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梨畑稲造日乗

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2011.02.06
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カテゴリ:Pops / Rock

Pentangle ペンタングル / Pentangle 輸入盤 【CD】

新宿のとある界隈にH***** Cafeという、音楽バーがある。
先日、会社の同僚と打ち合わせした後、テーマが音楽だったということもあり、音楽の聴ける店に行こうかと、音盤の置いてある店が点在する界隈へと、二月の夜気に息が白くなる路地裏を何度か曲がりながら歩いていった。

何軒かあるなかで、同僚の一人がここが気になる、というのでふらっと足を踏み入れたのだが、そこは偶然にもかつて大学時代の友人に案内されて入ったことのある店だった。
扉を開け、壁につるされたギターと、L字型のカウンターが記憶を呼び戻す。

まだ時間も早かったせいか、店内には客の姿はなく、ぼくら三人はカウンターのコーナー周辺に着地した。
最初はあれやこれや、1軒目の店で食事しながらしていた話に継ぐように、昔の音楽の話をして、そのうちになんとはなく、マスターがかけていたThe BandのレコードからBob Dylanの話になり、レコードは棚から次々に出され、そのひとつひとつがBob Dylanの曲で、二つ置かれたターンテーブルでそいつらはつながっていった。

ぼくはOld Crowのハイボールを頼んだ。二杯飲むうちに耳に入ってきたのは、スティール弦を張ったアコースティックギター二台が、ラグライムやブルーグラスやジプシーミュージックを聴くときに心に届く、草の匂いのする、そして木の枝がはじけるような弾き方で紡ぐ、耳に小さくはじける炭酸の泡のように刺激が心地よい音だった。
翌日、同僚に、あれは何というバンドでしたか・・・とたずねて送ってくれたメールによると、「スコットランド民族音楽系の得意なジョン・レンボーンとブルースやジャズっぽいのが得意なバート・ヤンシュという二人のアコギストが中心になって作ったバンド。」だという。
知らなかった。

音楽の奥深さというものが、ポピュラーミュージックにここまで揺るぎがたく刻みこまれているのを身にしみて感じたのはこれがはじめてかもしれない。

マスターの、修行を続けるように(!)、とのメッセージを胸に秘め、べつに秘める必要もないのだが、この年になって改心するには少々の荒行も必要だとは思いながらも、あまり無茶のできる立場でもないので、せいぜい先人の知恵と経験を汲ませていただきたい、とぼくは心の底から乞い願う。

もうひとつマスターの語った箴言とは、ミュージシャンがとりあげたカバー曲が何かを知るべし。

ポピュラーミュージックとは、その歴史の根底に民俗音楽や、コマーシャリズムとは縁遠いけれど、その人のポートレイトのように、生まれ育った土地の匂いや風景、風の吹くようすなどが封じこまれた音の様相が、功名心や下心や衒いもなく声や楽器で歌われたものがあって、どこかで層をなしている、そういうものなのだということが、いまごろわかったのだ。





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最終更新日  2011.02.06 12:25:35
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