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March 16, 2019
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みなさん、こんばんは。大冒険時代をご存知ですか。
冒険家たちが未開の地を求めて大海原を自由自在に行き来したかっこいい時代だと思っていましたが、見方を変えると別の事実が浮かび上がってきます。

ヴァスコ・ダ・ガマの「聖戦」: 宗教対立の潮目を変えた大航海
Holy war
ナイジェル・クリフ
白水社

ヴァスコ・ダ・ガマやコロンブスが新大陸を見つけようとしたのは「黄金の国ジパングに行きたかったから」「当時貴重だった香辛料をゲットしたかったから」など諸説あるが、実は動機に宗教が絡んでいた。そういえば、ザビエルも鉄砲と聖書を持って、はるばるジパングにやってきたのだ。

 キリスト教国では都市伝説ならぬ謎の人物に関する伝説が信じられていた。その名はプレスタ―・ジョン。偉大なキリスト教の王で、所在地はインド。キリスト生誕の時に捧げものをした東方の博士の一人の子孫である。七人の王が付き従い、それぞれの王には六十二人の公爵、それぞれの公爵には三百六十五人の侯爵が仕えている。彼の国には若さの泉、世界が映る鏡があり、角の生えた人間や、フェニックス、一つ目の巨人がいる。何だかキリスト教の王にしては、随分とアラビアンナイトの影響を受けた王だ。当時イスラム勢力が押せ押せだったヨーロッパは、この王と手を組めば、イスラームをヨーロッパから駆逐できるはずだと信じた。「プレスタ―・ジョンを見つけるまで帰ってくるな!」と王に言われ、結局帰国を断念した残念な人もいる(だって見つからないんだもん)。

信じた国の一つがポルトガルだ。王子の頃から冒険に目がなかったエンリケは、佐藤賢一氏の著書にも書かれた『テンプル騎士団』が滅亡すると、彼等の莫大な財力をちゃっかり手にいれて航海の資金にあてた。また、1444年アフリカ大陸西海岸の沖合の島に夜更けに上陸し、夜明けに「ポルトガル、聖ヤコブ、聖ゲオルギウス!」と叫び、「おっ、言葉が通じない!こいつらはキリスト教徒じゃない!」と確かめたのちに、平和に暮らしていた島の住民に襲い掛かり、殺したり奴隷として連れてきたりした。彼等をかっさらい奴隷にした事を悔いるどころか獣同様の無宗教の環境から救ったと大いに満足したとのこと。ひどい。


 この暴挙に対して愛と寛容を説くキリスト教の総本山=ヴァチカンはどう反応したか。真の信仰を見つけられなかったアフリカ人は、キリストの法の外にあり、彼らの肉体に関してはいかなるキリスト教国も自由に裁量してよい(p88) などと、エンリケにのたもうた。これはひどい。もともとキリスト教を知らない国に行き、、勝手に領地を分捕り人を好きにしていいなんて。慈愛と許しは、キリスト教信者にだけ向けられるのか‼(いや、そうなんだろう)。

 まだ満足な地図もない大航海時代、フロンティアに漕ぎ出していった冒険家・探検家を「をを、これぞ男のロマン!」と崇めている人たちにこそ、ぜひ送りたい。人間、最後に残るのは欲である。


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最終更新日  December 28, 2021 05:26:15 AM
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