ルーの旅7 少女の夢4
「だぁから、虫じゃないってのに」 呻くように言って、少女の頭を軽く叩く。気の抜けた音を立てて、その音は再び訪れた薄闇の奥へと消えていった。 「あ、あなた、さっきの虫、いえ蟲なの?」 「うぁ聞いてないし何か禍々しい方向にグレードアップしてるし」 目の前で得たいの知れない生物が巨大化した、という事実にも関わらず、少女は以外にも、先ほどより全く冷静だった。どうやら異常な事態が逆に、頭の冷却作用に一役買った様だ。 「私は…………」 歩き、ルーは拾った殺虫剤を棚に戻す。 キシキシと、体に対する体重相応の軋みが床に残った。 「生まれてこのかた…………」 棚の扉を閉める。 厳重に。 再び錯乱して持ち出されても面倒だ。 「妖精よ。他の何かになった覚えはないわ」 少女を振り返って言う。 キョトンとした表情の少女と眼が合う。 少女は首を傾げ、ルーの言葉を頭の中で反芻している様だ。時々、ええ?と小さく聞こえてくる。 そして、少女はルーを見て、 「妖精?」 「そうよ」 「虫じゃない」 「何でそう思ったのか聞かせて欲しいわね…………ちなみに貴方達が言う所の、グレートブリテン出身よ」 しばし、沈黙が訪れた。 何かを堪えているかのように体をふるわせている少女。 不思議に思い、あるいは不安に思い、ルーはしゃがみこんで少女の顔を覗き込んだ。 「ね、ねえ。どうし…………」 「ぷっっはあぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」 「ひゃあっ!?」 突然大きく息を吐いた少女に、ルーは鳥肌が湧くと同時に跳びず去ってしまった。 その拍子に足を滑らせて床で頭を打つ。 「っつたたた、今日はこんなんばっかり………………」 「あーー良かった、虫じゃなくて!」 何か封印が施されていて10数年ぶりにそれから開放された戦士の様な開放感漂う声を上げて、少女は満面に喜色を浮かべた。あるいは安堵を。 両手は自身の体を抱え、身を捩じらせてさえいる。 「…………そんなに虫が嫌いなの?私を虫と間違える程に?」 皮肉にすら聞こえるルーのその言葉、実は言葉異常の他意は無い。思った事が口を付いて出る体質なのだ。 しかし、少女はそれが皮肉である可能性すら考えなかった様で、さらに笑みを深める。 「ああ、ごめんね。こんな素敵なお姉さんが虫な訳無いよね私どうしちゃってたんだろアハハハハハ」 質問には答えず、ただ笑いながらどこまでも軽い謝辞を述べた。 「……………………私が妖精だって理解してもあんまり驚かないわねーアナタ」 「そりゃあ虫がいるくらいだから妖精だっているでしょ」 「………………………」 何だかもの凄く失礼な事を言われた気がして、ルーは黙りこくった。-----------------------------------------------------------------------------------ふう、今日はこのくらいですかね。しかし文のテンポが悪いですねぇ。まだまだ下手です。まあ時間のある時に直すとしますか。一応終わりを決めているこの話ですが、何だかこのペースでいったら何時終わるのか不安になってきました。まあ、取りあえずやりきりたいと思います。