映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさん、こんばんは。今晩は月がきれいですね。

さてこちらは日本でも話題になっている児童虐待について書かれているフランスのノンフィクションです。

母の手を逃れて
Mon enfance bafouee
ジョジア-ヌ・ペラン

その時、私の目を引いたのは、表紙の絵でした。
タイトルは「母の手を逃れて」なのに、表紙の女の子は、きっと口を
結んで花を母親に差し出しています。そして彼女から離れた所にいる
女性-おそらく母親-は、女の子を見ようともしないのです。
タイトルとこの絵の違いは何だろう。
　こうして私は初めて見た著者の作品を手に取ることになるのです。

　そこには、母親の折檻に苦しむ6才の少女ジョジアーヌがいました。
著者の名前と同じ。つまりこれは実話です。
折檻の様子は凄まじい。冷たい水を浴びせ、ショベルで体を殴り、侮蔑的な言葉をのべつまくなしに投げつける。本当の母親なのか？と思うほど。父もまた母の話を鵜呑みにして彼女を鞭でぶつ。実の子をヴィクトル・ユゴーの「レ・ミゼラブル」のヒロインの名で呼ぶのは、何の冗談なのでしょう。
きょうだい達も、両親の嵐が過ぎ去るのをただ待っているだけ。
逆らえば、今度は拳は自分に向けられる。愛情の通いあいもなく、何のために一緒にいるのか、読んでいても一向に見えてこないが、彼等が家族である限り、他人は立ち入れないという現実が、横たわっています。



　彼女の場合は、目に見える証拠、つまり傷があったために彼女のかかりつけの医師が動き、カトリック系の養護施設に入所できました。
それからの彼女の文章の生き生きした事ったらありません。カトリック系だから普通の学校よりは、かなり規則が厳しいはず。それでも彼女にとっては天国だったというのです。
思いっきり息ができるし、勉強ができる。今までが「いかに当たり前でなかったか」がわかります。
読者にも、彼女自身にも。陶芸教室や、キャンプ。幼い子供の遊び相手。本来の彼女らしさを取り戻せた喜びがひしひしと伝わってきます。
　一番の彼女の収穫は、愛すれば愛し返されるものだという事を、肌で感じる事が出来たこと。
こればかりは、机上の講議では無理なのです。生身の人間でなければ。受け取った愛情が、彼女を育み、きっとその後の展開につながったのでしょう。
断ち切られた愛情の絆を、次につなげようとする勇気に。

DV法が施行されて随分になります。大人でさえ受けた暴力を口にするのがためらわれ、訴えたところで嫌な思いもしてきた事が記事に載っていました。傷に残らない精神的外傷を訴えることの困難さも。大人にとって、これらの苦労が壁ならば、子供にとっては山でしょう。きっと、より多くの大人の助けが必要なはず。
「無関心にならないで」というジョジアーヌの言葉を肝に命じなければなりません。



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