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テーマ:私の読書(24)
カテゴリ:本
ブラッド・ランド ティモシー・スナイダー 2015年 原書2010年
ヒトラーとスターリン 大虐殺の真実 1933年から1945年の間に、ポーランド、ウクライナ、ベラルーシ、バルト三国周辺で銃殺、ガス殺、飢え死にさせられた民間人、捕虜は、合計1400万人に達するそうだ。ヒトラーのドイツと、スターリンのソビエトに殺された非戦闘員の数だそうだ。 本書で明らかにされている残虐さと執拗さは、凄惨を極め、後にベトナム戦争でアメリカ軍が200万人以上の民間人を殺害した極悪行為と同じように、読者の臓腑がこみ上げてくるような凶悪の告発だ。 独とソがしめし合わせて始めた戦争は、他国を侵略して統治、搾取する植民地行為というよりも、他民族を強制排除しながら殲滅して領土を収奪し、自民族を移植する強奪行為のようだ。強制移住からはじまり、収容地が満杯になると、占領地域の知識層を抹殺し、婦女子も殺してしまい、その民族を根絶やしにして絶滅せんとした残虐行為だ。 中世の乱世とかわらない思考だ。20世紀の前半のヨーロッパとは、そういう地域であったようだ。 米英は、1945年に勝利しても、独ソが繰り広げた殺戮の地の惨状はみていないそうだ。ソビエトが占領し、支配し、不都合な事実は隠して被害者に化けてドイツ人の大罪を隠れ蓑にしたそうだ。 1942年には、米英にユダヤ人虐殺は伝わっていたそうだ。更にポーランド亡命政府の大統領とバチカン駐在大使は、教皇にまで公表を懇願したが徒労におわったそうだ。 独もソも、自国は資本から収奪されて攻撃されている被害国であるとの主張から、対外侵略を正当化していったそうだ。資本の正体とは金融資本のユダヤ人であるとの同じ主張を両国とも時期は異なるがしている。 ソビエトは、ウクライナからの穀物と農地の収奪から始め、次にドイツと結んでポーランドを分け合い、その後、裏切り合ってドイツは潰え、ソビエトは、偽り騙り続けて半世紀後に自滅することになると言うところらしい。 ドイツに抗したポーランド人蜂起を見殺しにするスターリンの狡猾さ、残忍さには背筋が寒くなる。また、徹底破壊、殺害したドイツも人間の所業として理解するのは苦痛の限りだ。アメリカがソビエトで給油してポーランドのドイツ軍を空爆する提案をスターリンは拒否し、蜂起が失敗して、ポーランド兵士が死亡し、ソビエトがポーランドを支配することが望ましいとしたと。 スターリンは、戦後、資本主義を敵として自国民の弾圧を強化し、米ソの残虐行為が継続されていったらしい。被害を騙り、目くらましにして支配を確立せんとしたらしい。 そうした国の末路は明らかなはずなのに、今世紀もまた起きていると著者は言う。数字を騙らせず、自己の正当化に数字を誇張させず、記憶を歪曲させず、都合のよい教育はさせないようにするのが歴史の目的と。 百万の死者とは、一人かける百万と理解して、人間性を持てと。人間の所業を超えるとせずに、人間の所業であると理解せよと。 21世紀も果たして同じ末路をとげてしまうのか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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