしてテラスからサロンへと足早に入って行く。 俺はその首筋に、愛し合った証の痣が刻まれているのを見逃さなかった。 続いて、厨房に向かう廊下で草太と出くわした。 俺の顔を見ると、草太は満面の笑みを浮かべて言う。 「おはよう、槐さん!今日は朝からボースハウスの掃除をしちゃったよ、えへ」 槐「何か良いことでもあったのか?口元が緩んでる」 草太は照れ笑いをすると、足取りも軽く厨房への廊下を歩いていった。 俺は、計画の成功を確信した。 その時、目の前からレイさんが蕎麦の入った器を手に歩いてきた。 レイさんは微笑んで言う。 「あら槐、おはよう。夕べはどうだった?素敵な夜を過ごせたかしら」 槐「情熱的な一夜でしたよ。どなたが仕込んだのやら。妬けますね」 レイさんはクスクスと笑いながらサロンへと入って行った。 厨房に入る扉の前で、俺は類子を見かけた。 類子が俺に声を掛ける。「おはよう」 その時、扉の中から草太の声が聞こえてきた。 「分かってるよ。車磨いとけって言うんでしょ。何でもやりますよっ」 子犬のように扉から飛び出してくる草太。 入り口に立っていた類子と顔を合わせ、草太は笑って言う。 「朝から人使いが荒くて困っちゃうよ」 その表情を見て、微笑む類子。 類子に続いて俺が厨房に入ると、類子がそっと言った。 「どうやら夕べは、上手く運んだようね」 槐「おかげで、今朝からあの働きようだ。素直な若者だ」 類子「誰かさんとは大違い」 槐「・・・?」 不破が昼食を終えてテラスで昼寝に入った。 俺も自分の部屋へと休みに行こうとすると、 玄関の前で千津さんが澪と話している姿が目に入った。 槐「いらっしゃい、澪さん」 澪「こんにちは、槐。おじさまのお見舞いに来たの。具合はどう?」 槐「もうすっかり、気力だけは。ただ、お体の方はご老体ですから」 澪が辛そうな顔をする。 千津「澪お嬢様のせいじゃございませんから、あまり気にせずに。 それはそうと、岩田さんの膝も心配だわ」 澪「岩田さん?どうして」 千津「持病の関節痛よ。立ち仕事だから辛そうで。 沢木さん、今夜辺り、もしかしたら病院に行くって言い出すかも知れないわ。 その時は草太に運転を頼むと思うけど」 槐「分かりました。・・・心配ですね。ちょっと様子を見てきます」 厨房の事務室に行くと、岩田さんは畳の上で横になって休んでいた。 槐「膝、大丈夫ですか?今でしたら病院に送っていけますけど」 岩田「ああ、ありがとう。でもまだ大丈夫だ。 今夜の料理を作ったら、草太にでも病院に連れて行ってもらうよ」 槐「そうですか。でも無理はなさらないで下さいね」 岩田「優しいなぁ、沢木さんは。そういう所は亡くなったあんたの母さんにそっくりだ」 俺は目の前の厨房に、昔の母の姿を見出した。 今の千津さんのように、岩田さんとあくせくしながら働いていた母。 不破に怒鳴られても、過労で体を悪くしても、母は笑顔を絶やさなかった・・・ その時、デスクの上に置いてある献立票が目に入った。 手に取って見ていると、岩田さんが言う。 「看護師の飛田さんが作った献立票だよ。 栄養のバランスもいいし、だんな様のご容態に合った取り合わせだ。 今夜は飽きないように目先を変えて、カツオのカルパッチョを作るようにと。 気の強い所もあるが、あの人はいい奥さんになるだろうねぇ」 ・・・そうかも知れない。 だが、類子は不破の妻になる。俺が、そうさせる。 夕方。 不破の見舞いを終えた澪を、千津さんと共に玄関で見送った。 千津「どうもわざわざのお見舞い、ありがとうございました」 澪「ではおじ様、どうぞお大事に」 俺が扉を開けると、外は雨。 槐「降ってますね。送りましょう」 澪「大丈夫よ」 千津「傘を持ってきますね」 千津さんがその場を去ったその時、雷が大きな音を立てて遠くに落ちた。 悲鳴をあげて澪が俺にすがりつく・・・。 俺はその体温を胸に受け、どうしていいか分からずに暗い空を見上げた。 雨が激しさを増す。 雷鳴もその勢いを強め、轟音の中に俺の鼓動を沈めるように天高く鳴り続けた。 どの位の時が経っただろうか。・・・あるいは、一瞬だったかもしれない。 千津さんが傘を手に戻って来た。 俺は傘を受け取ると、澪の頭の上でそれを開いた。 澪を中に入れて、玄関の外へと歩き出す。 ふと振り返ると、停電で山荘が真っ暗になっていた。 雷鳴が響く度に、澪が小さな肩を震わせる。 俺は澪を安心させようと、その肩にそっと手を添えた。 歩きながら俺は思う。 ・・・類子は不破とチェスをしていたはずだ。 暗闇の中、二人きりでお前たちはどんな会話を交わしている? 見えなくなったチェスボードを挟んで、お前たちはどんな風にその距離を縮める・・・? ・・・心臓が波立つ。 雷鳴の中で澪を守りながら、俺は暗い不破の部屋へと心を馳せていた。 (ひとこと) タイトルは「雷鳴の午後の嫉妬」。 類子が槐に抱きつく澪を見て嫉妬するという話でしたが、 澪と一緒に居ながらも暗闇の中の類子と不破に槐が嫉妬するという構図で書いてみました。 ところで、 類子「その言葉に嘘は無い?」 俺「疑ってるのか」 類子「だって、貴方をみてると、まるで・・・」 槐「・・・まるで?」 類子「・・・いいえ、よすわ」 類子の「まるで・・・」に続く言葉は何だったと思いますか? 見解をお聞かせいただけると嬉しいです(^o^) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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