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昼ドラHolic ~美しい罠~

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February 6, 2007
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カテゴリ:昼ドラ
類子がすがるような目で俺に尋ねる。
「・・・でも、貴方はそれでいいの?。
このまま私があの男と結婚して、貴方は平気なの?槐。
あの日、あなたと一緒に星を見た夜、私にはある予感があった。
あれが愛だと思ったのは、私だけ?」
俺は少し黙った後、淡々と答えた。
「忘れたのか。俺は、愛だの恋だの、そんなもの信じちゃいない」
類子「・・・やはり、愛よりお金ってわけ」
槐「俺たちは、金を得るために手を組んだ。
その共通の目的のために、心を一つにしようと誓ったんだ。
それこそが、俺たちなりの愛し方。
どこにでもあるような甘ったれた愛など求めちゃいない」

類子。俺達は至上の愛を選んだんだ。
その辺に転がっている安っぽい愛などどは違う、
この上なく崇高で、理想の高い愛し合い方をするんだ。
お前ならきっと分かってくれると俺は信じている。

不破の部屋。夕陽の差す中、不破が言う。
「教会の手配は済んでるんだろうな」
槐「はい、明日の午後3時。確かに予約してあります」
不破「・・・久しぶりだ、こんなに明日が待ち遠しいのは。
まだ見ぬ海の、大海原に出航する日に似ている。
しかし俺が目指すのはマグロの群れじゃあない。
類稀に見る、勝気な美しい女神の島だ。
・・・いいか、このことは誰にも内緒だ。
特に、敬吾には気をつけろ。もしバレたらお前もクビが飛ぶ」
槐「心得ております」
部屋を出ると、そこにはレイさんが立っていた。
レイさんは微笑んで言う。
「紅茶が届いたの。キャッスルトンの夏摘みダージリン。一緒にいかが?」

テラスでレイさんはティーカップを手に言う。
「素晴らしいと思わない?このマスカテル。もうその辺のお茶なんて飲めないでしょ」
槐「そうですね。子供の頃からレイさんに仕込まれましたから。
紅い色をしたただの水のような代物はもう飲めません」
レイ「お茶はね、喉を潤すものじゃないの。
少し口に含んで喉を過ぎる、その時に香る芳香と味の移り変わりを楽しむものなの。
喉を潤したいだけだったら水道の水を飲めばいい。
・・・女だってそう。もちろん、男もね。
性欲を満たしたいだけだったら適当な相手を見繕えばいいの。
でもその味を、その芳醇な香りを楽しみたいのだったらとびきり上等な物を用意しなきゃ」
レイさんは誰かを思い出すような口調で話した。
そう言えば、最近は加奈子にあまり執心してないようだ。
どちらかと言うと、何か物足りないような、
空虚な日々を送っているように俺には見えた。
レイ「そう言えば槐、あなたここのところ毎日出掛けてるようね。さては女が出来たのかしら?」
槐「そうだと言いたいところですが。
だんな様の御用で、新しい看護師を探しに行ってるんです」
レイ「・・・へぇ。それでいい人は見つかったの?」
槐「それがなかなか。何しろ、こんな山の中ですから」
レイ「それはそうと、あの類子って看護師、今どこにいるか知らない?」
槐「さあ。どうかしましたか」
レイ「小谷教授に尋ねても、連絡先も分からないって言うのよ。
自分で紹介した看護師なのにおかしいわね」
槐「レイさんは何故そう、あの看護師にこだわるんですか」
レイ「私は期待してたのよ。あの女が何かやってくれるんじゃないかって」
槐「それは残念」
レイ「ええ、でもまだあきらめたわけじゃないわ」
レイさんが俺の頬を撫でる。

・・・この香り。
レイさんは最上級の紅茶を飲むときは絶対に香水を付けない。
代わりにその肢体から香るのは、部屋で焚いた微かなアロマキャンドルの香、ソルベ・ド・テ。
少しばかりの酩酊を覚えながら、俺は部屋へと戻った。

翌日。海岸に臨む教会の鐘が鳴る。
誰もいない聖堂の十字架の前で、
正装をした不破の靴紐を俺は跪いて結び、靴を丁寧に磨いた。
不破はネクタイを気にする。「おかしくないか」
槐「はい、大丈夫です」
不破「・・・しかし、遅いな」
槐「ちょっと見て参りましょう」
入り口の扉を開けると、ウェディングドレスを着た類子が姿を見せた。
・・・その清楚な美しさに、思わず息を飲む。
槐「花婿がお待ちです」
類子「ありがとう」

類子のブーケが風に香る。
俺とのゲームを全うする為に、醜悪な怪物にその身を投げ出す類子。
しかし、心までは捧げるわけではない。
籍を入れて誰もが認める不破の妻になっても、どんなに不破にその身体を貪られても・・・
お前の心は俺が支配する。俺がお前を全力で守る。
俺の中で、お前は綺麗な身体のままで俺に抱かれる・・・

しかし類子、お前は俺の愛を本当に理解しているだろうか?
一抹の不安が走り、俺は横を通り過ぎようとした類子の手を思わず掴んだ。
類子「・・・何?貴方言ったわ。
金という目的の為に心を一つにして力を合わせること、それが私たちなりの愛し方だって。
たとえそれが、世間からは吐き捨てられるような苦い味だろうと
私は立派に飲み干してみせる。私達の愛を全うするために」
類子は決意の目に、俺は少し安堵して掴んだ類子の手を放した。

・・・その手を放さなければ良かったと、後々俺は後悔することになる。

ウェディング・マーチ。
俺は扉のすぐそばに立ち、二人の挙式を見守った。
扉の中に花嫁が入る。類子は真っ直ぐに前を見据え、ゆっくりと十字架に向かって歩いた。
不破と類子が並ぶと、神父が声を掛けた。
「新郎新婦、一歩前へ」
秘密の結婚式。二人の誓いは、偽りの誓い。
類子の誓いの言葉は、俺への永遠の忠誠の言葉・・・

式が終わると、予約していた麻布のフレンチレストランで
不破と類子は食事を取った。
貸切のレストランで寛ぐ新郎新婦をもてなすのは、ごく少人数のギャルソン達。
華やぐ光が溢れる窓の外、俺は車の中で時間を潰した。

不破と類子を麻布のマンションに送る。
玄関で白紙の婚姻届を不破に手渡すと、不破は満足そうにそれを眺めて言った。
「これで晴れて、類子は俺の妻になる。
明日、山荘で住人達にこのことを報告するからお前は朝8時に迎えに来てくれ」
槐「・・・承知しました」
不破に肩を抱かれた類子が、少し寂しそうな表情を見せたような気がした。
しかし、いつの間にかその目には陰りが消えていた。
どこか空虚に見える瞳。その視線はその日は二度と俺の目には向けられなかった。

俺は車を駐車場に置くと、歩いて近くのダーツバーに向かった。
マンションを探している間に偶然見つけたこのバーは、
山荘の地下室のような、どこか落ち着く空気を醸し出していた。
このまま一人でベッドに伏せる事を考えると、何故か心臓が痛んだ。

・・・俺は決意を固めたはずだ。類子と二人でゲームを全うすると。
類子が不破と結婚するのも、類子が不破に抱かれるのもゲームの一手に過ぎない。
だから俺が心を痛めることなんて何もないはずだ。

カウンター席に座ると、俺はいきなり強い酒を煽った。
食欲がなく、一日何も食べていない胃にアルコールが染みる。

今頃類子は不破に抱かれている。不破のあの手で、あの唇で・・・
しかし、類子は立派にゲームの駒としての役目を果たしているはず。
それは俺を愛してるからだ。自分を抱くのは金で出来た単なる肉塊、
そう考えながら時が過ぎるのを類子は耐えているはず。
それは一重に、俺とのゲームに勝つ為だ・・・

俺は、静かに目を閉じる類子を思い浮かべた。
星空の下で、アンタレスの輝きを瞳に湛えた類子の、透き通るように薄い瞼。
そっとそれを閉じると長くしなやかな睫が星の光に影を作り、
俺の唇に合わせるようにその影を振るわせた・・・

「・・・類子。」

その名前は、口腔で小さく転がるように響く。
その心地よさに俺はその名を何度も反芻した。
後悔なんかしていない。俺は計画通りにゲームを進めているだけだ。

目の前の若いバーテンが、肘を突いて両手で額を押さえていた俺の顔を覗き込んで言う。
「・・・お客さん、明日車で信州に帰るって言ってましたよね。
そんなに飲むと運転出来ませんよ?」
うるさい。俺に構わないでくれ!そう言おうとして目の前の男を見ると、
視界が一瞬霞んで思わず自分の目を疑った。
俺を心配そうに見つめる目が、驚くほど類子に似ていた・・・。





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Last updated  February 6, 2007 11:39:29 PM
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王様@ 潮 吹 きジェットw サチにバ イ ブ突っ込んだ状態でジェット…
ボーボー侍@ 脇コキって言うねんな(爆笑) 前に言うてた奥さんな、オレのズボン脱が…
リナ@ 今日は苺ぱんちゅ http://kuri.backblack.net/-6jv9of/ 今…
しおん@ ヤホヤホぉ★ こっちゎ今2人なんだけどぉ アッチの話…
アゲチン@ ありがとうな!!!! http://bite.bnpnstore.com/ogwmxps/ ア…

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