非実録、任侠清掃伝!?
前回の日記は、客観性に?が付くもののドキュメントだったわけで..... これから書くモノのは、ゴミ探し中に思い描いた嘘八百な架空の出来事で、 んなこと考えてるからゴミが見つからないんだ!的な話です。 メジロが忙しくサクラの花を行き来している午前8時45分。 惰眠を貪る一般住民には届かない程度の控え目な怒鳴り声で、 ひっそりと戦いの火蓋は切って落とされた..... 「おは~っす!皆そろってるな! おい石mug!何もたもたしてるんだ。 さっさと特攻服、イエロージャケットを着ろ!」 「皆も知っての通り、おかみからのオタッシでこれから河原のゴミ拾いだ! 他の自治会系組織もいくつも参加してくる! いいか、次郎長住宅管理組の実力を世間に認めさせるいい機会だ、 ヌカるんじゃねぇゾ!」 『ぉぉッ.....』 「声が小さいッ!」 『おおッ!』 そんな朝礼のせいで出遅れたのか、 他の組織がフライング気味だったのかは定かではないが、 現場に行ってみると、既に戦いは始まっていて..... 『大政小ぅ~ファイト!オー!』の掛け声と同時にまず飛び出したのが 若さで他を圧倒する地元の少年野球チームのメンバー。 毎週この河原のグランドで練習してるので、地の利に長けています。 「ヘイ!ショートバック!」 「オーライオーライ!」って掛け声の連携も鮮やかに キビキビとゴミを拾っていきます。 次にのっそりと動き出したのは仁吉自治会の面々。 平均年齢で圧勝しているだけに、とにかく朝が得意。 未確認情報ながら、夜明けとともに三々五々集まりだしたと言います。 少年野球チームとは逆方向にノソノソ歩き始めましたが、 枯れ枝から落ち葉から何でも拾って歩くという 識別能力に問題有り!っていう弱点をさらけ出しています。 その後、黒駒自治会、大五郎自治会、鬼吉管理組、仙右ェ門管理組、 流れ者連合、一匹狼と次々に河原に散って行き、 いよいよ我が次郎長住宅管理組の出番です☆ 可燃、不燃そろぞれのゴミ袋とトングっぽいゴミをつまむモノ、 そして軍手をおかみの手下らしき人に手渡され、 いざ、河原に出向いてみたところ..... 先行した組織にあらかた拾われてしまっていて、 ゴミはほとんど落ちていません。 『アレレ?ゴミなんてねえじゃん!しょうがねぇなぁ、 どっかの他の組織が集めたゴミをパクってくるか!?』 「ヤバいよヤバいよ。こんなんじゃ親分に合わせる顔がないョ! こっそり帰ってうちのゴミ持って来ようかなぁ.....」 なんて声が聞こえてくるありさまで、 なかなかゴミ袋が膨らんでいきません。 そうこうするうちに、先行していた黒駒の一派が 掘り出されたらしい泥だらけの折りたたみ椅子を手に 意気揚々と引き返してくるじゃないですか! 「おぅ、お前ぇは次郎長んとこのもんじゃねぇか!? 随分と軽そうな袋をぶら下げてやがるな。 半端モンにはそれ以上は荷が重い!ってか?アヒャヒャ.....」 『これはこれは黒駒の。流石ですなぁ。 予めゴミを埋めておくとは考えたもんだ! うちは真っ当にゴミを拾ってるもんでね。』 「ケッ!空袋をぶら下げた半端モンが腹いせに作り話かよ! しょうがねぇなぁ.....」 『な、なんだとぅ!てめぇ、やろうっていうのか!』 「おーコワイコワイ。石mugってバカで気短かなヤツがいるって聞いたけど、 場所柄もわきまえないホンモノのバカじゃねぇか。アヒャヒャ.....」 いかに血の気の多い石mugでも、 おかみが主催するイベントで騒ぎを起こしたら 次郎長親分にどんだけ迷惑をかけるかくらいのことは解ります。 奥歯をギリギリさせながらも、どうにかやり過ごしたところで..... 「よう兄弟!首尾はどうだい?」 って声をかけてきたのは鬼吉です。 『どうもこうもねぇヨ。ゴミなんかねぇじゃないか!』 「そんなこたぁねぇだろ?こうしてかがんでジトーっと見てれば..... ほら、ちゃんとあるじゃねぇか!」 『何だぁ!?5cm足らずのコンビニ袋の破片を拾ったくらいで、 得意顔してんしゃねぇヨ!』 「コノヤロー、人が親切に教えてやってるつーのに..... もう知ねぇ!勝手にしな!」 『あぁ、勝手にして折りたたみ椅子以上の大物を見つけてやらぁ!』 とは言ったものの、歩いても歩いても ゴミ袋はペラペラのヒラヒラのままで いっこうに膨らんでいきません。 「失礼しやす。もしや....そのイエロージャケット..... 次郎長親分のお身内の方では?」 『お、おうよ!』 「あ、やっぱりそうでしたか! もしよかったら、わずかですがあっしが集めたこの不燃ゴミ、 もらってやっちゃいただけないでしょうか?。」 『えっ、兄さん、あんた、どこのもんだい?』 「いえ、あっしは通りすがりのしがねえもんでして..... 参加してみたものの、先を急ぎますもんで、 江戸と逆方向にある集積所に戻るが惜しくなりまして.....」 『あぁ、江戸に向かってなさるんじゃ 川上の集積所に戻るのはメンドいわなぁ..... ようがす。あっしがお預かりいたしましょう! で、兄さん江戸っ子かい!』 「へい。お察しの通りで.....」 『おっ、やっぱりそうかい。いいねぇ、江戸っ子はキップが良くて......』 「恐れ入ります。」 『江戸っ子だってねぇ、スシ食いねぇ!....って言いてぇところだけど こんなの河原のことだから、持ち合わせちゃねぇ..... 悪いな。道中の無事を祈っとくから、良い旅を続けておくんねぇ!』 「ありがとうございやす!」 そんなあれこれがあったものの、 石mug自身には何の成果もないまま、終了の時間が迫ってきて、 ほとんど空のゴミ袋をカサカサさせながら トボトボと本部に戻っていきますと..... 「おい石mug!なんだその頼りねぇ袋は!」 『親分!面目ねぇ!ゴミのヤツら、 オイラにビビって逃げ出したみてぇで.....』 「バカも休み休み言いやがれ!そんな話は聞いたことねぇゾ」 「お前はホントにバカだなぁ..... いいか、なければ作ればいいだろうが! お前のポケットには何が入ってる?」 『はぁ?小銭とタバコくらいしかありませんが.....』 「ほぅら、あるじゃねぇか!とっととあそこのニセアカシヤの陰に行って 1服.....いや5-6服して吸い殻を作ってきやがれ!」 『さすが親分!頭いいっすネ☆ ほんじゃ、ちと行ってきます。』 「バカヤロー、頭の問題じゃねぇ! それがおかみに対する誠意ってもんだろうがッ!」 『へい!』 『さぁて、やたらな所でタバコを吸ってたら どやされる妙な風潮だけど、 今日ばかりは親分の命令だからな.....』 『あれ?いっけねぇ!5-6服って言われたけど2本しかねぇや! まぁ、ないもんはしかたねぇから、2服だけでもしておくか! いゃあ、いいことをした後、いや、しながらの一服は格別だなぁ.....』 こうして、空だった可燃ゴミの袋に2本の吸い殻を入れ、 集積所にゴミ袋を置いた煙州森の石mugは、 そそくさと河原を後にしたのだった。 - 完 -.