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カテゴリ:物語り
これから、この土地のこと、生き物や人々との関わりなど思い出深いことを書き続けていきます。
「でどうでした?」 知り合いの弁護士が訊く。
「古い、汚いそんでもって、言い値が高いんじゃないっすか?」 「そんなもんでっしょ」 彼は最初っから予想してたんだ。
家の販売シーズンはもう終わりに近い。きれいな家、割安な家、便利なところにある家は競争率も高いし、クリスマス休暇そこそこに商談が成立して今はもう引越しの段階のはずだ。
そこへいくとあのテリーおじさんの家は完全に出遅れ、売れ残りのがけっぷちってわけだ。 「あわてないほうがいいですよ」
弁護士の彼が言う。
「そうねえ、でもあちこち見て歩いて、あそこだけは場所が気に入ったんですがねー」 「まだ出ますよ、待ってれば」 彼はなかなかいいひとだ、クライアントのこと心配もしてくれてる。
でも以前に言われた言葉も思い出すのだ。 「探してみているだけで一年経っても家が決められない人もいますからねー」
「じゃあねこうしましょ、ペストコントロールの人雇って、物件の検査証作らせましょ。それで最終判断されたらどうですか?」
「どうするんです?」 「建物のどこかがシロアリに食われてないか、基礎はしっかりしてるか公式の証明書を作らせるってわけですよ」 「ほう、それはいい」 「それでもって、私もそのときに付き合って、家の中見てチェックしてあげましょう。屋根裏だってちゃんと壊れてないか誰かが見ておかなくちゃいけないでしょ?」
「それで、あたりの平均的な値段を参考にして交渉したらいいじゃないですか」 それで結局、弁護士の彼に頼んでこの物件を買うかどうかの最終チェックをすることになったのだった。
んじゃがあの日、別れ際にテリーに言われた言葉がずしんと利いている。
「おれたちが自分で契約したら、不動産業者に払う手数料分浮くんで、1万ドル分安くしときますで」 テリー親父もなかなかの玉だ。
「ウーン、騙されてるんか?うまい話か?わからん」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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