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テーマ:私の読書(15)
カテゴリ:本
ヨーロッパから民主主義が消える 川口マーン惠美 2015年
難民・テロ・甦る国境 国境審査なし、関税無しで往来自由の協定、それが、シュンゲン協定で、共同体の証で、ヨーロッパの26ヶ国が結んでいて、EU加盟国は22ヶ国だそうだ。これが、経済難民問題で揺らいでいるそうだ。 ユーロ通貨に移行した国は、19ヶ国だそうだ。EUで非ユーロの国は9ヶ国で、英、ポーランド、スウェーデン、デンマーク、ハンガリー、ルーマニアなどだそうだ。 イギリスは、両方とも参加していないことになる。国境あり、関税あり、別通貨・為替ありとなると、同床異夢でなく異床異夢なのか。拠出金も66%の免除をサッチャーが勝ち取り以来そのままで、イタリアよりも少ないそうだ。 イギリスの負担が格安になった理由は、EUの歳出の45%が農業補助金で、それではイギリスにはメリットがない、拠出は不公平だとの理屈だそうだ。 農業は、戦略国内産業であって、アメリカも巨額の補助金を大農家にだしつづけて保護している。米欧は、食物は決して他国にゆだねない、命は握られないとの意志と言うことか。 東欧でのスターリンやヒトラーによる餓え死に殲滅戦法の大量殺戮を知れば、ヨーロッパの飢餓の歴史がなせる業か。食品を海外にゆだねてしまっている日本のおおらかさは、他国による飢餓戦法での民族絶命の危機の歴史がわからないからとなるのか。 イギリスは、外国人を呼び込み、金融で再生してきたが、ドイツとは全く異なり、問題となっている難民は受け入れていないそうだ。 ドイツは、70年前に他民族大量殺害の民族浄化なる残虐行為を繰り広げたことから、憲法にあたる基本法に「政治的に迫害される者は庇護権を享有する」と決めていて、見過せないことになっているそうだ。去年110万人の難民が中東などから入り、難民申請審査、保護、給付負担増と問題が大きくなり、国境検問が復活し、難民審査を迅速化して強制送還を厳格運用し始めようとしているらしい。 難民を受け入れた理屈には、安価な労働力の確保、国内賃金の抑制、難民景気への期待などがあるそうだ。アメリカもタイラー・コーエンなど大量移民による経済成長、低賃金労働者の確保が基本シナリオで必要と言っていた。 もともと、ユーロ通貨圏で、ドイツにとってはユーロ安、成長の滞るユーロ通貨の国にとってはユーロ高で、ドイツの輸出154兆円は増加し続け、6割はEU域内にはかれていてユーロ圏で独り勝ちだそうだ。 東欧の低賃金労働者を受け入れ、国内賃金上昇を抑え、格差を拡大させ、国内社会資本の充実は後回しにして成長しつづけているそうだ。 フランスとは、原子力発電した電気を買い、ロシアとはガス、石油パイプをドイツに何本も直結させ、中国にはアジアで一番大切な国と言い、ドイツメディアは反日報道を繰り返す。 ヨーロッパ諸国も、中国のAIIBにこぞって参加し、人権問題は口にするのを控える。ヨーロッパ文明とは、民主主義より実利まるだしになってきているようだ。 EUでは、規制がどうでもよいことまで数多く、EUの本質は、閉鎖的な営利団体であると。難民問題で目に見えてきたのは、国境が復活し、国家主義が台頭するEUの正体であるらしいと。途上国で搾取を続けながら、その国々の民主化を強化しようとする偽善に満ちた姿であると。 同床異夢も、難局に床が抜けかねないようだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Jan 11, 2016 12:49:54 AM
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