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三田のいのしし 見て歩き日記

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2013年07月17日
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カテゴリ:読書

この欄で書きたかった主目的である言葉と語源について、宮城谷さんが小説の中

で活用しようとされている言葉への「こだわり」から先きにご紹介したい。

講談社刊 「花の歳月」末尾165 ペ-ジから抜粋

・・・ ・・・

「たとえば「みる」を漢字に直す場合、すくなくとも十三通りある。

「見る」「相る」「看る」「視る」「察る」「覧る」「「瞰る」「瞥る」「瞻る」「覲る」「観る」

「矚る」「鑑る」

それらを全部つかったというおぼえはないが、三分の二ほどはなるべく原義にそっ

てつかった。

とくにおもしろいのは、「看る」である。これは目の上に手をかざしてみるわけである

から、中国の古代の人もおなじような恰好をしったのだとわかって、人間の動作の

変わりのなさを教えてくれている。

漢字は、中国の古代の人々を鑑(み)させてくれる、小さなふしぎな窓なのである。

・・・ ・・・

以上で抜粋を終えます。

今回読ませてもらった小説「花の歳月」においても、このような言葉の原義にそって

表現されていると思われます。

私も、たぶん宮城谷さんの初期の作品である「王家の風日」で、この言葉の使い分

けに驚き、戸惑いながら中国の古代の雰囲気を読み取る努力をした記憶がある。

今このブログでも出合いは、人間の場合は「出会い」、野草などとのであいは「出合

い」と使い分ける習慣になったのも宮城谷さんの小説からだったように思う。

一知半解だから誤解かもしれないが・・・



さて、本題に戻って、「花の歳月」の読後感ですが:

宮城谷さんのこの作品は、前漢の第三代皇帝文帝の皇后猗房(いぼう)が、貧しい

生まれでありながら、数奇な運命というか皇后にまで登り詰めたこと。

その子が四代目の皇帝になることが出来たので猗房(いぼう)さんのご兄弟なども

高い位につき、維持できたらしいことが記された小説ですが宮城谷さんの作品の

中では比較的短い作品だと思われます。

皇后の猗房さんの周りのことに絞り込んで書かれているので、壮大な歴史小説を

想定される方からすれば、場違いな作品かもしれません。

ともかく少なくとも古代の中国は、敵国の人間であっても役に立つと思えば、その国

のリ-ダ―にして一国の運命を預けた例が数えきれないほどある国なので、皇后

の猗房さんの場合も違和感はあまりなかったらしい。

この小説に関しては、皇后とは言え女性の事を書いていて珍しいと思った。

宮城谷さんの小説は、「王家の風日」や「天空の舟」など今から3,000年ほど前の

商(殷)の時代や周の時代などの歴史、戦争などが独特の筆致で描かれております

中国の約4000年あまりの歴史の中で、前漢は今から約2100年ぐらい前の王朝

であり、我々がその理解は大変難しいが、初代皇帝劉邦のお子さん方は二代目

皇帝を除き、地方の王様になっていた中で、5番目か6番目のお子さんであり代国と

言う辺境の王様に封じらていた。

その方が、2代目がなくなったからと言って三代目の皇帝に選ばれた経緯を書くだ

けでも一編の小説ができるでしょうが、この小説は皇后の「猗房」(いぼう)さんと

そのご家族の物語なのでその辺のものぐささは推察しながら読むことになります。

冒頭のご紹介させて頂いた「みる」は語源から言えば、すくなくとも十三通りもある

事などを念頭に置かれてこの小説「花の歳月」や「王家の風日」「天空の舟」など

機会があったら読むことをお勧めします。






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最終更新日  2013年07月18日 06時58分42秒
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