カテゴリ:短編小説
「ああ、セイラか、良く来たな。……いつものランチセットだな?」
「うん、お願いウォードたんっ♪」 「了解した」 ……ぁぁぁぁ、今日もバッチリ決まってるなあウォードたんのギャルソンスタイル……っvvv オーダーを伝えにカウンターに向かう彼の後ろ姿をうっとりながめやりながら、 はふう、と息をつく。 毎度おなじみ「古き機械の軋み亭」。 初めておしかけてった時以来ずっと通いつめて、今ではすっかりお得意様と化してしまっていたり。 …だってここのお料理おいしいんだもん…♪ お値段も眠兎町で食べるよりずっとお手ごろ価格だしーおまけしてくれるしー。普通のお店だったら待ってる時間てぼーっとしてるか本読んでるかしかないけれど。 ここだったらウェイターさんなウォードたんを好きなだけ見られるわけだしねっvvv …あ、べ、別にウォードたんのギャルソン姿が見たいためだけに来てるわけじゃないのよっ? 「……誰に言い訳してるの誰に」 「……別にーぃ…?」 胸ポケットに入ってる琥珀がぼそりと突っ込みをいれてくるけど、それは柳に風と受け流して。 ウォードたんがバイトに入って結構たつけど、お店の人気は衰えるどころか上昇してるようで、今日も人がみっしり入って超満員。 ウォードたんの動く早さもほとんど戦闘速度だよね……ってそんなにはないか。(笑) ……それにしても…… 「ねえ、二階の方からカーンカーンとかしゅいんしゅいんとか、あたしがここに通い始めてからずーーーっと聞こえてくるけど、ここのご主人がしこしこ直してんのって、誰?」 「何、じゃなくて誰、ってのがセイラらしいね…」 胸ポケットの中から答える琥珀の声に苦笑が混じっている。 「だって…一回ちらっとご主人の後ろから見たことあるけど、あのコってロボでしょ?元は。思いっきりこわれかけてたけど…」 「あたり。ウォードよりちょっと前に作られた自動甲冑だよ。演習で戦ったこともあるしね」 演習。その言葉をきいたとたん、がぜんあたしの目が輝きだす。 「……そうなんだっ?!?!へぇ~へぇ~何々、演習って一緒に戦ったりとか?!?!」 「ううん、敵同士、って状況で」 「てっ……敵同士ぃ~~~~~?!?!」 な…… なんて萌えなシチュエーション!!!! 突然あたしのテンションが通常の3倍どころではなく跳ね上がったのに、 琥珀がしまったいらんこと言った、って顔したけど。 ふふふふ、もう遅いわよ? 「でっ、でっ、でっ?!どんな戦いだったの?!近接戦闘、それとも遠距離主体?!」 「……もうだいぶん前のことだし、そんなのメモリーの奥底だよ」 「ぇ~…そんないきなりテンション下がるようなこと」 「だってあの時から軽く百年は越してるんだよ?そして」 琥珀はそこでひと息おいて。 「眠兎町に来てからは、特にね。セイラが戦闘以外のデータばっか増やすから」 「……う」 それはもしかしてお店の顧客データとか在庫データとか売り上げデータとかetcですかそうですか。 「……だって琥珀ってばやたらと器用なんだもん…」 「セイラがデータ管理苦手なだけだろ」 「ううう…」 せっかく上がったテンションを突然深~~い谷底まで落とされたみたいで。あたしがぷち凹んでるとちょうどウォードたんが待たせたな、といって今日のランチを運んできてくれた。 本日のメニューは地鶏のローストがメイン。それにサラダにスープとエールのオプションつき。 「?珍しく元気がないようだが…大丈夫か?」 「え、そ、そんなことはないよっ?!全然だいじょぶだからホラホラ」 ローストチキンはあたしの大好物なのと、ウォードたんがすぐ隣でお酌してくれたのもあって、あたしの気分はちょい上昇。 …自分でも現金な精神構造だと思うけどね(笑) 思い切りにぱあっ☆て笑ってみせると、ウォードたんは安心したようにかすかに笑い、また他のお客に呼ばれていった。 ああその、ふっ、ていう微笑とまではいかない微微笑なのがまた萌え…v (そこらへんでやめとけ自分) 「…そっか」 「え?」 「琥珀くんたちが覚えてなくても、ウォードたんは覚えてるよね?当時のこと」 「うん、そうだと思うけど…」 「うっしゃ」 残りのローストチキンをもむもむごくんとやって、エールも一気にあおる。 「……セイラ?」 「もうすぐウォードたんお昼休みだよね?今日あがったら昔の話聞かせてって、言ってくるっ!」 がたたんっ!と勢い良く音をたてて立ち上がるあたしに、琥珀はもう何も言わないけど。 その目が十分すぎるぐらいに語ってるよ、「あんたも好きだね」って。 …ほっといてーそれがあたしの生きる道ーっ(何か違う) あと、話聞きたいのはウォードたんはもちろんだけど、 あの自動人形(フォイエルっていうらしい。名前もかっこいいな…v)くんにも聞いてみたい。 …ライルさんに全部きれいに直してもらったら、そのあと貴方はどうするの?って…。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Nov 26, 2005 01:37:51 AM
コメント(0) | コメントを書く
[短編小説] カテゴリの最新記事
|
|