映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさん、GW明けの第一週はきついですね。
さて、今回取り上げるこの物語の主人公もとっても長い旅をしてきました。

オデュッセイアの失われた書
The Lost Books of the Odyssey
ザッカリー・メイスン

オデュッセウスはできすぎだ。脳筋派ヘクトルやアキレウスがばったばったと倒れていく中で、トロイの木馬を初めとする知将っぷりでトロイア戦争を勝利に導き、長きの放浪の果てに故郷に戻れば、恋女房と息子が彼の帰りを待っている。むさくるしい形をしていても、弓を引けばすぐにその実力は知れ、イタケの王としての威厳を取り戻す。そんなに現実って、うまくいくものだろうか。

　さて『オデュッセイア』も『クーリーの牛争い』同様口承文学であり、当時の伝承の数々をとりこんでバージョンアップを繰り返した。それならば、本当のところを知っている人など誰もいないはず。というわけで、『オデュッセイア』の別バージョンが見つかったという設定で書かれたのが、本作である。

　【悲しむべき発見】では、オデュッセウスは無事故郷に戻って来る。しかし妻ペネロペイアは「織物が織りあがったとき、求婚者のひとりを選ぶ」と言いながら、昼に織った織物を夜になると解くような、涙ぐましい努力などしていなかった。既に年老いており、同じように年老いた男と穏やかに暮らしていた。まあ、こちらの方が現実的なオチだろう。大ショックのオデュッセウスはどうしたか。弓をきりりと引き絞り…なら冒険譚になるが、さにあらず。欲求不満が解消されなかった時の自己防衛の手段として、昇華、投影など15くらいの解消法があるが、オデュッセウスの対応が見事にその中の一つに当てはまっている。

　いや、やっぱりオデュッセウス妬まれたよね…と納得の【もうひとりの刺客】オデュッセウスが吟遊詩人になってしまう【オデュッセウス版イリアス】アキレスの驚きの正体が明かされる【ミュルミドンの泥人形】晩年のオデュッセウスが英雄に憧れる若者を連れてかつての島々を巡る切ない旅【最後の島々】など44篇週録。短編のボリュームもそれぞれ異なる。似たようなエピソードのバリエーションになってしまうのは、エピソード自体の少なさが原因と思われる。


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