テーマ:囲碁全般(743)
カテゴリ:囲碁~碁界一般編
2006年10月23日、この記事で「私が生きている間にはコンピュータはたぶん自分より強くならない」と豪語したことがありました。
2013年5月9日、この記事で19路盤ではまだ自分の方が強いとしつつ、抜かれるのは時間の問題として2006年の豪語を撤回しました。 とはいえ、それ以降プログラムが頭打ちという情報もあり、これまでのUEC杯や電聖戦でも目覚ましい進化がある、とはちょっと考え難いところがありました。 そんなわけで、自分より強くならないという豪語は撤回したとは言え、まだもうちょっと余裕があるのかなと個人的にはのほほんとしていました。 そんな中で、昨日突然訪れた、欧州のプロに五戦全勝の報。 低段プロとは言え、欧州のプロも日本のプロと実力はそう変わらないだけに、五戦全勝となればこの結果は私のこれまでの感覚からすれば驚嘆すべきものと言え、この事実からすれば私は「あらよっと」と抜かれたと考えるべきでしょう。 私自身とコンピュータ囲碁との関係はもうちょっとドラマチックにじりっ、じりっと進んで、気が付いたらあーこれは抜かれたと認めざるを得ないわー、みたいなことになるという印象を持っていましたから、個人的には「うす曇りに霹靂」くらいの感触です。 3月に予定されているという李世ドルとの対局が「全く予想できない」状況になりました。 李世ドルとの対局は楽しみにしています。 流石に世ドルに勝てるとは思えない…とは思う半面、霹靂だったためにそれを否定できない自分もいる、というところでしょうか。 UEC杯&電聖戦にも参加するということなら、小林光一九段との対局も気になるところです。 ただ、もしコンピュータ囲碁がそこまで強くなったなら、もう一つの囲碁の楽しみ方も出てきますので、今日はその話をしようと思います。 それは、「アドバンスド・囲碁ウォッチング」。 チェスではコンピュータと人間で連合軍を組んで対局する「アドバンスド・チェス」があるそうですが、コンピュータと人間で組んで「碁を見る」という楽しみ方ができるのではないか、と考えます。 囲碁というゲームは大きすぎるため、プロ同士の対局を見ても形勢判断がよくわかりません。 終局までスコアや形勢がなかなか分からない時間のかかるゲームを面白いと思う人はそういないのではないでしょうか。 局面判断の非常に重要な要素の一つが同じ数の石を取り除いて石の働きなどを判断する「手割り」です。 私のようにアマ高段以上なら手割りを自ら使いこなして対局するのが必須と言え、プロの棋譜を見るにあたってもぜひマスターしておくべき考え方である、これをマスターできていれば棋譜を並べる楽しみは5割増しと思います。 そして、手割りの理論自体はそんなに難しくはありません。級位者の上の方くらいでも理論への理解は難しくないと考えます。 ところが、理論が分かっても「互角の局面についての知識や、これとこれは悪手というような知識がないとわからない」ため、実際に手割りを自分で使いこなして観戦・対局しようとするとアマ高段者の力がいる場合が多くなります。 その判断について、棋士が解説してくれればいいですが、棋士の解説がない中で手割りを考えていくのは、私にも難儀です。私の手割りと解説棋士の手割りが違ったということもしばしばです。 ましてや級位者級のアマチュアが解説なくみている場合にはもうお手上げとなるでしょう。 そして手割りに意味がなくなってくる中盤以降になってくると形勢判断はもっとややこしくなってきます。 NHK杯で解説をしているプロでさえ判断を間違えて、結果から逆算して「どうも私の判断が間違っていたみたい…」という状況はしばしば見かけます(この考え方自体ある種の手割りともいえる)。 これをアマチュアに判断するのは至難でしょう。 他方、将棋を見る場合、コンピュータの形勢判断と合わせて将棋を見る、「アドバンスド・将棋ウォッチング」は、私自身級位者レベルの棋力しかなく戦法の知識もあまりない将棋の生中継等を見るときには私も採用しています(使用プログラムは「激指」です)。 ニコニコ生放送などでも、プロ級(それ以上?)の力を持つPonanzaやAWAKEといったプログラムなどを用いた評価値がよく出されます。 コンピュータの評価値があるのであれば、「評価値を参照しながら観戦し、数値という分かりやすい形で形勢判断が見える」というわけです。もちろん、解説の棋士の判断と評価値の齟齬という見所もあります。 しかし、私は囲碁に関してアドバンスド・囲碁ウォッチングを使ったことがありません。 それは、囲碁は私自身が強いからというのもありますが、囲碁の形勢判断ソフトの能力は正直言ってかなり低いと言わざるを得ないのが原因でした。 高尾紳路九段のブログですら「目算が全くできてない」とはっきり言われていますし、私と打って後で評価値を見直してもそりゃないやろ・・・がしょっちゅうです。 評価値がコンピュータ有利で80に届いているけど普通に打ち進めて(評価値的には)逆転勝ち、なんてこともしばしばです。 そんなのに一々着手を打ち込むのは面倒、ということで、結局アドバンスド・囲碁ウォッチングは私はやっていませんでした。 しかし、これだけ強くなって来ればおそらく評価関数の質も相当に高いものと思われます。 そこにコンピュータならではの冷静さ等の要素が加わってくれば、「見せ物に使う形勢判断」として十分すぎるほどの質は確保できるのではないか、と思われます。 そして、これが囲碁観戦における一つの参入障壁である局面の分かりにくさを少しでも軽減することにつながるのならばよいな、と思います。 もちろん、現在のニュースはあくまでもプロに勝ったというだけですから、アドバンスド・囲碁ウォッチングが実用的になるかはまだ先の話です。 今回プロに勝ったプログラムが商品化されるなり、棋院その他が形勢判断ソフトとして採用して使っていくということになるまでには、やはりステップが必要でしょう。 それでも、コンピュータ囲碁にはただ対局するというだけの楽しみではなく、観戦をより楽しくさせるという効能もあることを今のうちに指摘しておきたいと思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2016年01月29日 23時31分43秒
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