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カテゴリ:海外のミステリー&ファンタジー小説
みなさん、こんばんは。
米国の介入により中国と台湾の間もぎくしゃくしていますね。 ぶっとんだヒロインが大活躍する作品を紹介します。 愚者(あほ)が出てくる、城寨(おしろ)が見える Ô dingos,ô châteaux! ジャン=パトリックマンシェット 光文社古典新訳文庫 これを紹介する時正直悩んだ。冒頭が 「トンプソンが殺すべき男はおかまだった。」 だし、ヒロインが精神病院から出てきたばかりだし、タイトルがこれだし。だし、だし、だし。だいたい、おかまはその後の物語に全然絡まないんだから、殺す相手がおかまでなくてもいいじゃないか。ほら、ね、このように、この本を差別用語を使わずに紹介するのは難しい。仕事としてレビューを頼まれると言葉を選ぶのに苦労する。この本を知ったのはトヨザキユミさんが主宰する書評合評会で、もう一つの課題図書は西村賢太さんの『どうで死ぬ身の一踊り』これもまた…忌み言葉を使わず紹介するのは難易度高い。ちなみに合評会はアマチュアの作品を審査するものだったので縛りは一切なく、ユニークな評が飛び出した。 で、こちらも縛りなしで書く。企業家アルトグに、幼い遺産相続人ペテールの子守として雇われたジュリーは、精神不安定で入院していた精神病院から出てきたばかり。企業家とプータローのどうにも接点が見いだせない二人がどうやって繋がったかというと、アルトグが篤志家として精神を病んだ人を救済しており、今まで何度も精神疾患の患者を雇用してきたのだった。アルトグは強引な手法で恨みを買っており、ペテールとジュリーは冷酷な殺し屋トンプソンとその手下に誘拐されてしまう。だいたい精神不安定な相手に、生命の危険を感じるかもしれない仕事を任せる自体が間違っている。仕事ができるできない以前の問題だ。 ところがジュリーは映画の『グロリア』よろしくペテールを守って最強の殺し屋から逃避行を続け、ひたすら城塞を目指す。だが、いつ精神不安定になるかわからない、ぶっ壊れたグロリアなので、カッコいいというよりは危ない、怖い、そばに来てほしくない! 登場人物の心理描写を一切行わないハードボイルドで、唯一笑いを誘い哀れもついでに誘うのが、トンプソンの唯一の泣き所、胃である。これさえなければ映画『レオン』のタイトルロールもまっつぁおの、クールで失敗しない殺し屋なのに。冒頭の殺しの後もトンプソンは今にも死にそうな形相になり、ジュリーを追いながらも何度も胃痛に悩まされる。実は気が小さい?いざという時に役に立たないと困るので、胃潰瘍を治すのが先じゃないかと思いながらも、いいチャンス(といっても殺すチャンスだが)が来ているにも関わらず体をよじらせ悶えるトンプソンが笑えて仕方がない。耽溺してはっと気づくと自分の中の眠れるスイッチが入ってしまいそうで、こちらも怖い。逆に、新たな自分を発見したい人には必読の書かもしれない(嘘)。 『愚者が出てくる』とあるが、もっと踏み込んで言えば、この小説は愚者以外誰も出てこない。ジュリー&トンプソンの通り過ぎた後には死屍累々が…傍迷惑この上ない。いやー、どこか他所で二人だけでやってくれないかなぁ、これ。 愚者(あほ)が出てくる、城寨(おしろ)が見える【電子書籍】[ マンシェット ]楽天Kobo電子書籍ストア お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
August 20, 2019 12:00:22 AM
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