映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさん、こんばんは。ついに6月ですね。
眞子様がブータンに行かれました。高地だから着物でも涼しいのでしょうか。
お若い国王夫妻ですね。

さて、今日はちょっとひねりのあるミステリを紹介します。


トレント最後の事件　新版 創元推理文庫
Trent’s Last Case
E．C．ベントリー(著者),大久保康雄(訳者)

　アメリカ実業界の大立者がイギリスの別邸で殺害された。世間を騒がすこの大事件の解決に赴いた画家にして名探偵のトレントは、重要容疑者である、被害者の美しき妻メイベルと出会う…。

　はい、「またか」と思った皆さま、正解です。トレントはメイベルに恋をするのです。そして「最後の事件」というので「ホームズみたいに散々活躍してきたのかじ？」と思いきや、これがデビュー作です。ややこしいな。どうやらこのネーミングは従来の名探偵ものへのアンチテーゼらしいです。そして探偵は天才である傍ら偏屈で、常人にはわからない言動で周囲を煙に巻くのが王道ですが、敢えてその道も外れました。トレントは、誰にでもにこやかに話しかける、極めて普通の好青年です。まあこれはこれで、様々な事を探りださなければならない探偵としては美点と言えましょう。また、ホームズのような諮問探偵(Consulting Detective)ではなく、画家でもあります。また、ホームズにやられっ放しのレストレード警部に対して、スコットランド・ヤードのマーチ警部も、トレントとのやり取りでは、彼と拮抗しうる実力の持ち主として描かれ、それほど敵対しているようには見えません。そうなのです。人が殺されているにも関わらず、被害者の人格がさほど褒められるものではなかったためか、あまり｢犯人を見つけて仇を取ってやろう！｣という機運が盛り上がりません。むしろ｢この事件のせいで悲惨な目にあう人を救い出そう｣という方が、動機に近いかもしれません。

　これほど優秀なトレントが、とある理由で探偵引退宣言(初登場にして!)するのですが、これもまた、探偵万能説へのアンチテーゼでしょう。

　
　2009年に英国ガーディアン紙が発表した、「英ガーディアン紙が選ぶ必読小説1000冊」選出。　


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