メインの仕事を終え、インドの田舎町、ジャムシェドプールを後にして、
再び、舞台はカルカッタへ・・
ワシのインド紀行・その9
カルカッタ追撃篇1
列車は寝台車。
一等車である。
これも、向こうの代表らがとってくれた。
一等車だと、つまり長旅を寝転がって行ける。
2段ベッドが二つ並んだみたいな個室である。
時々、チャイの販売サービスがある。
チャイと言うと、何かおしゃれなミルクティーと思うだろうが、結局は牛乳で紅茶を煮立て、砂糖をたっぷり入れた甘ーい飲み物。
そんなおしゃれなもんじゃないのである、本場のチャイは。
それでも、サービスが来ると、安いしうれしいから頼んでしまう。
いつかの洗濯屋と同じで、頼んでやると彼らも助かるわけであるから。
まあ、チップみたいなもんだ。
一等車は、なんとシャワーがトイレについている。
しかし、いわば、木造の掘建て小屋の便所みたいなところに、シャワーがなぜかついているという感じ。
こんなところで、裸になって、シャワー浴びるやつがいるのだろうか?
・・と、思ってしまう。
二等車だと、ちょうど、昔の日本の田舎の特急みたいな座席で、ある程度ふかふかしている。
三等車もある。
三等車は、木の椅子である。
ごつごつして、長旅にはつらい。
しかし、一番混んでいる。
みんな三等車しか使わない。
ジャムシェドプールから、4時間乗ると、インド第3の都市カルカッタに到着する。
駅は、大きく、暗い。
まあ、日本みたいに煌々と照明が明るい駅も、少ないのではあるが。
列車は、田舎の風景からいつの間にか、町っぽい景色になり、駅が近づくと、貨物列車が車窓に見えてくる。
では、とばかりに、そろそろ、荷物をがちゃがちゃと降ろして、床に並べる。
一行では持ちきれないほど荷物があるのだが、まあ、駅には迎えが来ているはずだし、昔の東京駅にあったようなポーター、「赤帽」みたいなのが、たくさんいるから、ひとつ何キロあろうが、10円で、運んでくれる。
しかし、そういう荷物をたくさん持った景気のいい客を見つける為に、彼らは命をかけて、一等車に飛び込んで来るのだ。
命をかけて・・
そう・・・
駅についてから、ホームの上で、客を見つけるのでは遅いのだ。
駅に列車が着いてから、車内に飛び込んで、客を捜す・・・
いや・・・
実は、それでも遅いのである。
駅のホームに車両が入り込んできてから、列車に飛び乗って、車内で客を捜す!
いやいや・・
それでも、遅いのである。
それじゃあ、客はつかめない。
な、なんと・・
列車が、カルカッタの駅につく前に、もっと手前から、ポーターたちは列車に飛び乗って来るのである。
ポーターだからって、別にホテルのポーターみたいな格好をしているわけではない。
そこら辺の乞食に毛が生えた程度の、ごく普通の格好をしたおっさん達が、個室のドアを開けて、
「荷物はありますか!!?ひとつ1ルピー!」
と、声をかけてくる。
おいおい、こいつら、まだ駅についてないのに、どこから、わいてきたんだあ!!??
じゃ、これとこれと、これね・・・
指示して、大きなジュラルミンのケースを持たせてやる。
「さんきゅー!」
上客だ!と大喜びで、荷物を持とうとする彼らに、意外な出来事が待っている。
「??????
!?!?!?
!!!!!!ーーーっ!!」
重いのである。
実は、私たちの荷物は非常に重い!!
普通の旅行者のスーツケースだと思ったら大間違いなのである。
(あまり重いときには、よく飛行機に乗る場合、エクセスと言って荷物重量超過料金をとられるのだが、最高20万円位払うこともある。しかし、そういう場合は、負けろ、と言って、けんかすれば、大体値切れる)
へへへ・・
にやりとするポーター。
「重いだろ」
こっちもにやりとしてやる。
「大丈夫!」
さて、ポーターに重い荷物を持たせ、カルカッタの長いホームを歩いて、改札口を出て、最初に日本から着いたときに、案内してくれた現地人が迎えにきていた。
「いやあ、ひさしぶり!!」
「ジャムシェドプールはどうだった?」
「うまくいったよ、ありがとう」
とか、片言の英語で会話する。
しかし、我々は、ずーっとポーターから目を離さない。
ちょっとした荷物だったら、パッと持ち逃げ・・なんてことも十分あり得るのだ。
しかし、さすがに、重量級のケースである。
そんなことは、出来るはずもない。
もちろん、ポーターどもが、全部が全部そういうインチキ野郎というわけではない。
でも、インドでは「人を見たら、泥棒と思え」を地で行く世界なんである。
ま、ポーターさん、そういう悪い人ではなかった。よかった、よかった。
ん?
ポーターさん、荷物をクルマに積んで、何やら現地語で、迎えの連中と話し始めた。
迎えの人間は、クビを横に振り(つまり肯定の意味)、5ルピーをポーターに渡した。
「もう、渡したよ、料金は」
あわてて迎えに説明した私。
迎えの男は、にっこりとして、
「いやね、あんまり重いから、もう少しチップをくれないかというんで、確かに、これは重いからね」
というわけで、結構、現地人同士なら、甘いんだな、という気もした。
しかし、それは間違いだということに、後日気づくんであるが・・
さて、
「今日は夜も遅いし疲れただろ。ホテルでゆっくり休んでくれ。明日は、カルカッタを案内してやるよ」
迎えの男が運転しながら、脇見して、我々に話しかけてきた。
おいおい、前を見て運転してくれよ。
とはいえ、彼は、脇見しながら、クラクションを鳴らすことは忘れていなかったのである。
(^_^;
さて、明日は、カルカッタの町の観光である。
(つづく)
仕事、してるのかよーーー!!!?