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みなさんこんばんは。フジテレビ系ドラマ「踊る大捜査線」シリーズ最後の映画として12年に公開された「踊る大捜査線　THE FINAL」公式サイトは12年ぶりにプロジェクトが再始動すると発表しました。今日は山田風太郎作品を紹介します。

信玄忍法帖
山田風太郎
講談社

元亀3年12月、織田・徳川両軍は三方ヶ原で武田軍と激突。結果は武田軍の大勝。しかし一気に攻め入るかと思われた武田軍の動きが止まる。もしや信玄の身に異変が？川中島で死んだはずの名軍師・山本道喜斎(勘介)の姿さえ見たという報に、家康は服部半蔵率いる9人の伊賀者に、信玄の生死、勘介の生存、謎の僧侶の3つの謎を突き止めるよう命じる。
一方武田側は、「信玄の死を3年間は秘するように。」という遺命を守るため、
若き真田源五郎昌幸と、その部下猿飛天兵衛、霧隠地兵衛が6人の影武者を守る。
勘介VS家康、二人の狸対決の勝敗は？

伊賀者9人と影武者6人?単純な数計算なら、勝敗は明らか。
いや、待て、しばし。早計あるな。
それほど歴史は、単純じゃないし、影武者自体は戦わない。
むしろ、影武者は「これを取られたらおしまい」の騎馬戦の旗だ。
頼りになるのは、このお方。
信玄臨終の床にありて、早くも入り込んでいた伊賀者をばさりと斬る昌幸。何とも鮮やかな登場。
『真田太平記』で胡桃を持ち、老獪に謀を巡らす彼も、若い頃は精力も好奇心も人一倍。そして彼の若き妻に横恋慕し、伊賀者の策略で彼等の閨を出歯亀するのが、土屋藤十郎。後に家康の下で、石見銀山・佐渡金山奉行として采配を振るう大久保長安、その人だ。信州で金をちょろまかしたあげく、伊賀者につけいられる隙を作り、とんだ厄介を運び込む。結果長安は、徳川方に「あーれー」と拉致されてしまう。どこまでもいいとこなしの、もう一つの「藤十郎の恋」の顛末。こういう遊び心が、歴史ファンにはたまらない。情けない長安に対し、渋く決めるのは、山風『室町お伽草紙』宮本昌孝『剣豪将軍義輝』にも登場した剣聖・上泉伊勢守。

そしてやはり、忍法物といえば、最大の呼び物は忍法対決。セックス＆下半身絡みが多い多い。
「どんな衣や冠を纏おうと、どんな身分でかしこまっていようとも、所詮人間はソコを責められれば弱いものさ。」
これは山風独特の人間哲学か。
肉筒一つで性を変える「陰陽転」水を吸って膨れ上がる「忍法春水雛」など
まともに考えれば、
「そんな事、あり得ないよ !」と思い切り突っ込みを入れたくなるが、
いや、待て、しばし。
「死すともこの謎をつきとめよ。」
という家康と、
「死すともこの秘密を守らん。」
とする武田ファミリー。
秘密一つに命を賭ける、この状況だって、十分異常だ。
でも、その異常があり得たのが、武士社会。家康の長男誅殺が
まともか？
ならば、まともじゃない忍法だって、あったっておかしくない。

まあ、そんな反論しなくとも、間断なく繰り出される忍法対決を
読んでゆくと、小理屈や整合性についての疑問は、物語の勢いに流されて、雲散霧消するのだが。
死力を尽くして戦って、勝利を得た側とても、
更に思いがけない所から、ほころびる。
実は、最大の敵は外ではなかった。
そんな非情の運命の上に、更に非情を重ねれば、彼方に見ゆるは歴史という名の塔。そしてこなたを振り向けば、華やかに、鮮やかに技を決め、蝉より早く、その命を散らす忍者達。その運命は、花火にも似て。
彩りし花火にしばし見入りて、また次の戦いへ。その繰り返しに、次第次第に魅入られゆく。
それこそが忍法帖の醍醐味。

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