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碁法の谷の庵にて

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2022年05月18日
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カテゴリ:囲碁~自分のこと
アマ名人での優勝は初めてです。
 アマ本因坊・アマ竜星もとった経験がありますので、もちろん同時などではないですがアマチュア三大棋戦の県タイトルを全て経験したことになります。

 私のいる県は「頭の抜けた選手」は今の所いませんが、10人近い集団が星を入れ合う激戦が繰り広げられている状態で、代表選手がなかなか一定しません。
 私もその星を入れ合う集団の一角という所です。
 突然転勤とかで強豪が乱入してくることも何度もあり(というか私自身もそれに近い所がある)、なかなか飽きない環境であると言えるでしょう。


 名人戦は6年前、決勝で終盤の小ヨセで1目半ひっくり返されて終わり、その後も出場が飛び飛びになりがちだったり、コロナで大会自体が開催されないと言う問題もありました。
 私自身も大会に出ることにはあまり頑張らなくなっており、「予定が空いている日に朝目を覚ましたときに出るかどうか決める」位の気分でしたが、名人戦はなんとなく気合いが乗っていたので、「朝目を覚ましたときに決める」ではあるものの多分出るだろうと思って実際にそうなりました。


 また、知り合いの囲碁教室の縁(こちらです)でプロと打って潰されたのですが、自分でも信じられないくらい攻撃的な碁を打って(それも戦闘的で有名なプロ相手に)非常に楽しい経験をしました。
 そこで、今回は「もう楽しくいこう!」ということで読みの成立する範囲で楽しい手を優先して打つことにしました。

 しかし組み合わせは2回戦以降全員県代表複数回経験者、多分自分のいた山が一番の激戦区の上、1局多く打たなければならないという結構厳しい状態。
 羽生さんのNHK杯かよ…とボヤいてしまいました。まさか優勝するところまで一致するとは…


 対局内容や形勢判断は、局後の検討が会場の時間制限に押されてほとんどできなかったので、別の場所で検討できた決勝戦以外では私が対局中に考えていたことと、記憶の範囲の再現でAI(KatagoKata1_b40s1003)を前提とさせていただきます。
全く違っていても責任持てませんのであしからず。


 1局目。
 まあ勝ちました。ちょっと危ないかなぁと思ったのですが、突然種石が取れてしまったので、ほぼ急転直下で終わりました。

 2局目。
 実績的にはそこまでの差はない(若干相手の方が上か)はずなのですが、相性は最悪で実質天敵です。今大会で1番苦戦したのもこの碁だったのではないでしょうか。
 中盤派手なシボリが決まってそんなに悪くないかな?と思ったのですが、よく見ると気分がいいだけで得るものの少ないシボリで、やはり今度も苦杯をなめることになりそうです。
 が、強引に攻めたところ、取れなかったものの相手の地を破ることに成功し、一気に形勢が分からなくなりました。
 それでも相手がよかったようで一気に相手が勝負を決めに来たのですが、これが彼らしくないまさかの大誤算。「なんかしのげそう」という根拠のない自信が沸き起こり、反撃で儲けた上に危険だった大石が根拠のない自信の通りきわどくしのいで形勢逆転。
 まさかの勝利となりました。


 3回戦。昨年の県名人。元院生の強豪実力者です。
 先日某所で期待の新鋭にボロ負けを喫したのを見られて低く評価されていたようですが、研究会での直接対局で勝って見直してもらいました。(しかし彼自身はその期待の新鋭に普通に勝ったので、何で私があんなに負けたのか未だに納得できていないらしい…)
 どうせなら本番でなめてかかってくれればよかったのに…

 ひょいとノゾキを決めてきたところを反撃。部分的には地でも厚みでも損(多分)ですが、先手を奪って攻めに回り、厚みに石を追い込んで地をつかなくさせつつ自分の地をつける方向にもちこみました。
 相手もこちらの地を削減に来たのですがこの日の「楽しく打つ」のモットーに従い削減にきた石に噛みついてまたそこから激戦開始。
 最終的には振り替わりのような感じでどちらが得をしたかはよく分かりませんでしたが、結果から逆算すればここで勝勢が確定したようです。
 後で2局目の相手から良さそうだったのにあんな振り替わりするのか・・・と言われましたが、別に計算ができていたわけではなく楽しく打ってたらそうなっただけです。


 準決勝。県本因坊・阿含杯勝利経験者の強豪。数年前脳出血を起こして倒れ、危ぶまれましたが、以前と変わらぬ実力を保ちなおも代表常連に居座っています。
 私は彼に何故か相性がいいのですが、そうは言っても普通に強敵です。

 序盤、早くも方針がまずくダメそうで、中盤の入り辺りで早くも勝負手気味に仕掛けます。
 これに相手が受けを誤り、強引に大石を分断するとなんと相手の石に目がありません。
 しかし、こちらも8子がかなり微妙なシチョウ当たりでギリギリしのいでいるというなかなか怖い状態であり、取りかけには行かないで撤退というのも普段ならやったかも知れません。

 が、ここは例の「楽しく打つ」モットーで、取りかけに行きました。(AIは99%勝利と読んでおり、取りかけ自体は最善だったようです)
 こういう所からの手作りが絶品な相手なので油断できませんが、軒並み最強手で応対して全部潰すという私らしくない対応で勝ちきりました。



 5局目。うちの県どころか隣県でもタイトルを取っています。
 私とさほどの実力差はないと思われるものの個人的に相性はよかったのですが、先日別の機会に対局した際に敗れて賞金1万円を取られてしまい、そろそろ揺り戻しが気になるところです。

 相手が黒なのですが、彼の得意布石は目外しから5の5シマリ&高目の布石(下図参照)で、実際私にも打ってきました。(下図は5手目まで)





 彼がこの形を愛用しているのは知っていたので、前の対局に先立ってAI対策を読んでもらっていたのですが、AIの推奨する対策はまさかの星にノゾキ(下図A)。
 Cなどとつける味がなくなってしまうのでいい手に思えず、結局採用は見送って、後で普通にBから打ちましたが…

 辺の競り合いでどうも相手がポイントを上げているようで、これはダメそうです。
 石音高く中央のぽん抜きに回られて、ああこりゃダメかなと思ったものです。
 相手も黒いいと思っていたようです。ですよねー。

 大会終了後、検討しつつAIに読ませるとぽん抜きの時点でこちらの勝率98%超、盤面でもかなり勝ってます。
 どうも途中で相手が決め損なった瞬間に黒に傾きかけていた形勢がぐいっとこっちに寄っていたようです。
 対局中一応相手がキメ損なってちょっと安心したかな、と感じたのは確かだったですが、まさか形勢がこちら良しになっていたとは…

 とはいえ、何せ主観的には優勢意識がない上、難しいところに打ち込まれて人間では勝負は分かりません。

 しかし、「もっと年寄りをいたわれ」などという情けないぼやき(前にアマ竜星の全国に出たとき、もう私の年齢は上から数えた方が早かったです)を言いつつも「楽しく打つ」モットーを発動。また自分とは思えない強手で打ち込みを迎撃します。
 結果として相手が石をかなりもぎ取るコースが見えました。最善かどうか、どちらが得をしたかはよく分かりませんが、このコースの場合締め付けて地が固まる上に背後の散らばった石が取り込めて局面が決まり、決まった局面は流石に白優勢と私にも読めるものでした。
 もっと複雑なコースもありました(AIによればそれでも勝ってはいますが、差は大分詰まる上に何が起きるか分からさそうな碁形)が、相手は吸い寄せられるかのように石をもぎ取って碁型が決まるコースへ…

と言うわけで逃げ切り、優勝となりました。


 県代表経験者4人なぎ倒して代表取ったんだから、とりあえずくじ運の妙とか言われないで済む程度には頑張れたかなと思います。




 さて、私は実は県アマ竜星を今持っています。
 今年もコロナが原因で開かれないそうなので、1回優勝しただけで3年以上アマ竜星に居座っているという、なんとも効率のいい状態になっています。
 つまり、次にアマ本因坊を取るといささか変則的ながら県3冠になることができます。

 今更棋戦で暴れることなど望んではいないつもりでしたが、ここまで来ると欲が出てくるもので、何としてもアマ本を取って県3冠を目指します…
 と言いたいところなのですが、県のアマ本因坊予選はアマ名人戦全国2日目と被ってしまいます。
 いやまあ、初日で敗れれば(その公算が非常に高い)出られるのですが、そうなったとして2日目も対局を続ける体力が私にあるかと言えばすこぶる疑問で…

 全国大会も、とにかく楽しい手を打ってこようかなと思います。





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最終更新日  2022年05月18日 23時30分07秒
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