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『選挙』2005年 日本・アメリカ映画 監督想田和弘
『選挙』は、高校同窓生の山内和彦氏が2005年9月の川崎市議会補欠選挙に自民党公認の候補として立候補して選挙活動から当選するまで、を追ったドキュメンタリー映画です。 監督自らカメラを背負って選挙事務所や後援会行事などを撮影しており、ナレーション・音楽は一切ありません。 それなのにちゃんと物語として見られるのは実に立派なものです。 当時40歳の山内氏は自民党の公募の面接に合格していましたが、たまたま候補予定者がドタキャンしたために声が掛かりました。 切手コイン業を営んでいた山内氏は、縁もゆかりも無い川崎市宮前区に住居を移して選挙活動に備えます。 2代続く愛媛の特定郵便局の次男である彼の子供の頃の夢は「東大を出て政治家になる事」でして、しっかり東大文三卒です。 共働きの夫人も休みを取ってしばし選挙活動に専念します。 自民党の選挙参謀は夫妻にいわゆる「どぶ板選挙」を指南します。 市議会の議席数が民主党と拮抗しており、是非とも議席が欲しいからです。 子供が欲しいカップルなので、「子育て」がキャッチフレーズです。 道路に誰も居なくても選挙カーから名前を連呼、朝晩の駅前では人が居なければケンタッキー・フライドチキンのカーネル・サンダース人形に挨拶します。 運動会・お祭りにも参加して名前と顔を覚えてもらいます。 川崎JAの会合に出席すると「あなたはここの地域のために何をしてくれるの」と問われますが、山内氏がそれに答える様子はなぜかカットされています。 選挙活動の中盤、さすがの山内氏も人と会い続けるのに疲れてマイカーの中でぼっと鉄道マニア雑誌を眺めたりします。参謀達は「気合いが足りない」とカメラに向かって文句を言います。 夫人は事務所で「仕事を辞めて夫に尽くせと言われた」と帰りの車の中で文句を言います。 夫が当選しても市会議員を続けて行く事には強い懸念を感じています。 任期2年で次の選挙を迎える事が理由なのかもしれません。 日曜のあずみ野駅前に、当時の小泉首相が参議院議員補欠選挙の立候補者川口順子氏の応援に立ち寄る事が決まりました。 当日は石原伸晃氏や選挙区の衆院議員、市会議員らも応援に駆けつけます。 郵政民営化選挙後の小泉首相が川口氏と山内氏の手を持ち上げて紹介します。 これがきっかけで市民の認知度はいっきに上がり、山内氏は当選を果たします。 映画はここまでですが、どういうわけか私はその後を知っています。 山内氏は次の選挙は無所属で戦わなければならないので立候補を断念しました。 2011年の川崎市議選に無所属として立候補しましたが落選、現在は専ら主夫業が中心で活動されているようです。 『選挙』の後の想田氏の作品は、岡山県の精神科診療所の患者のインタビュー集『精神』でして、こちらは夫がしっかり見ました。 誘われたのに一緒に行かなかった私はとても後悔しています。DVD買おうかなあ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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