#171 特別賞に至る道程
管理人から第10回新囲碁ボケの結果が発表された。「これはいい」と思っていた、かものはし☆さんの「おしくらまんじゅう!」がMVPで、ちょっとうれしい。.つかんこさんは鮮度抜群の粋な作品、ゆー坊さんは王道を行き、サブさん、打ち手に左右される恋、せつなくて胸がキュンとしました。Bobbyさん、nipparatさんをネタにするとは大胆、しかも軍隊系っていうんでしょうか。以上、MVPを獲得されたボケ客のみなさん、おめでとうございます。他にも好きな作品は沢山あって、kyonchnさんの「やはり那智か!」、かきくけこさんの「業務上過失致死罪」、しげさんの「過労死する~!」と「カルシウム」あどさんの「後家さん」と「ボケ」と「ラーメン」、笑わせていただきました。MVP他の各賞を受賞されたボケ客の皆様、おめでとうございます。ところで、このところ、新囲碁ボケにつられるように、「笑点」を観るようになった。以前観ていたのは、円楽さんが、大喜利の真ん中に座っていたころのことだ。その円楽師匠が、「だめですねえ~」と言って高座から降りられた、という話を聞いたのが、ずいぶん前のことように思える。閑話休題。さて、今回の拙作落語を振り返ってみよう。お題を見て、第一に「囲碁史に残る有名な対局」を扱ってみようと思った。そこで、ちょっとググって「古今著名局」を見ると33局が載っていた。その中から、選者とボケ客のみなさんがほぼ確実にご存じで、しかもその対局の棋譜以外の部分に暗黙知があると思われるものを絞った。いくら妙手が有名でも、囲碁ボケで棋譜は扱えないだろう。さらに、動画としてインパクトがあるものが私の好みなので、すぐに「吐血の局」、「耳赤の局」、「原爆対局」の三つに絞られた。しかし、赤星因徹が「吐血」したのは、盤側ではなく対局の数日後だという説が有力だ。また、「耳赤」は、よく考えると表面的な動きが静かすぎる。これら2局は、ともに碁石と絡めるのが難しく思えたので、あきらめた。それに対して、「原爆対局」は、何しろアメリカのエラノ・ゲイが飛来するのである。かのオッペンハイマーさんが自らを、「世界の破壊者」と叫んで後悔なさるところの、あの原子爆弾が上空で爆発するのである。「プチ波動砲」で味をしめた訳ではないが、ド派手な爆破オチが使えそうに思えた。飛び散る碁石たち...これはイケるのではないか...こうして、「原爆対局」を扱うことに決定した。さて次に、私がしたことは、例によっていきなりオチを考えることだった。「原爆、げんばく、げーんばく、げんばーく、げんばくー...」と、微妙にアクセントを変えながら、お経のように唱えては、同音異義語にアンテナを張った。そして、唱えること数分。幸運にも、「どげんばくーとね」、が天から舞い降りてきた。いい加減な方言みたいだが、これでいくしかない!腹を決めた。うれしくなって、「どげんばくーとね」、「どげんばくーとね」...と吟ずること数回、至極満足する。これを、駄洒落ハイというのだろうか?心を静めてから考える...さて、何を「くー」わせたものか?しかも、碁石に絡ませるのだ...。瞬間的に「はまぐり」が浮かんだ。これで、作品の90%はできあがったようなもの、と思った。次にやることは、取材である。『現代の名局 橋本宇太郎』を書棚から取り出すと、原爆対局を探した。面白いことに、この対局の観戦記には手の解説がいっさいない。その冒頭の文に「覚悟」のようなものが伺える。>伝統を守るために、戦時中空襲の中で本因坊戦が行われた。>そのうちの一局が広島の原爆と遭遇したこの局である。>勝負は問うところではないし、着手の善悪もまた問うところではない。>よくぞ打ったという一語につきる。全13譜、その脇に綴られているのは、「その時」と、前後数日のことである。まるで、『その時、歴史は動いた!』で松平定知が講じているような作りなのだ。そこには、さまざまなエピソードと、それらを包み込むような囲碁に対する愛情があった。読むうちに、これらの話題もボケに盛り込みたいと思うようになった。こうして、さきほどまで90%できたと思っていたボケが、9%にも満たないことに気づいた。だったら話を10倍に膨らませるのだ、ほほ。そして連想ゲームは始まる。そのエピソードの数々は、蛤と那智黒に語らせよう。過去と現在を結ぶために、「うたろう先生」と「かおる先生」にも会話に加わってもらおう。その二人にハマグリ料理を「くー」てもらおう、しかもたくさんだ。だったら温泉旅館がいいな。ついでに残った貝殻で蛤碁石を作ってしまおう、ガリガリと...。そのとき、貝殻が痛がるというのはどうだ?連想は次々と浮かび、話の骨格ができあがった。料理を食べるシーンは落語家の見せ場の一つだが、長くなるし、微妙なところを文字だけで伝える芸はないので今回は見送り。万が一、上演の運びとなったときの楽しみに取っておこう(冗談です)。あとは、ちりばめる小ネタづくりと、リズム感の調整だ。キーボードを叩きまくり、一気に完成。できあがったものを読んでみると、8~10分かかってしまった。まあ、そんな作品がひとつくらいあってもいいだろうということにして、nipparatさんにTBを打診したのだった。果たして、今回の新作落語では、特別賞を戴いた。何と、2000万ポイント分の代替え賞品まで頂けるとは、「幸運でした」。「これを下地にして違う形で落語に構成し直したいくらい」と、pg副審査委員長に言って頂けたことが、とてもうれしいかった。同時に、もっと覚悟を決めてボリュームを増やせばよかったとも思った。「そこんところ、はしょらんと、もっときかせてーな」と思われては申し訳ないのだ。さあて、賞品は何をセレクトしようかな?nipparatさんの指導碁って、何子おけばええんやろ?井目かな?新囲碁ボケ副審査委員長1回って、ようできへんやろな...。はて、どないしよ...。第10回新囲碁ボケの結果発表http://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/200703140002/古今著名局を紹介しているページ、棋譜も観られますよ。http://mignon.ddo.jp/assembly/mignon/go_meikyoku.html