映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさんこんばんは。アリスの谷村新司さんが亡くなりましたね。まだ若いのに。今日から5日間ノンフィクション作品を紹介します。

シェイクスピア・アンド・カンパニイ書店
SHAKESPEARE AND COMPANY
河出書房新社
シルヴィア・ビーチ

​　ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』は、高校英語の教科書に一部引用されていた。いやこれが実に読みづらい。というより、訳しづらかった。後ろから前、後ろから前に意味を取っていかなければならず、大いに悩まされたのを覚えている。ちなみに未だに全文は読めていない。

　アメリカで発禁処分を受けていた『ユリシーズ』出版に尽力したのが、シェイクスピア・アンド・カンパニイ書店である。紙媒体主流の時代、書店が自ら本を出版することはめったにない。問屋から注文した書籍を受け取り販売するのみだ。しかしこの書店は特別だった。

　
　ポール・ヴァレリー、ヴァレリー・ラルボー、レオン＝ポール・ファルグ、ジュール・ロマン、ポール・フォール、アンドレ・ジッド、ルイ・アラゴンら前衛作家が集まるサロンになり、やがてロジャー・フライ、オルダス・ハクスリー、イーディス・シットウェル、ウォルター・デ・ラ・メアら英国の作家・評論家もやってきた。1920年代にはガートルード・スタインが「失われた世代」と名付けたアメリカの亡命作家がシャーウッド・アンダーソンを介して集まった。ヘミングウェイ、フィッツジェラルド、T・S・エリオット、エズラ・パウンド、ジューナ・バーンズ、ヘンリー・ミラー。まさに錚々たる顔ぶれだ。

　ジョイスはかなり校正が多く、かつ目も悪くなっていた上に悪筆だった。そのため校正者は何人も入れ替わり、最後はシルヴィア自身が担当することもあったという。本にならないのだから金も入らない。生活の面倒もみたのだからほぼパトロンと言って良い。「みんな私に任せておけばいいのよ！」という肝っ玉母さんタイプではないが、度胸はあるようだ。この後第二次大戦が起こり、パリはナチスドイツに一時占領される。ナチスの占領下にあった書店を解放したのがパパ・ヘミングウェイだったというドラマのような本当の話。

　書店は現存し、現在二代目によって運営されている。無一文の若い書き手に宿を貸すことで知られている。未来のジョイスがここから現れるかもしれない。

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シェイクスピア・アンド・カンパニイ書店 / 原タイトル:SHAKESPEARE AND COMPANY[本/雑誌] (河出文庫) / シルヴィア・ビーチ/著 中山末喜/訳​​ネオウィング 楽天市場店​