キはキンギョのキ - 8 ★ キンギョ姫は銀河をスルリ
Suca Suca iMonolith-----------------------------------■ 空のもう半分 ~ 池田モノリス ■第4章 キはキンギョのキ(8) キンギョ姫は銀河をスルリ-----------------------------------(8-1) ギンガも海に浮かぶ夏「お~い。モノリス~っ」 コトリスが空の上から墜落してきた。 そうだ、J-スチールの帰り、日比谷公園でくるくる回った後 「ずうっと空を飛んでたの?」 「うん、もうすっかり暗くなってしまって ビルの明かりが、まるで銀河みたいに流れているんだよ」 あ、本当に。 空も海も、深くて青い夜の色に溶けたみたいで 見分けがつかなくなってしまった。 「じゃアリ君、アリガトー。次のライブ、楽しみにしてるからね」 ネコ達は夜の集会に戻り、幼稚園児達は ママの説得も振り切って砂場の穴掘り作業を再開。 僕とサラちゃん、そして肩の上のコトリスは 外堀海岸通りの、夜の海辺で一休み。 「根岸君もステージでデスメタル野郎をやりながら、 心の中の大分県じゃ、ずっと牛の世話していたんだよね」 クラウザーさんはトラクターにまたがって 今も僕の頭の中をブルンブルン耕している。 「イナカかぁ。ねぇ、アタシの生まれた池とかさ、 どこにあるのかな?」 サラちゃんは、ベースギターのネックを 釣り竿になんかしちゃダメ。 「サラちゃん、どこの出身だっけ?」 「わかんない。でも、甲子園球場の近くに住んでたことはあるよ。 もう、ずっと昔だけど…」 「へぇ~。僕も高校生の時、住んでた。生まれたのは長崎だけど。 サラちゃん、高校の後輩だったりね」 「もしかして、アタシ。山奥の古い池とかじゃなくて、意外と… この海のどこかで生まれてたりして?」 「カッパだってキンギョだってアリだって… 本当はこの青い海から地上に墜落して来たのかもしれないよ。 そうだ、サラちゃんの生まれた池だって、 海から地上へ抜け落ちるトンネルだったんじゃない?」 って、僕の話なんか頭のおサラでハネ返されて 「ねぇねぇ、モノリスさん。海って、どうして青いの?」 サラちゃんの、こども電話相談室。 「そ、それはね…、あ、サラちゃん。太陽がいっぱい…て知ってる?」 「知らない!」 「冒険者たち…とかは?」 「聞いたことない!」 「キュウリは?」 「大好き!」 「ずっとずうっと昔、僕が中学生の頃の話なんだけど、 海や風がいっぱいつまったヨーロッパの映画があって。 僕はそれまで、そんなに青い海があるなんて 知らなかったから、本当に驚いたんだ」 「江ノ島だって、オーイソだって青いし」 「ほ、本当は…どこだって、お、同じ色なんだけど。 多分ね、世界の中には、中学生の時にしか見ることのできない 特別な青があってさ、たまたま映画の中で、 僕はそんな青に出会った…っていうか。 あんな、この世のもとは思えない青をスクリーンに描き出す。 それが表現ていうコトなのかなぁ…て、その時思ったんだ」 「表現とか、サラ的には良く分かんないよ。 だって海って、表現しなくても、もともと青だし」 「そ、そうなんだけどね。何かのハズミでさ、 真っ青な風みたいな時間が見えた気がしたんだよね、その時は」 「カン違いじゃない?」 「僕は先月、モナコのパンフ作ったのだけれど、 あの宝石みたいな国の海や風の青い色を 本当に表わせたのかなぁ。全然自信がないんだ」 「言葉とか絵とか、そういうのって、何だかイジイジしてて。 モノリスさん、ホントじれったいもん。 え~いってさ、地中海に飛び込めば、それでいいじゃん!」 あ、サラちゃん。飛び込んじゃダメ、 そこは年中さん専用のプールだから。 僕は、サラちゃんの足を掴んで何とか夏を守る。 (8-2) キンギョ、冷えてます。「WOW!」 ずるずる引きづられながら、おサラがキラリ。 不屈のサラちゃんは、何か発見したみたい。 「手作り時計のアント社」の、隣の 「アライグマのシネマ館」の、その又隣に キンギョ、冷えてます!のネオンがほんのり。 「へぇ、キンギョ倶楽部だって」 外堀通り海岸も、もうオシャレなスポットなんだ。 「ねぇ、ねぇ、モノリスさん。キンギョすくいやりた~い!」 「よし、冷えたとこ2、3匹すくっていくか」 大きなキンギョ鉢みたいなガラス張りのビル。 入ってすぐの1階フロアに大きな池みたいな水槽があって、 それはどうやら海と繋がっているようだ。 「うわぁ~。キンギョ、キンギョ、キンギョオォ~っ!」 サラちゃんは、キュウリとキンギョには目がない。 あ、スプーンじゃなくて、 キンギョすくいのアミを使うんだから。 ♪ 赤いべべ着た ♪ かわいい金魚 ♪ おめめをさませば ♪ ごちそうするぞ (*「金魚の昼寝」作詞・鹿島鳴秋) サラちゃんは… ちょっと音程に問題あるけど大声で歌いながら スプーンをしっかり握って 水槽の回りをバタバタ走り回っている。 「おいで~。キンギョすくいやるよ」 あ、塩とか醤油とか、いらないってば。 「サラ、ポニョ大好きっ!」 違うって、少し。 サラちゃんは不器用な手つきで くねくね揺れるキンギョの下にそっとアミをしのばせて 千年ほどじっと息を止めて待つ。 「もう…ち、ち、窒息しちゃう…」 「よしっ。今だよ!」 (8-1) キンギョ姫は銀河をスルリだけど、するり。 アミは、星くずみたいに隙間だらけ。 キンギョが赤い流れ星になって、くぐり抜ける。 「わぁ、きれい。キンギョ花火」 サラちゃんが、また大声で歌い出す。 ♪ 赤い金魚は ♪ あぶくを一つ ♪ 昼寝うとうと ♪ 夢からさめた (*「金魚の昼寝」作詞・鹿島鳴秋) 「キンギョって、泳ぎながら眠ってるのかな?」 僕は前から気になっていたけど、 「眠いと溶けちゃうの?」 サラちゃんも少し不思議に思っているみたい。 水槽の中をゆらゆら泳ぐキンギョ達も ガラス越しに見える空も海も、 青い夜色に混じって溶けて もう見分けがつかなくなってしまった。 「海も、空も、ヘビメタも、キンギョも、 みんな全然違うのに 何で、こうやっていっしょにいるんだろ?」 僕は不思議で仕方がない。 「夜だから」 サラちゃんは、水槽に頭を突っ込んで アミで水を引っかき回している。 「金魚が眠くて溶けちゃうと、それが伝染して 海も夜も透明になっちゃっうの」 サラちゃんの頭のおサラも、水に浮かぶお月様みたい。 「僕もやりたい!」 ずう~っと、僕の肩の上におとなしくとまっていた コトリスが僕のキンギョすくいのアミを取る。 「あ、砂時計を持ったままじゃダメだって!」 キンギョ姫は、やっぱりスルリ。 一緒に、コトリスもクルリ。 あ、まずいよ。砂時計が逆流しちゃう! 僕も、砂も・・サラサラ、 こぼれていくってば。 ================================================================= ■ 空のもう半分 ■~ 第4章★キはキンギョのキ★は、この(8-3)キンギョ姫は銀河をスルリで休憩です。 読み返してみると、いろいろヘンな部分も多く本人も納得していないのですが、 とにかく先に進まなきゃ。 で、この続きは2つの別の宇宙につながります。 ----------------------------------------------------------------- 一つは時間的にそのままリアルタイムの現在、そして未来の物語 ■ 空のもう半分 ■~第5章★神様は電気ギターの夢を見るか★なんと!モノリスは惑星を彷徨い、削除され、レプリカントM2として再生し、 Rock'n Lonelyなギンガを果てしなく漂うのです。 ----------------------------------------------------------------- もう一つは逆に過去へ。20歳、早稲田の夏にタイムスリップする ■ 空のもう半分 ■~ 第2章★スカスカでおセンチな三日月★これは60年代後半から70年代中頃。ビートルズやらフォークやらGSが全部一緒に来た!西宮の高校時代を経て東京へ。中野区の木造四畳半のアパートや早大キャンパス、そしてライブハウスやコンサート会場などを舞台にしたロックと銀河とウサギ?の、夢と崩壊の物語。ほぼノンフィクションの予定?です。あと…コトリスに出会った頃のリアルファンタジーも、実はケータイ小説・第1章★放課後銀河クラブ★に、ちょっと書いていていますが(汗!ほとんど放置状態) -------------------------------------------------------<< 第4章の1つ前へ << 第4章の始まりへ第5章の始まりへ >>第2章の始まりへ >>-------------------------------------------------------★総目次★はホーム(トップページ)に-------------------------------------------------------