テーマ:囲碁全般(743)
カテゴリ:囲碁~碁界一般編
井上名人(第3局のyahooでの誤植)ならぬ井山名人、七冠達成おめでとうございます。
十段はかつて名誉称号を取った棋士がいない棋戦でもあり、この手の独占系では鬼門で、今回も最後まで残りました。 囲碁界初の7冠ということで、メディアの注目も集めたようで、個人的にも私からふってもいないのに囲碁の話題が出たりしました。 将棋界で羽生善治七冠が生まれた時(ちなみに井山七冠は当時の羽生名人と同い年)はまだインターネットが普及していなかった頃でしたが、当時インターネットがあればどちらが注目されたでしょうか。 産経ニュースのトップ15のうち5は十段戦関係の記事。 twitterのトレンドにはなぜか「井山六冠」が上がっています。七冠なのに。 私個人としては、井山七冠が日本の囲碁界で本格的に活躍するようになったあたりで、私は生活上のいろいろもあり、囲碁記事をあまり書かなくなってしまいました。 そんな中で、10年前に個人的に書いたあえて私個人的な黒歴史を引用させていただきますと「(負けた相手の古力に対して)それにしても差がありすぎる。定先でも不安になるほどだ」。 我ながらなんと偉そうな口を叩いているものです。 少なくとも当時、私は井山七冠に対しては「タイトルもいくつかは取る有力棋士にはなるだろうけど、まあそんくらいじゃないか」などと考えていました。 本当にすいませんでしたm(_ _)m。 井山七冠の碁は、しばしば力碁、という言い方をされています。 私個人的には、もちろん力碁という形容は正しいと思いますが、力碁にもカミソリと言われる坂田栄男名誉本因坊や殺し屋と言われる加藤正夫名誉王座のように色々なタイプがいます。 そんな中で、近年の井山の碁について、私は「オオウナギと正面から格闘し、捕まえてしまうような碁」という印象を抱いています。 柔道で言うならアリジゴクの巣より逃げ出せない強烈な寝技という感じでしょうか。 しのぎ勝負大好きというわけでも攻めがきついという感じでもどちらでもなく、たとえしのぎに回ったとしてもねじ伏せるような相手に力を見せつけるような棋風、という印象を抱いています。 本日の対局の棋譜を見直してみても、しのぎに回っていても伊田十段の読みをねじ伏せている。 そんな印象で、井山七冠らしい碁で七冠になったと思いました。 さて、私個人として、井山七冠に今後特に期待したいことがあります。 それは、表題で書いた「新・鬼畜眼鏡」としての役目です。 もちろん鬼畜眼鏡といっても性格が悪いからではなく、「褒め言葉としての鬼畜」です。 (強すぎて「鬼」と呼ばれる例は囲碁界にも「鬼田強太郎」の異名を持った小野田千代太郎の例などもあります) 井山七冠がいくら歴史に残る棋士であっても、世界的に見れば将棋のA級かB級1組くらいであり世界タイトルは小型棋戦のみなのも事実です。 もちろん井山七冠が今後スターマリオ状態になってくれればなおよいと思いますが、それでも井山一人では限界があるでしょう。 そして、現在の日本囲碁界においては、井山七冠が今回タイトルを奪った伊田八段を始め、一力遼七段、村川大介八段、余正麒七段など、井山七冠以外の若手勢の頑張りも重要になってきます。 彼らは残念ながら世界的に見ればまだまだ、国内でも「これから頑張ってください」でしょう。 たとえ井山七冠がいなくても、彼らが国内でタイトルをコンスタントに取れただろうか、と言われるとちょっと微妙に思えます。 現に成果を出していることは評価するのですが。 とはいえ、日本棋士が世界戦で反撃していくならば、「育てていくべき反撃の芽」であることは間違いないでしょう。 将棋の羽生善治名人は、実際に七冠だったのは167日でしたが、それでも今日まで20年間第一人者の地位を退きません。 そして、羽生名人目指して研鑽を積み、トップに列する力を得た若手棋士たちをタイトル戦挑戦手合でボロ負けさせる。 時には優勢を奪われても最後は粘り負けさせる。 そうしてことごとく壁となってその挑戦の多くを跳ね返しています。 その結果、今ネット上で「鬼畜眼鏡」という綽名が流行っています。本人的に嬉しい綽名かはわかりませんが・・・ 羽生名人は、話している様子を見ると例えば加藤一二三九段や趙治勲九段のような「面白い人」というわけではありません。 羽生名人が解説している様子を見ていても、他の棋士と比べて特別わかりやすい、特別凄いという印象を私は持っていませんし、おそらく多数意見ではないかと思います。 そんな羽生名人が七冠達成から二〇年を経て今なお人気を保っている秘密はもちろん多々あるでしょうが、その一つがこの若手への壁という点なのではないか?と思っています。 井山七冠が今後門下生を取ったり若手育成にどのように対応するかはわかりません。 今後の本人の私生活の具合もあることでしょう。 ただ、井山七冠には若手への壁として立ちはだかって欲しい。 やっとの思いで七冠に風穴を空ける立場に名乗りを上げた棋士をメッタメタに倒して、「さあ掛かってこいよ」「囲碁は最後に井山が勝つゲーム」くらいの姿を見せてほしい。 そして、井山七冠に並ぶ・あるいは越えることができた棋士がいたら、もうそこは世界のトップと全く互角という世界になっている。 私が個人的に今後の井山七冠に期待していることは、そういった所になります。 もしかしたら、井山七冠が見出す七冠としてのあり方は、また違うものかもしれません。 あくまでも一ファンの個人的な希望になります。 ただ、もし井山七冠がこの記事を読むことがあったならば、こんなことを期待してる人もいるんだな、くらいに思ってもらえればと思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2016年04月20日 19時21分31秒
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