映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさん、こんばんは。先週が連休だっただけに、今週は長かったですね。おまけに週末にかけて天気も悪かったですし…。

さて、今日紹介するのは最近ヒット作が多く出版されている北欧ミステリのシリーズ本です。


声
Rodden
アーナルデュル・インドリダソン

クリスマスシーズン、観光客で賑わうアイスランドの首都レイキャヴィクの高級ホテルの地下室で一人の男が殺された。ホテルのドアマンだという男は、ボランティアで参加予定だった子どものためのクリスマスイベントのサンタクロースの扮装のまま、めった刺しにされていた。ホテルのドアマンとして20年以上も勤め、最近解雇されたあともホテルの地下の一室に住んでいた彼のことを、従業員の誰も知らなかったが、意外なところから素性が明らかに。

　今回のテーマは「子供時代のトラウマ」だ。『湿地』
『緑衣の女』において女性と子供という社会的弱者に加えられる暴力を強く非難してきた筆者が、本作では子供に焦点を絞った。

一　有望な歌手として将来を嘱望された少年が幸福の絶頂で転落する。その事を抱えたまま大人になった彼のトラウマ
ニ　登山で弟を亡くしたエーレンデュルのトラウマ
というかつてのトラウマを抱える大人と
三　父親から虐待を受けていると思われる少年が今まさに抱えようとしているトラウマ
の3つのトラウマがプロットに絡む。

三にもっぱら関わるのはエーレンデュルの部下エーレンボルだが、彼女から報告を受ける度にエーレンデュルは自身のトラウマを思い出し「子供にトラウマを抱えさせてはいけない！」と単なる捜査官以上の思い入れを抱く。彼の思いが筆者の主張であろう。

　今回クリスマス前とあって、エーレンデュルは二人の部下から「クリスマスを一人で過ごすのなら是非一緒に」と度々誘いを受ける。適当な事を言っているうちに、今度は娘からも「一緒にいてほしい」と言われる。肉親からの働きかけにはほろりと来そうだが、この言葉は単なる親子の情ではなくて「一人でいるとクスリやっちゃいそうだから見てて欲しい！」というややジコチューな考えから来ているためおいそれと乗れない。そうこうするうちエーレンデュルが事件のあったホテルの部屋に住みついてしまうものだから「もしかして、クリスマスも仕事するつもりなのか？」と思った周囲がよけいに心配して「クリスマスどうする？」攻勢に出る。事件はシリアスだが、この一連のやり取りは笑えた。来年のクリスマスには一緒に過ごせそうな女性も登場したので、頑張れ、エーレンデュル！


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