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本日休日なんで特盛り大サービス!日記のつづき一挙アップ!
(ある梅雨の記憶・その3)
人と人の出会いは奇異なもの。
毎日が人と人の出会いだが、それはただ単にすれ違うだけ。
その人の見た目は視野に映るが、その人となりは図り知ることは出来ない。
きれいな女性だなあ、と思っても、数時間後には、記憶の彼方に追いやられる。
人間の記憶力なんてそんなもんである。
ましてや、それが、5年も立つと・・・・
ずぶぬれの女子高生に親切に傘をさしだした行為は、その日のうちに大した出来事でもないせいか、ほとんど忘れ去られて行った。
人間、いいことはいつまでも覚えていられるが、いやなことを忘れるのは、あっという間である。
まあ、ある意味、都合がいいようにできているのだが。
どちらかというと、何か恥ずかしいことをしてしまったような気後れもあって、相合い傘の記憶は忘れたい方向に向かった。
月日は流れ、20代のサラリーマンは、中年の領域へと足を踏み入れる。
友人とよく飲みに行く、と言っても、同じ穴のムジナみたいな奴らである。
いまだ独身、やくざ、ハゲ・・とかの連中である。
男ばっかりで、それもおじさんが3、4人集まって、居酒屋で馬鹿話をしてるのって、まあ、よくある光景かもしれないが、我々の会話の内容を聞いていると、とんでもない。
「ゴジラがさあ・・」とか「鉄腕アトムが」とか「セーラームーン見ているか?」とか、全く社会の役に立たない趣味的な話題ばかりであった。
居酒屋のいいところは、時々大きいテーブルに座ると、かわいい女子大生とかOLの集団と隣り合わせになると、仲良くなれるチャンスがないでも無いこと。
(なんていっちゃって、この生涯、3回くらいしかそういうことなかったんだけど・・)
ふと、隣に座っていた女子大生風の3人の女の子たちが、我々の話題を耳に挟んで、くすくすと笑っている殺気が感じられた。
「おいおい、おとなりの人たちに笑われているから、せめてセーラームーンの話題はやめにしないか?」
とか言ってみたら、案の定、
「あら、いいですよ。お父さんたちが、セーラームーンのこと話していたって」
と、言ってくれた女の子。
「いやあ、ははは・・」
なんて、些細なことで、まあ、一緒にお話を始めることにもなる。
しかし、これがまた難しいんだな。
元々、女の子にもてないおじさんが集まっているんだから、そんなに楽しい話題が提供できない!!!
ましてや、実は女性としゃべるのがすごい下手なやつもいるのである。
元々友人で集まっているんだから、急に見ず知らずの女性と仲良くしゃべり始めると、そいつが浮いちゃう。
これでは友情にひびが入りかねないので、泣く泣くお隣の女子大生とはあまり仲良くしゃべることを避けざるを得ない。
ま、挨拶的に聞いておく。
「あなた方は、大学生さん?」
「そうですよー」
「まさか未成年?」
「彼女と彼女は19になったばかり」
「へ?それで、大学生って、じゃあ、ついこの間までは女子高生だったの?酒飲んじゃダメなんだよ」
と、適当に話していたときだった。
「あ、あ、あ、あ・・」
向こうに座ってたい女子大生が、急に身を乗り出して来た。
「あの・・すみませんけど、新宿に住んでいません?」
「??????」
「もしかして、新宿の方に住んでいません?あの・・間違ってたらごめんなさい」
「いえ、前は新宿に住んでいたけど、今は違うんだよね」
「新宿って、どこらへんでした?」
「えーと、抜弁天の方・・知ってる?」
「あのー、もしかして、わたし、知ってるんですけど・・おじさん・・」
かあーーっ、「おじさん」だよ!
まあ、女子大生から見ればおじさんだけど、悲しいね、実際直接言われてみると。その頃は、自分はまだおじさんではない、と思っていたんだから。
しかし、まだ、彼女の言っていることが、よく意味が分からんかった。
もしかして、近所に住んでいた子か?
「あのー・・ずいぶん前に、傘にいれてもらったんですよ」
「はあ??」
魔邪みたいに、怪訝そうに、聞き返してしまう。
「覚えてませんよねえ」
「ええ・・と・・」
「あの、私が、バス停で待ってたら、雨が降って来て、傘に入れてくれた人だと思うんですけど・・」
「お前、そんなことでナンパしてんのかよ」
と、急に、友人が突っ込みをいれる。
「いやあ、それって別の人でしょ」
「そうかな、すみません」
って、実は、全然覚えていなくもないんだが、友人の「軟派」という言葉で、自分がみっともなくて、その話から離れたくてしょうがなかった。
そんなうちに、トイレに立つと、外は雨が降って来ていた。
大丈夫、オレは傘をいつも持ち歩いているか・・ら・・・・・ナ・・・・・・・・ト・・・・・
・・・・・・・?・・・!!!!
ががあああーーーーん!!!!!!
そういえば、そんなことがあったぞ!!!!
思い出したあ!!!!
残念!!!
時既に遅し!
そのときには、既に、女子大生の仲間達は、帰ってしまって席にはいなかった。
いや、まさか、あのときの女の子かよ!!?
「おいおい、おめえら、さっきの女の子の言ってたこと、ホントだよ。オレ、昔、そういうことやったことあるんだ!!」
「やったことあるって、傘にいれてやったの?」
「女子高生だったんだよ、そのときは、さっきの子」
「えー??ホントかよ?」
「って、まちがいない!」
とは言っても、実は、間違いないかどうかわからない。
あの子の顔と昔の女子高生の顔が一致しないんだから。
だいたい、なんで、あの子は、オレの顔覚えていたんだ?
唯一思い当たるのは、あの新宿の路線バスをいつも使っていて、女子高生たちがたくさん乗っていたことはあったので、実は、あのあとも彼女、私を見かけていたのでは?
そして、よくあることだが(ないか?)、あのときお礼が言えずに心残りがあったとか・・
突然の他人の親切って、とっさにお礼が言えないことがある。そんなような気持ちがあったのではないだろうか・・
しかし、今更思い出しても、後の祭り。
というか、思い出したからと言って、どうなるというのだろう?
そこで、彼女と意気投合して、一晩飲み明かして、思い出を語り合い、そして、朝、目が覚めるとベッドの隣には、彼女がいた・・・・
なんてことになるのか??
無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄(久々に使うフレーズ)
第一、ワシはベッドじゃなくて布団だし、酔っぱらって、間違いを犯すほど酒に弱くない。どんなに酔っぱらっても、記憶をなくしたことは無いんだから。
それにしても、何か惜しいことをした。
何かとは、なんだかわからんが、すれ違うだけの人との関わりをもう少しは深く持てることは、人生において、有益なことに他ならない。
生きているうちにたくさんの人と知り合えることはすばらしい・
そのうち、一人の人とはすれ違いに終わってしまった、残念さが、実感できることが悔恨であったのである。
もはや、そのとき記憶を否定された彼女も、今ではもうババアであろう。
ババアという言葉が悪けりゃ、お年寄りである。
再会しようも無いし、もし再会しても、おたがい顔もわからなくなっているだろう。(元々、こっちは彼女の顔なんて覚えていなかったんだから)
思い起こせば、あの時、店から見えた雨が、彼女の記憶を呼び起こしたのかもしれない。
それに、少し私が遅れたわけである。
ただ、ほんとうに、あのときの女子高生とあのときの女子大生が同じ人かどうかは、証明できないんだが・・
記憶の彼方に追いやったはずの思い出が、今では、雨が降るたびに、ちょっぴり惜しい思い出としてよみがえるのである。
これで、おわり?
ふっふっふっふっふ・・・・・
(まだまだ、つづくーっ!!!)