カテゴリ:日常生活から
愚息から言われて、日経10月15日夕刊に掲載された、オペラ『ピーター・グライムズ』の批評を読んでみました。
筑波大学教授である江藤光紀氏によるものです。 江藤氏は「因習を守る集団と個人との対立」がオペラの主題であるとしておられます。 ベンジャミン・ブリテンが同性愛者である事だけに注目するとそういう事になりそうです。 冒頭の死因審問でのやりとりから、わざわざ荒れ模様の海で少年の命を危険にさらしながら小舟で漁をする主人公のやり方は批判の対象となっている事が提示されます。 そして審問官は一度このような事を引き起こすと悪評となって村人から仕事の手助けをして貰えない可能性がある事も警告します。 それでもピーターは教師エレンの助けを得て孤児院から孤児を引き取りますが、孤児が到着した途端に漁に出かけると追い立てます。 エレンが日曜だけは休ませてと懇願しても聞き入れません。 ピーターが村人や徒弟に向かって自分の気持ちや夢を歌い上げる場面はありますが、徒弟役の少年は転落する時の悲鳴だけ声を上げます。 エレンは行方不明になった少年のための碇の刺繍を施したセーターを抱えて自分の過ちに気づいた苦悩を座り込んで歌うばかりです。 また村の酒場の女主人の2人の姪は、男の都合によってちやほやされたり蔑まれたりするのを嘆く二重唱を歌います。 私は働く事の原罪を描いたオペラだと考えて鑑賞したので、そのような取り上げられ方をされていないのは寂しいです。 愛や恋ばかりが芸術の対象と考える傾向は、私には偏りがあるように見えますが。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2012.10.17 14:18:10
コメント(0) | コメントを書く
[日常生活から] カテゴリの最新記事
|
|