十段戦第二局、治勲の闘魂恐るべし
今日は幽玄の間で見ました。気分転換に新しくHNをとってみたのですが、なんだかすごく強くなった気がしますね。 もしかするとと思って秘密のHNで打ってみても勝てないし、新HNで打つと別人のように冴えて勝てるんだよね。 名前って大事ですね、ホント。十段戦第二局は、黒番・趙治勲十段の2目半勝ち。 棋譜はここからどうぞ。 10手目までは割りと見る布石かな。 11手目の大ゲイマも定法。というより、最近二間高バサミされて大ゲイマ以外の対処をする例は少なくなっているような気がする。 21手目は隅をかけつぐのが割りと多いけど、最近は気合負けと解釈されているのか気合で左下に下がる手が多い。これで4-14の断点を切って打っていくと右上のシチョウあたりとカランでものすごい戦いになるのだが、山下はそれを採用せず右下をついだ。私もどっちかといえば下がられたら手を抜いて相手に手を入れろと強要して打つのを喜ぶようなタイプだけど。 23のツケノビはキリ回避の方法。三線にカケツぐのも多いが、この場合は中央をけん制しておこうという意図か。 これに対して白は三線にノビ、再度のキリ、あわよくば隅の目を一眼にする手を狙った。私だと下辺に打って左辺は切っとけとやっちゃうけどな。 黒としては、やはり下辺突入は気合か。白も下にすべって謝れば一応穏やか(私ならそう打つと思う)だし、実戦は白の全体の目も怪しいけど飛びつけて戦わなければならないときなのだろう。右下は小目につける手もあってまだまだ余裕がある。 すかさず白は左下の目を先手で奪い、(左辺白石の根拠を持っている意味もある)下辺のすべり。小さいような気もするが、7-18に打たれるとワタリの保険まで残ってむかつく意味があるのでじっくり腰を落としたということなのか。 黒は中央で位を取って右下をコスんだ。三子を攻めにいくつもりであろう。白としては軽くさばくくらいのところか。 51のキリは強襲だけど、ポン抜かれてちょっとぱっとしない気がする。結局右下は黒地、白は外回りのフリカワリに。13-12ノビが利いているし、左下一体の白がそんなに弱くないので(下辺は一眼に出来ない事もないけど黒も威張れた形ではない)、左上に回っては白まあまあではないか。 65は伸びないんならということであろうが、別に儲けた気はしない。71と突破しても、右の白が固まっているのでちっとも面白くなく、72,74となると白が調子出てきた感じである。 75のノビはついだら下辺の目を奪って、攻めてカランで局面を打開しようと仕立てだが、白の左下守りはすごく冷静。切られても捨てれば悪くない、ということであろうか。場合によってはまだ左下の黒の目を狙う余地も残っている。 黒の右辺突撃にコスミ受けはまあ当然として、79と二間に開くのは重い手法。たぶん勝負手の意味がそろそろ出てきている手であろうか。黒は右上を包囲するが白がツケからサバいて隅はコウに。コウをしくじると黒も全体に薄いので決して黒花見コウではない。白のノゾキに黒はコウを解消したが、低位にぺシャッとした形で逆に110と中央を抑えられては黒大空振りの印象。 112と打たれたのもむかつく。113など見るからに車の後押しで打ちたくないが、下手を打つと黒の左下の石に目がないのでここは逆らえない。そして116,118と実質のある手をばしばしと打って明らかに白快調モードに突入した。 119は薄い手だがもはや贅沢はいえないということか。白はここで120と反撃。121に打たれると3-10が見えるだけに恐ろしいところでもあるが、こういうところの攻めは山下の本領でもある。123に対して124以下と切断し、左下に生きを強要して取り残された中央黒の大石に白が攻めかかった。138と地を取りながら攻められるのは黒辛いところであるが、ただ生きられては白も地合の保証がない。良くも悪くも攻めの山下、守りの治勲の構図が出始めた。 155,159と急所急所に打つ治勲であるが、ここで白はいったん164と撤退。169までと黒は確実に生きたが、どうやら撤退時点で形勢判断が出来たようだ。 右下はかろうじて手がないらしいのだが、形勢ははっきり白よいのはよくわかる。 ・・・と書いて終わる予定だったんですが、治勲先生は終わらないんですね。 さすがにタイトル獲得数日本記録を持つ趙治勲、最後の抵抗とばかりに187からコウを仕掛ける。白は下手なコウ材を打つと上辺を突破されて地合が意味不明になる。結局白は209のコウ立てに210と妥協、212までと右辺復活、上辺確保のフリカワリで手を打つことに。これは差が相当に縮まった・・・はずだがよく見るとまだ白がコミにかかりそう。治勲の闘魂もこれまで。 ・・・とまた書いて終わるつもりだったんですが227に打ったときに228の妥協が悪いと言う説が浮上。ついに黒逆転か?? となった瞬間白に234の大ポカ登場。右辺で大損をした白、ついに敗北決定となってしまった。 このポカは治勲が引き出したと言っていいと思いますね。 治勲先生のえげつないまでの闘魂をたたえます。この碁は。本当に。 さて、そろそろ富士通杯の季節になってまいりましたが、日本勢は勝てるでしょうか? 日本代表は山下敬吾、高尾紳路、張栩、横田茂昭、仲邑信也、依田紀基、結城聡。1回戦パス権が一つありますから、おそらく日本ランク第一位の山下がパスでしょう。