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『戦場でワルツを』2008年イスラエル映画 監督・脚本・出演アリ・フォルマン
アニメーション ヨニ・グッドマン 音楽マックス・リヒター 『戦場でワルツを』は第66回ゴールデン・グローブ賞の外国語映画賞を受賞したドキュメンタリー・アニメーション映画です。 そのアニメーション技術のベースの一つは「Adobe Flash」という世界中の人々がPC上で絵を描いたり、アニメーションを作るのに使っているソフトです。 愚息も中高でAdobeでお絵描き遊びしてました。 エンドクレジットにAdobeのマークが出て来た時には家族で「あれ使っているの!」と思わず叫んでしまったくらいポピュラーなものです。 冒頭の6匹の狂ったように走り、吠える犬が登場する悪夢のシーンはとても迫力があります。 予備役を終えたばかりのフォルマン監督は、友人から6匹の犬の悪夢を見る話を聞かされます。 1982年に19歳だった監督も兵役に従事したのですが、当時の事が全く思い出せません。 友人の心理学者のアドバイスから、友人・知人の兵役体験のインタビューを行う事にしました。 共同制作者の一人は戦車隊の隊長でしたが友軍が逃げたために戦車が孤立。 どうにかして戦車から離れ、夜を待って海を泳いで前線基地に戻りますが唯一の生き残りだと知らされます。 上官からは何も言われませんでしたが「今でも生き残った事に後ろめたさを感じる」と話しました。 この話は漫画家水木しげる氏の戦争体験ととても良く似ていますが違う部分があります。 水木氏は戻ってから「なぜ一緒に死ななかったんだ」と上官からビンタされ、生き残れて本当に良かったと漫画に描いておられます。 ある友人は友軍兵の遺体収容に当たった事を話します。 軍用車輌にたくさんの血まみれの遺体と生きているのは運転者だけ、というのはアニメーションでもたまらない情景です。 フォルマン監督は、1982年のベイルート包囲作戦に参加していた事を思い出します。 イスラエルの著名なジャーナリストのロン・ベン=イシャイにインタビューします。 この辺りからアニメーションと見ている私たち夫婦の記憶がごちゃ混ぜになってきます。 夫は「当時のベイルート包囲の市街戦の映像は見た事があるようだ」と言いますし、私は第2次中東戦争の報道で同じような映像を見た事があるように思えてきます。 2人の感想は妙に一致して「周囲のビルから狙い撃ちされる市街戦で道路を歩く時はとてもまっすぐ立っていられるものではないだろう。映画の中の堂々と歩くイシャイは記憶の美化に違いない」ですが。 イシャイと上官へのインタビューで、フォルマンはサブラ・シャティーラの虐殺直後の市内に入った事を思い出します。 イスラエル軍が虐殺を黙認した事は国際的に非難されて国防大臣が辞任したそうです。 この辺りのイスラエル軍の描写が美化し過ぎたという批判もあるそうです。 映画の最後は虐殺を報道するニュース映像で終わり、監督の虐殺後の記憶が戻ったかどうかは明らかにされていません。 私は遺体収容の体験談が細かく映像化されているのに注目しています。 昨年起こった大変な出来事のその後について聞かされてきた事から推測すると、監督の記憶が無いのはごく自然な反応なのかもしれません。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2012.07.30 10:45:40
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