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テーマ:私の読書(15)
カテゴリ:本
忘れられた島々 井上亮 2015年
「南洋群島」の現代史 ミクロネシアにおいても16世紀に西欧文明と接触して以降、征服、暴政、植民が、いろいろな「先進」国により永くなされてきたらしい。 スペイン、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、再びアメリカと変遷する制圧史の中で、日本が整理されていた。いずれの国も自国以外の地での戦争を繰り広げた国々だ。それらの為政の優劣を持って自賛することはあまり意味がないようで、皆、自らの国益確保と自文明の優越思考をかざして他の文民を支配し、自らを正当化してきた。西欧文明の利己がミクロネシアでも歴史に刻まれていたということのようだ。 刻みこまれた歴史を披露されると、科学文明がどのように進んでもそれを利用した国々の精神は、どの国も収奪し合う争いに勝たんとする底辺の水準でしかなかったと言うことのようだ。 吉村昭は惨事を現実として端的に描いていた。この本の記述で思い出される作品がいくつかあった。 サイバンの玉砕での民間人の生死の状況が描かれた「珊瑚礁」、沖縄摩文仁に追い詰められていく沖縄の人々の惨劇を描いた「殉国」、沖縄の人びとに対する本土の差別と敗れた郷土の惨状を描いた「他人の城」、身を挺した海の探索網とアメリカでの俘虜の現実を描いた「背中の勲章」、虜囚の辱めは自らには問わない海軍高級将校のご都合を描いた「海軍乙事件」など、いずれも不条理に故郷を死地にされた人々が描かれていた。 本書を読んで、吉村昭が忘れてはならない島々を残してくれていたことがよくわかった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Jan 25, 2016 01:24:15 PM
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